その4
「てった――」
そこまで言いかけたときだった。
「うわああああああああああああ!」
背後から叫び声が聞こえた。一人ではない、二人でもない。何人、何十人もの人々の叫び声。
思わず声のする方を見た。
後方を守っていたエクリプスが対峙している王宮騎士たちの更にその向こう――王宮の入口側から怒濤のように押し寄せてくる人の波。
一瞬、敵の増援かと思った。何故なら、やって来たのはゾンビにスケルトン、レイスやミイラにキョンシー。ありとあらゆるアンデッド達だったからだ。
しかしその先頭に立つ人物を見て、リアは全てを察した。
「お客様達だけにお任せするわけにはいきません!」
栗色の髪のメイド――ゾンビのサンピがモップを振り回しながら突撃していた。
その他にも農具を持ったスケルトンやノミを持ったミイラ、ノコギリを持ったスケルトンなど、ありとあらゆる道具を持ったさまざまな服装のアンデッド達が怒濤の勢いで押し寄せてきた。
その様子に宮廷騎士達も固まっていた。
その機会を逃すエクリプスではない。
「はぁっ!」
刀を一閃させて周囲の騎士達の体勢を崩すと、叫んだ。
「行け、アサヒ君、リア君! ここは私に任せ、君たちは目的を果たせ!」
リアの決断は早かった。魔導書の別のページを開くと、素早く指を走らせる。
「アサヒ、避けて!」
「え……? うわわわわわっ!」
アサヒが慌てて伏せると、今までアサヒがいた場所を巨大な火の帯が通過していった。
おかげで前方が完全にクリアになった。
「行くわよ、アサヒ!」
「わかった!」
リアの意図を悟ったアサヒが彼女について行く。
背後から騎士が追いすがるが、
「おっと、君の相手は私だ!」
エクリプスが騎士達を足止めする。さらに後方ではサンピらアンデッド達が宮廷騎士達と衝突していた。
「ありがとう、エクリプスさん、みんな!」
頼もしい仲間たちに感謝の言葉を残し、アサヒは走り出した。
が、その時――
ごぉーん、ごぉーん。
「な!? ど、どうして……!? 王が目覚めるにはまだ二時間以上あるはずよ!」




