その4
「相談は終わりかしら? それで、どんな小細工を弄するつもり? 何をしたってこの物量で押しつぶしてあげるわ!」
頭上から声が聞こえてきた。見ると、甲冑たちの上で足を組んでふわふわ浮かぶ女魔術師が勝ち誇った表情をしていた。
「どんな物量があったって、それを操る指揮官が無能じゃね」
リアも負けずと憎まれ口を叩く。しかし女魔術師の余裕の表情は変わらない。
「あらそう。ではその物量に押しつぶされてしまいなさい!」
女魔術師の腕が振られると、甲冑たちが一斉にリアに向けて殺到してきた。
「掴まってなさい。舌かまないで!」
「わ、わかった!」
言われたとおりにアサヒがリアの腰に抱きつく。一瞬、リアの身体がビクッと跳ねたような気もするが、次の瞬間、周囲の風景が吹っ飛んだ。
いや、リアが猛スピードで突進したのだ。
その勢いで正面の甲冑数体が吹っ飛んだが、多勢に無勢。その勢いもすぐにおさまっていき、速度が衰えていく。
「それでいい。織り込み済みよ!」
「よく戻った、よく戻った、よく戻った……」
次にリアが立ち止まったのは女魔術師の元ではなく、玉座の正面だった。
「何を? 今更そいつを抑えたって何の解決策にも――やっておしまい!」
女魔術師の号令で甲冑たちが玉座に向かう。その勢いは皇帝もろとも押しつぶさんとするほどのものだ。
「遅い!」
リアは手に持った魔術書の一番後ろのページを開いた。そこは何も書かれていないページ。
そこに取り出したペンで新たな文章を書いていく。それは常とは異なる原理で動作する、世界の理を書き換えることすら可能な力を持つ文章。それを即興で構成して文字の形に翻訳して書き加えていく。
書き加えられた文章は術者を待たず書かれたそばからその意味を構成し、力として形を成していく。
ペンがページの最後に到達すると同時に構成が完了し、力が意味を持つ。その力はリアの右手に集まり――
「これで、おわりよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
赤く光ったリアの右手が皇帝の額へと伸びる。
「…………!?」「…………!!」「よく戻った……」
即興で書かれた魔法はその狙い通りに皇帝の精神へと達し、術者の予定通りの効力を発揮した。
すなわち――




