その6
「すまん!」
エクリプスは勢いよく洞窟の地面にダイブし、そのまま頭を擦りつけた。いわゆるジャンピング土下座である。
「私を――ここにしばらく留まらせてくれ!」
土下座するエクリプスの背は寒そうに細かく震えていた。
が――
「ははーん? 誰が、どこに――なんだってぇ?」
腕組みをした漆黒の全身鎧が土下座をするエクリプスを思いっきり見下ろしていた。その表情は鎧の向こうでわからないはずなのに、アサヒには満面の笑みが透けて見えるようだった。
「頼む!」
土下座のエクリプスがさらに頭を低くする。だがリアは容赦ない。
「えー。でも、食い逃げ犯と一緒は嫌よねぇ。見てよこの貧しいあたしの食事」
そう言ってご飯を差し出すのはやめてほしい。日本人として。
「リア、その辺でそろそろ」
釘を刺そうとしたその時。
「そうだろうと思って――」
「?」
エクリプスは立ち上がり、おもむろに洞窟の外へと歩き出した。今気づいたけど、この女性、かなりデカい。小柄なアサヒと比較すると、頭ふたつ分もデカい。
そしてエクリプスは雪に埋もれていた大きな何かを引っ張り出すと、たき火の前で堂々とそれを掲げた。
「手土産を持ってきた」
「…………!!」
大柄なエクリプスが大きく掲げたのは彼女の身長ほどもある巨大な熊のような動物だった。『ような』というのはその頭部が鋭利な刃物できれいに切断されているためだ。
「さっきのシチューに肉、入れてみないか?」
「歓迎するわ」
リアがエクリプスとがっちり握手した。芸術品のような手のひら返しを見たような気がしたアサヒだった。




