その5
その時、男の腕を何者かがつかんだ。
思わず頭を上げてみると、そこにいた。
全身を黒で統一したシックな装い。細身ながら筋肉質の頼もしい手。肩までかかるくらいのつややかな黒髪。そして、怒りに燃える黒い瞳。
「コッパ……ちゃん……?」
二人の間に割って入ったコッパは、男の腕を力任せに掴み上げる。
「いて、いててててて!」
男が悶絶しているところに、他の男達が割って入ってきた。
「なんだテメエは!」
「離しやがれってんだ! この野郎、ナメてんのか!」
しかしコッパはそれに全く怯むことなく男たちを睨み返す。
「かまわねえ、やっちまえ!」
男の一人が叫ぶと、残りの男たちが一斉に殴りかかってきた。
コッパは腕を掴んでいる男を軽く前に放り出すと、殴りかかってきた男たちはそれに気を取られてたたらを踏んだ。
その動きに合わせるように足をかけるだけで男たちは自らのスピードと体重によって次々転んでいく。
「てめえ……ふざけやがって……。何様のつもりだ!」
男の一人がナイフを取り出しながらコッパを睨む。
「何って……この子の親友だけど?」
こともなげに言うと、襲いかかってきた男の手のひらを蹴り上げ、手放したナイフを素早くキャッチする。
「許さねえ……。絶対に殺す!」
息ひとつ乱していないコッパを前に男たちがいきり立つが、そのうちの一人がコッパの腰にぶら下げられていた剣に目を留めた。
「待て。こいつ騎士団だ!」
「騎士団がなんだ! おれはこいつをゆるさね――え、騎士団?」
男たちの威勢が急激にしぼんでいくのがわかった。腰が引けてしまっている。
「どうする? まだやる?」
コッパは奪ったナイフを弄びながら冷たい瞳で男たちを見る。
「い、いえ……。騎士団の方とは知らず、とんだ御無礼を」
さっきの勢いはどこへやら、揉み手をしそうなほど縮こまってしまった。
「し、失礼しました!」
男たちの一人が逃げ出すと、残りの男たちも全力で走り出した。
その様子にコッパは持ったナイフを持て余すように弄った後、
「忘れ物」
とだけ言って最後尾の男に投げつけた。
そのナイフはまるで閃光のように一直線に男へと飛んでいき。狙い通りに切り裂いた。男のズボンの紐を。
「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃ〜!」
情けない声を出して男はズボンを手で引き上げながら不格好に走っていった。




