その5
「ねえ、アサヒ」
徐々に闇が支配していく中、それに抗うようにぱちぱちと音を立てて燃えさかるたき火を見るリア。その瞳が炎の光に反射してきらきらと揺れている。
「なに、リア?」
鍋にこれもリアが魔法で出した水をかけ、沸騰するまでの間残りの野菜を一口サイズに切る。
リアはこの身体のサイズでもアサヒと同じかそれ以上によく食べる。呪いによって失われる魔力に抗うためにはたくさん食べなければならないのだ。
「ご飯は炊かないの?」
「え?」
アサヒは食材が入っている袋の中を覗いた。米は――まだある。が、この先いつ手に入るかわからないので、少しずつ節約して使うつもりだった。
だが――
「ご飯、食べたいの?」
そう聞くと、リアはこくりと頷いた。
「あの洞窟の中でさ、ご飯だけ食べたじゃない?」
「ああ……」
あの時はご飯にシチューをかけようと思っていたのだが、シチューをエクリプスに食べられてしまったので、ご飯だけの食事となってしまっていた。
「最初に食べたときは気づかなかったんだけど、ご飯にもちゃんと味があったのね。甘くて、優しい味」
そう言われてアサヒは胸の奥が温かくなる気持ちになった。自分が認められたような感じ。なんだかんだで自分は日本人なのだなあと思った瞬間であった。
ならば、思いに応えなければなるまい。
米の残量など気にしている場合ではない。ユーザーの求めているものを出すのは料理人であろうと漫画家であろうと変わりはしないのだから。
「まかせて。これまでで一番おいしいご飯を出してみせるよ」
そういうアサヒの表情は、プロの漫画家のものであった。
結果から言うと、この晩アサヒが作ったポトフとご飯はリアに大変好評だった。
その晩、二人は大いに語り、そして眠りについた。




