その7
「『追跡者』――それがリアなんですか?」
「そうです。この一年、〈マギア〉の人間で時を刻んでいるのは彼女たち姉妹二人だけなのです」
「そんな……」
故郷を離れ一人、血を分けた妹を追いかけて呪いを解かせるために追い続ける。その手には故郷全員の命がかかっている。
「それじゃまるで、家族の罪のためにリアが罰を受けているみたいじゃないですか!」
思わず声を荒げていた。
「リアは何も悪くないんですよね? なのにどうして自分の妹を追いかけるなんて過酷な旅をしなければならないんですか? 彼女以外なら誰でもよかったのに、どうしてよりによって……!」
アサヒはエムズビルに詰め寄った。
エムズビルは最初驚いたようにアサヒを見たが、やがて目尻を下げて目を細めた。
「やはりあなたでよかった。あの子にとってやはりあなたは救いだった」
「誤魔化さないで! 僕の質問に答えてください!」
エムズビルが歩き始めたので、アサヒもその後をついて行った。
「他の者ではダメなのです。他ならぬ、彼女でなければ」
「だから、どうして!」
エムズビルは屋上から宿舎の中に入ったところで立ち止まり、アサヒを見た。
「身体縮小化の処置を受けているのはリアフォーレルだけなのです。彼女は最初に魔力を失った一人で、その後の患者とは異なり治療は手探りでした。結果的に成功したからよかったものの、後にそれは成功率の低い対処方法だとわかり、その後は処置が禁止されています」
言われてみれば、このエムズビルを含めて、リア以外の〈マギア〉の人々はアサヒと同じサイズだった。
「魔力消費効率の良い者でなければ『追跡者』とはなれません」
「それは……魔力がなくなってしまうから?」
「そうです。その点でリアフォーレルは適任だったのです。もちろん、リナフォーレルの実の姉にそのような役割を与えることに反対する者も多かった。しかし他にいなかったのです」
それだけではないだろう。おそらく、彼女は自ら志願したのだ。そういう女性だということは、アサヒにもわかった。
「すみませんでした、大きな声を出してしまって」
そう頭を下げるアサヒにエムズビル老人はふぉふぉふぉと笑った。
「なんの。それはあなたの優しさの証。よい若者が私の孫についてくれてよかったと思っていますよ」
「いえ、僕はそういうんじゃ……」
「そういうことにしておきましょう。それでは」
それだけ言い残して老人はふぉふぉふぉと笑いながら立ち去っていった。
「…………寝ようか」
気がつけば夜も更けてきた。〈トランカータニア〉に来てからすっかり朝型の生活に慣れてしまったので、もうかなり眠い。
アサヒはリアの部屋に戻り、ベッドに潜り込んでそのまま眠りに落ちた。
緊張はもうなくなっていた。




