その11
「いいわよ、アサヒ! そのままヤツの気を引いて!」
リアの声を聞き、がむしゃらに世界樹の剣を振り回す。それはエクリプスと戦っていた頃とはまるで別人の動きだ。しかしそれなりに王の注意をひくことはできている。
アサヒの動きによって余裕のできたリアは、走り回る白骨獣の頭によじ登り、さらにそこから身を乗り出す。
白骨獣の咥えている黒い筒のようなものに手を当てると、そこに書かれていた魔導文字が緑色に光りだした。
やがてそれが赤く変化していくと、黒い筒の端から炎が吹き出し始めた。
「ケケケケケケケ! 貴様ノ魔導ナゾ効クカ!」
だがそれは、魔法であったが、魔法攻撃ではなかった。
白骨獣が口を開くと、戒めを解いた黒い筒のようなものは噴き出す炎を推進力に勢いよく飛び出した。
「くらえ、ロケットパーンチ!」
飛んでいくそれは、黒い筒ではなく、取り外したリアの全身鎧の一部、右腕だった!
漆黒の右腕は王の放つ迎撃の靄をかいくぐり、勢いよく飛んでいき、王のこめかみに見事にヒットした。
鈍い音。
横合いからの意識せぬ衝撃に王の体制が崩れる。
「てや!」
アサヒはそのタイミングに合わせ、王の首めがけて世界樹の剣を横薙ぎにした。
王の首の骨が外れ、首が勢いよく吹き飛ばされた。
その瞬間、身体が軽くなったと同時に首から上を失った纏った身体がくずおれた。
はだけたローブから王の胸骨があらわになる。その中心部にきらめく赤い宝珠。
「これが――この世界の『コア』!」
アサヒが世界樹の剣を持ち替え、コアめがけてつき下ろす。
が、その時――
「待って、アサヒ!」
その声に、世界樹の剣はコアに突き刺さる寸前で止まった。
「リア、どうして? これを壊すのが目的じゃなかったの?」
トコトコと短い足でアサヒの足元までやってきた白骨獣の背に乗るリアに聞いた。この獣、見た目は白骨で気味が悪いが、アサヒの足に頭を擦り付けたりしてなかなかに愛らしいところがある。
「あんたが『コア』を破壊すると、あんたがこの世界の『コア』になっちゃうわよ」
「そ、それは困るなぁ……。あ、こら!」
足元にまとわりついている白骨獣がアサヒの靴をかじり始めた。アサヒは少し下がって獣から距離を取ろうとしたが、獣はアサヒの靴が気に入ったらしく、離れようとしない。
「だからさ、この世界の人にとどめを刺してもらう――アサヒ、後ろ!」
「!!」
振り返れば、首のないままのローブを着たスケルトンが杖をおおきく振りかぶり、今まさに振り下ろそうとしていた。
「ケケケケケケケケ! 油断シタナ、愚カ者メ、死ネ!」
離れたところで弾き飛ばされた王の頭部が煽る。
魔力が込められ鈍く光る杖がアサヒに振り下ろされる――ところで動きが止まった。
「……?」
王の身体がぶるりと震える。
「バ……馬鹿……ナ……」
王の身体からは白い白骨が生えていた。王の胸骨を突き破るように突き出された白骨の手は、その手のひらに『コア』を掴んでいた。
「ヤ、ヤメロ! ヤメ……」
腕が力を込めると、『コア』はあっさりと千々に砕かれた。その瞬間王の言葉は途絶え、その体も頭も全て骨粉へと化して崩れていった。
死者の王の最期である




