表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W線上のアリア  作者: 雪見桜
トンネルを抜けるとそこは故郷だった
PR
58/68

その4

 アサヒの胸ポケットに収まったリアは爆発していた。

(な、何を口走ったの、あたしは……!?)

 彼女にとって幸いだったのは、胸ポケットの中にいるおかげで自分でもわかるほど赤くなってしまう顔をアサヒに見られることはないということだった。


「というか、その鎧、リアが中にいなくても自動で歩くんだね」

 アサヒが何か話しているみたいだが、ほとんど何を言っているのか理解できない。

 今彼女の知覚にあるのは、服越しに伝わるアサヒの体温と彼女の身体全体に響き渡る彼女自身の鼓動だけだった。


 そのあとの記憶はほとんどないが、気がついたら日が傾き始めていた。

 周囲は相変わらず荒れ地が続いている。時折枯れた木や朽ち果てた動物の骨が見当たるほかは大きな岩がごつごつと散らばっているだけだ。

「そろそろ日も暮れてきたね。風も冷たくなってきたし、キャンプ地を探した方がいいかも」

「そうね。ちょっと探すから、ギアに戻して」


 リアがそういうので、アサヒは胸ポケットに入っていたリアの身体を優しくつかんでギアの面頬近くまで運んでやった。

(きゃー! きゃー! きゃー!)

 その時のリアの様子はお察しの通りであるが、幸いにしてアサヒに気づかれることはなかった。


 リア全身鎧に戻ると全身鎧は背負った本棚から魔導書を一冊取り出すといつものようにぱらぱらとページをめくってあるページに書かれている文字をなぞった。

「こっちにいい感じの場所があるわ」


 暗くなって足元も見えにくくなった頃たどり着いたのは、巨大な廃墟だった。

 かつてはこの世界の都だったのかもしれない。だが今では殆どの建物は長い年月の果てに崩れ去り、今ではその面影を僅かに残すのみだった。

 二人はその中でも比較的損傷の少ない建物を見つけ出して中に入っていった。

 これなら二人雨露をしのぐには十分だ。


「じゃあ、僕は夕食の準備をするよ」

 荷物を置いたところでアサヒは調理器具と材料の入った袋を持って外に出た。

「今日の夕食は何かしら?」

 リアは部屋の隅に全身鎧を座らせ、面頬から這い出てきた。


 アサヒはその様子におかしみを覚えながら、手持ちの食材の残りを考えながらレシピを構築する。

「そうだね……。この世界は〈スラーヴァ〉と違って気温が高いから、足の早い食材はもう使いきってしまおうかと思うんだ。だから肉と野菜の煮込み料理――ポトフとかがいいかな」


「〈ジルシー教会〉で分けてもらった野菜ともいよいよお別れね。名残惜しいわ」

「エクリプスさんにもらった肉もね」

「あの食い逃げ女のことはどうでもいいわ」


「はいはい」と言いながら夕食の準備にかかる。まずはお湯を沸かして――

「リア、火を付けてくれない?」

「わかった」

 全身鎧から這い出てきたリアはその小さな身体でてくてくと歩いてきてアサヒの拵えたかまどに火を付ける。この辺りに落ちている枝は乾燥しきっており、火を付けるのに非常に都合がいい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ