その2
「どんな世界なんだろうね、ここ」
新しい世界に入って数分。まだ岩場しか見えないので、ここがどんな世界なのかわからない。
「どうかしらね。あの〈スラーヴァ〉が侵略してないってことだから、過ごしやすい世界って訳ではなさそうだけど」
〈スラーヴァ〉という世界は、雪と氷のないすごしやすい土地を目指して周囲の世界を侵略していた。だが、〈スラーヴァ〉を内包する多世界〈トランカータニア〉のことわりによって、征服された世界は征服した世界と同じ気候・恩恵・属性になってしまう。彼らはそのことを知らなかった。
その〈スラーヴァ〉と隣接していながら侵略されていないということは、見つかっていなかったか、その価値がなかったかのどちらかだ。
「それでも雪が積もってないだけマシだよ。僕の住んでた街も雪には弱くて、よく電車が止まってたよ」
「へぇ。あんたの世界って、どんな感じなの?」
全身鎧の面頬が開いて、中からプラチナブロンドの美少女が現れた。美少女は鉄仮面から這い出してきて全身鎧の肩に座る。そうしている間も全身鎧は変わらず歩いていた。
この小さな美少女がリアの正体だ。
とある事情により身体から魔力がなくなっていく呪いにかかっている彼女は、魔力の消費を抑えるために身体を小さくして、この真っ黒な全身鎧の中に入って世界樹を目指す旅をしているのだという。
この鎧は魔法で動いているため、〈スラーヴァ〉の戦いで世界全体の魔法を禁止にした影響でW線を越えるまで動けなかったのだ。
「その鎧、中に入ってなくても動かせるんだ」
「歩き続けるくらいの簡単な動きならね。どう、すごいでしょう?」
アサヒが聞くと、全身鎧の肩に乗っているリアがドヤ顔で答えた。
「やっぱり自分で動いてないじゃないか……」
ぼそっと一言。だが、
「何か言った?」
「何も言ってません!」
アサヒは背筋を伸ばしてスタスタと歩いて行く。
「それで?」
「え?」
「あんたの世界って、どんな感じなのよ。教えなさいよ」
「どんなって言われても……普通だけど」




