その2
「あたしがさ、呪いにかかって魔力が減り続けてるって話はしたわよね」
歩いていると、不意にリアが話し始めたので、アサヒは最初、何の話をしているのかわからなかった。
「え? うん。それで身体がこんなに小さくて、この鎧の中にいないといけないんだよね?」
しかしその鎧は今動くことができなくなってこうしてここまで運んできたのだ。
「それってあたし一人の話じゃないのよ」
「え? それってまさか……」
思わず立ち止まった。静寂が耳に痛い。
「〈マギア〉の人間、全員が同じ呪いにかかっているの」
「そんな……」
「あたしは身体を小さくして魔力の消費を抑えてるけど、それ以外のみんなはさらに魔力の消費を抑えるため、時間を凍結してるのよ」
「時間を……凍結……?」
「その人の時間を止めるのよ。さらに外敵の侵入を防ぐために〈マギア〉全体の時間も止めてる。もっとも、今はあたし達が入ってきたから〈マギア〉の時間だけは動いてるけど」
言葉が出なかった。
リアは簡単に言ってのけるが、彼女には〈マギア〉という世界の全員の生死がかかっているのだ。世界全員の命を預かる重圧とは、いかほどのものだろう。アサヒには想像もできなかった。
「ここよ」
そうこうしている間に目的地に到着した。
そこは、周囲と同じくレンガ造りの建物ではあったが、より大規模な建築と、緑青色のドームが印象的な建物だ。
中央庁舎。リアはそう言っていた。この世界の中心なのだろう。
石造りの門をくぐって緑が青々と生い茂る庭を越え、周囲の建物よりも大きな木の両開きの扉に手をかけたとき、扉が勝手に開いた。
いや、奥から開かれたのだ。
そこには、小柄な老爺がいた。
リアが微笑む。
「ただいま、先生」
白髪に白い髭を讃えたその老人は、柔和な微笑みをアサヒに――正確には胸ポケットの中のリアに向けた。
「おえかり、リアフォーレル。その様子だと何かあったようだね」




