08-06.王都デート
待ち合わせ場所で待っていると、アニタがやってきた。
「驚いたぞ。よく似合っているな。三人とも」
シュテルとキャロちゃんも一緒だ。三人ともバッチリおめかし済みだ。子供たちは照れて視線を逸らしているものの、逃げ出す様子もない。どうやら黙って連れて来たというわけでもないらしい。
「まぁま……」
「手を繋いでも良いか? シュテル」
「……うん♪」
ふふ♪
「キャロちゃんは私とね♪」
「うん♪」
よしよし♪ それじゃあ出発だ♪
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シュテルは最初こそよそよそしかったものの、すぐに持ち前の明るさを取り戻していった。
「まぁま♪」
「うむ! 次はあれだな!」
シュテルの指す方へと駆けていく。今日は徹底的に甘やかすことにした。シュテルのやりたい事はなんにでも付き合おう。なんなら後で大人シュテルにも付き合ってやろう♪
「~♪」
「ふふふ♪ シュテルちゃんもご機嫌ね~♪」
「ね~♪」
アニタとキャロちゃんも嬉しそうだ。
「二人はいいのか? 何かやりたいことはないか?」
「十分楽しんでるよね~♪」
「ね~♪」
いったいいつの間にアニタは子供たちと仲良くなっていたのだろう。
「まぁま! まぁま!」
「うむ! いいぞ♪」
「きゃは♪」
シュテルは噴水前のベンチに座って先程買ったばかりの飴細工に噛りついた。
「あまぁ~♪」
美味しそうに食べるものだ。顎強いな。バリバリいってたぞ。隣でペロペロとし始めたキャロちゃんとは大違いだ。
「まぁま♪」
わけてくれるらしい。
「じゃあ少しだけ貰おうか」
「はい♪ どーぞ♪」
ぺろり。
「むぅ~!」
齧れと言っているらしい。
よし! いくぞ!
ガリッ! バキッ! ぽと。
「あ!!」
「あ! すまん!」
飴は真っ二つになって地面に落ちてしまった。
「あ~あ……」
「ここで待っていておくれ! もう一つ買ってくるぞ!」
慌てて店に戻ると、少しだけ列になっていた。これはまだ時間がかかりそうだ。
「おい、大将」
うん? 聞き覚えのある声が?
「なんだ。ベルトランではないか」
これはまた随分久しい顔ではないか。
「なんだじゃねえよ。なんで魔王がまだこんなとこにいんだよ。おかしいだろ。卒業したじゃねえか。出ていったんじゃなかったのかよ」
「魔王城は退避させてやったろ。今日はオフだ。硬いことを言う……うん? お前その……ごほん。はじめまして。お嬢さん。私はエリクと申します。もしやデート中でしたか?」
「まあ♪ ふふ♪」
しまった。お嬢さんはダメだろ。私の見た目は十五やそこらなのだ。対してこの女性は二十代前半といったところか。パティやユーシャの成長で感覚がズレていたようだ。失礼な事を言ってしまった。申し訳ない。
f
「おい! まさか!」
まさか? 取られるとでも?
「ベル」
「……すまん」
あらま。
「エリーゼと申します。お噂はかねがね。魔王様」
「これはこれは。ご丁寧にどうも」
握手握手。
「おい、ベルトラン。デート中に他の女に声を掛けるとはどういう了見だ」
「ちげーよ、そんなんじゃねえよ」
「ベ~ル~♪」
「はい……すみません……」
なんだ? この女性の片思いか?
「おい。勘違いすんな。この方はな」
「ベル。お父様に言いつけるわよ」
「……」
ああ。そういう……。うむ。なんとなくわかったぞ。
そう意識して見てみると、どことなくパティやレティたちにも似た面影を感じるな。一番似ているのはルシアか。
つまりこの女性は王族だ。たぶん姫様だろう。見たところレティよりも年上だ。とするとエリーゼという名も偽名なのだろうか。今日はお忍びだろうしな。
ベルトランは護衛役といったところか。しかし近衛騎士団長が直々にとはな。それも随分と尻に敷かれているようだ。案外、前陛下辺りが気を利かせたのやもしれんな。あの御仁は隠居した身になってもフリーダムだな。むしろ増していそうな気がするぞ。
「しっかりエスコートするのだぞ。私のことは忘れてな」
「くっ……このやろう……」
ふふ♪ 頑張れ♪ ベルトラン♪




