その6
「ありがとう〜。助かったよ。もうほんとに怖くて」
一連の騒動の後、官憲が来そうだったのでその場を離れた二人は、裏通りのカフェまでやってきて一息ついていた。
「友達だから」
お礼にいっぱい奢るというサンピの申し出に、頑として首を縦に振らなかったコッパが自分で注文したドリンクを口に入れる。
「でもホントすごいよね。あんな強そうな男の人、何人も相手にして。わたし、そういうのに憧れちゃう」
それはサンピの本心だったが、コッパの反応は芳しくなかった。
「…………? どうしたの、コッパちゃん? わたし、なにか変なこと言った?」
それにコッパは首を振った。
「私は……サンピが羨ましい」
「え? わたし?」
突然のことに、サンピは一瞬、コッパが何を言っているのかわからなかった。
「可愛い服を着て、みんなを幸せな気持ちにさせてくれるサンピが私は羨ましい。さっきみたいに暴力で怖がられるのは……もう嫌だ」
サンピからすれば強くて凛々しいコッパは憧れ以外の何物でもなかったが、そういうことではないのだろう。
だからこそ、そこにコッパの本心を見た気がした。
「ふふふっ」
つい、笑みがこぼれた。
「?」
「あはは、ごめんごめん。でもね、わたしたち似た者同士だねって」
「似た者同士?」
「うん。わたしはコッパちゃんが羨ましい。コッパちゃんはわたしが羨ましい。似た者同士だね」
「そっか、似た者同士」
普段あまり表情の変わらないコッパだったが、そのときはとても嬉しそうに見えた。
「じゃあ、これから可愛い服を買いに行かない? もちろんコッパちゃんが着るんだよ」
「私は……」
「あれ、嫌だった?」
「そうじゃない。でも、私はサンピと同じメイド服が着たい」
「あー、メイド服かぁ。でもあれは王宮から支給されたものだしなぁ。あ、そうだ」
「?」
「だったらさ、いつか王宮を出るときがあったら二人でお店でもしない? もちろん、メイド服を着て」
「お店」
「そう、お店。ここみたいなカフェでもいいし、雑貨店でも、宿屋でもいいね」
その話をしたときのコッパの顔は今でも忘れられない。




