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W線上のアリア  作者: 雪見桜
凍り付いた街
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その6

 彼女たちはそもそも魔術師の家系ではなかった。どんな家系でどこで生まれたのかは今でもわからない。何故なら、その日以前の記憶がないから。


 事の起こりはおよそ十年前。アカデミーの近くで大規模な魔力震が観測されたことに端を発する。

 すぐさま調査隊が編成され、エムズビルはその調査隊の隊長として震源地へと向かった。

 そこは、アカデミーが把握していない街だった。おそらく、難民たちが集まり自然発生的にできた街なのだろう。

 その難民街は今、そのほとんどが一つの大きなクレーターと化していた。


 その破壊の規模から生存者は絶望的と思われていたが、奇跡的に二人の女の子が発見された。


 生存者をそのままにするわけにもいかず、調査隊は二人をアカデミーに連れて帰った。魔力震の原因は不明だが、彼女たちが何か知っているかもしれないからだ。

 しかし彼女たちを調べるうち、魔力震の原因など吹き飛んでしまうほどに重大なことがわかった。

 双子に魔力が全くないことがわかったのだ。


「魔力がない……?」

 アサヒの疑問に、エムズビルは若い学生に説明するのと同じようにアサヒに優しく説明した。

「魔力とは人の生きる源。これなしで人は生きることはできないのです」

「生きることが……? でも、それじゃ……」

「ええ。その子たちは生きていられるはずがない。なのに生きている。アカデミーはひっくり返りましたよ。まさに信じていた世界が揺らいだ瞬間だったのです」


 ふたりはエムズベルの弟子でもある若い魔術師の夫婦に引き取られ、リアフォーレル、リナフォーレルと名付けられた。

「リアと……リナ……」


 その後、姉のリアは徐々にではあるが魔力が回復していき、魔術師としてのキャリアを積み重ねていった。才能があったのか、リアは末席ではあるが史上最年少で魔道管理局常任委員カリミエイニに就任した

 一方で妹のリナの魔力は回復しなかった。しかしそれを逆手にリナは研究者となり、魔力研究者としてのキャリアを積み重ねていった。


 転機が訪れたのは今から二年前。

 とある魔術の実験中にそれは発見されたといわれている。

 リナの魔力が回復を始めたのだ。


 アカデミーは沸いた。人間と魔力の関係について一気に研究が進むことが期待されたからだ。

 リアは喜んだ。まるで我がことのように喜び、双子の妹を祝福した。


 その場でリアは倒れた。


 魔力欠乏症だった。

 リナの魔力が回復するのとタイミングを合わせるようにリアの体内から魔力が失われていた。同じような症状を訴える人が続出した。

 原因は明らかだった。リナの魔力増加は、周囲の人々からそれを吸い取ることで実現させていたのだ。呪いだ。

 リナは拘束され、事情聴取が行われることになった。


 事情聴取が行われる前の晩、リナは逃げた。


 その晩、リナは魔力枯渇で入院中のリアの元へ訪れていた。

 妹は小さくなった姉に「全て私が持っていく」とだけ告げ、その場で消えた。


 リナが消えた後も呪いが消えることはなく、むしろ呪いは強まっていった。〈マギア〉の全員が呪われるのにそう時間はかからなかった。


「リナフォーレルの居場所を突き止めるのに一年かかりました」

 淡々と語るエムズビルの心境はいかばかりのものだろう。

「調査の結果、リナフォーレルは異世界に転移していたことがわかったのです」

「異世界――まさか〈トランカータニア〉?」

 エムズビルはこくりと頷いた。


「当初は『追跡者』だけを転移させる予定でしたが、最終的には〈マギア〉全体を転移させることとしたのです。今回のようなトラブルが起こらないとも限らないので」

 追跡者一人だけをリナの元へと送り、それ以外の全員は時を止めて魔力の消費を抑える。そういう計画だ。


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