その8
料理の開発はアサヒとコッパの担当だ。
それにあたり、大きな問題となったのが、食材の調達だ。
ここは死の世界だったこともあり、食材というものが全く存在しない。植物が育たなかったからだ。
その問題は、予想外の――いや、ある意味順当かもしれない――人物によって解決された。
「今まで未練だと思って誰にも言えなかったんだけど、実は……」
はじまりは一人の男の告白からだった。
そのレイスの男は生前は農家だったという。この人も農家のご多分に漏れず、レイスになってすぐの頃は農家を続けるためになんとかして作物を育てられないかと試行錯誤したのだが、死の属性の効果によってそれも叶わず、やがては諦めてしまった。
だが彼は完全には諦めきれなかったのだ。
彼はアンデッドになってから今日までの長い間、地下の納屋にたくさんの種を保管していたのだ。
外から購入したというその種は幸いにもアンデッド化しておらず、今植えれば育つかもしれない。
その話はすぐに町じゅうに広がっていった。すると、同じように告白する農家の人が次々現れたのだ。
「俺も」「俺も」「おれも!」
作物を育てられる環境と納品する相手を見つけた農家たちはまるで生き返ったかのように目を輝かせ土を耕して種を巻いた。
数日後、最初の芽が出たときは農家のものもそれ以外のものも揃って狂喜乱舞した。
半年後の秋には、さぞかしたくさんの作物が採れることだろう。
こうして食材の確保へのめどが立った。植えられた作物をもとに、それらが収穫されるまでの間、先行してアサヒがメニューを考えてコッパを指導する。食材は一時的に〈マギア〉からリアが運び入れたものを使用することにした。
「うん、味は悪くないね」
コッパが作った豆のスープを口にしたアサヒが太鼓判を押した。コッパは歯をカタカタ鳴らして喜んでいる。
「あとの問題はうーん」
アサヒは腕を組んで頭を捻った。コッパも同様に首を傾げている。




