その2
やがて廃墟の中に目指すべきものが現れた。
町中と同じく長い年月の果てに風化し崩壊した建物が並ぶ。
通りの左右には石壁が連なり、その壁面には砂漠の神々を象った像がはめ込まれている。風に削られた顔立ちは曖昧ながら、かすかな威厳を残していた。
通りの奥には、太く四角い柱に支えられた建物が静かに佇む。その姿もまた風化に侵され、ひび割れや崩れが各所に刻まれていた。
それが――この世界の中心である王宮だ。
「間違いないわ。ここに『コア』がある」
探査魔法を起動したリアが太鼓判を押してくれた。アサヒ、リア、エクリプスの三人はそのまま石畳を進んで王宮内へと足を踏み入れていった。
石造りの柱が立ち並ぶそこは、かつては華やかな場所であったのだろう。柱に施された細かな装飾、そこに色づけられた華々しい色合い、まっすぐ奥へと続く赤い絨毯。
しかしそれらはいずれも長い年月の末に崩れ、色あせ、破れていて往年の栄華を偲ばせるに過ぎない。
ここまでは順調だった。彼らを妨害するものはなにもなく。無人の野をゆくがごとくという言葉のとおりにここまでたどり着いた。
しかし、それもここまでだった。
「待て」
最後尾を守るエクリプスが一言言うと、アサヒとリアは即座に戦闘態勢に入った。
アサヒは右肘から蔓を伸ばして世界樹の剣を生成し、リアは魔導書をとりだして素早くページをめくる。
柱の陰から人影が現れた。
サンピやコッパ、あるいは宿の周囲に集まったアンデッド達と同じく肌がただれたゾンビや白骨のスケルトン、背後が透けて見えるレイスに全身を包帯で包んでいるミイラなど、アンデッドの数々だ。
ただし、彼らは黄金の鎧を全身に着込んでおり、手には揃いの片手剣と盾を持っている。王宮騎士だ。
彼らは王に絶対の忠誠を誓い、生者を憎む。王が眠っているときも王宮に留まり王を守る王の権であり盾だ。
三〇人ほどの王宮騎士達はアサヒ達の行く手を遮るように立ちはだかった。
その中心に立つレイスが口を開く。
「ここから先は神聖なる場所。何人たりとも立ち入ること罷り成らん。穢れた生者は特に」
「神聖なる場所?」
はっ、とリアが馬鹿にしたように息を吐いた。
「不死者の王のいる場所が神聖なワケないじゃないの。そこどきなさい。あたし達が祓ってあげるから」
漆黒の全身鎧がびしっと黄金の騎士長を指さした。
「王に仇なす不埒者め! 生者は全て殺せ!」
騎士長のレイスが号令を出すと、アンデッドの騎士達は一斉に剣を構えた。その一糸乱れぬ動きから、練度の高い騎士達であることが伺える。
「くるわよ」
「くっ、早すぎるよ。もうちょっと穏便に……」
「ぐだぐだ言ってないでやるわよ! 食い逃げ女もいいわね!」
「待て、リア君!」
「何よ、あんたまさかおじけづい……て……」
リアの言葉が途中で止まったのを不審に思い、アサヒも後ろを振り返った。
そこには、前方と同じように数十人の騎士達が戦闘態勢でアサヒ達に襲いかかろうとしていた。




