その3
「あとは、『死者を蘇らせる』はどんな世界であってもできない」
「死者ってセト王のことか? だったら歓迎じゃねえか」
「死者っていうんなら俺たちもそうなんじゃないのか? なんつってもアンデッドだ」
人々が笑う。が、それは彼らがある一点に気がつくまでの僅かな間だけだ。
「いや待てよ? 死者は蘇らないってんなら、俺たちも元の人間に戻れないってことなんじゃないのか?」
「そんなバカな? いや、今まで自覚がなかったけど、俺たち死んでるのか?」
「それじゃ全然意味がないじゃないか!」
聴衆たちに失望が広がっていく。しかし、希望をもたせすぎるのはなんの利益にもならないことをリアはよく知っていた。
だから、彼女は待った。
その意味が浸透するまでに少し時間がかかった。
最初は、自分が人間に戻れないならなんの意味もないという意見が大勢だった。
だが、ある時一人のゾンビの女性がその事実に至った。
「死者は蘇らない。でも、新しい命は育めるんじゃないの?」
「新しい命っつってもなぁ」
女性の隣に座っていたミイラの男性――おそらく夫婦なのだろう――が女性を見た。
「今さら子供作るのか? 俺とお前が? 冗談キツ――ごふっ!」
女性の肘が男性のみぞおちにきれいに入り、男性の言葉が途中で途切れた。
「あ、そうか!」
そう言って手を打ったのは少し離れたところにいた麦わら帽子をかぶっていたレイスの男性だった。
「作物だ! 作物が育てられる!」
それに触発されたのか、別のところからも声が上がった。
「花も育てられるわ!」
「外から持ち込めば家畜だって育てられるぞ」
「ペットも!」
人々の間に明るい希望が広がっていく。与えられた未来ではなく自分で掴み取る未来は何より人を前向きにさせる。
人々は口々にこれからしたいことを語り合っている。
と、そこで最初の女性が言った。
「あんたらは何がしたいんだい、サンピ、コッパ?」
全員の視線がメイド服をきた二人に集中した。
「わたしは――ううん、わたしたちは」
サンピはコッパを見た。コッパはいつものようにただ真っ暗な瞳でサンピを見た。サンピが頷いた。その姿にコッパには初めて会ったデッドスペースの時と同じくきれいな黒い瞳が見えた。
二人でずっと話していた夢。それを叶えられるチャンスがいま来ている。
「わたしたちは、この世界を、アンデッドと人間が共存する宿場町にしたいんです!」




