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W線上のアリア  作者: 雪見桜
べことベヒの輪舞曲
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107/110

その8

 ばくん!

 その巨大な口が燃え盛る剣ごとアサヒを丸呑みした。


「あ、あ…………」

 その瞬間、リアの眼の前が真っ暗になった。

 しかしそれは一瞬のことで、すぐに理性を取り戻し、魔導書の別のページを開く。


「何か……何かないの? なにか打開策は? 今ならまだ助けられる!」

 ページを開くも、そんなものが簡単に見つかるはずもない。あるならとうに試しているからだ。

 焦りから思考が空回りして、魔導書に書かれていることが理解できない。冷静にならねばと思えば思うほど焦りが募っていく。

 周囲に何冊も魔導書を散らかして魔導書のページをただただ捲っているだけだったのだが、当の本人は気づく由もない。


「早く……早くしないとアサヒが……!」

 そうしている間にも金のひと粒に等しい一分一秒が失われていく。だが、アサヒを救い出す秘策は見つからない。そもそも、そんな物があるのかどうかすら定かではない。

 次第にリアの心を絶望が満たしていく。


「嫌……いや……」

 リアの魔導書のページを繰る手が止まった。

「嫌よ。アサヒ」

 全身鎧の体が揺れる。声が震える。外からでは見えないが、リア自身の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。

「アサヒ……アサヒ……アサヒぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 ぼごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!


 その時、巨大な破壊音とともに、ベヒーモスが大きくのけぞった。

 と同時に、破壊音の中心――ベヒーモスの頭部から何かが飛び出した。

 その小さい何かは地面に落下すると、ゴロゴロと転がってそのまま静止した。


「ごほっ、げほっ!」

 アサヒは激しく咳き込むと、そのままうずくまった。

「アサヒ!」

 リアが大急ぎで駆け寄っていく。


「大丈夫? 怪我はない?」

「げほっ、なんとかね……ごほっ」

 アサヒは咳き込みながらもふらふらとなんとか立ち上がる。


「ねえ、リア」

「どうしたの、アサヒ? どこか痛いところでも?」

「いや、あのさ……」

 アサヒがリアと自分の足元を交互に見る。


「なんでそんなに離れてるわけ?」

「え、そりゃあ……」

 リアはアサヒを見ながらなにか言いづらそうにしている。


「汚いじゃん。臭いし」

「ひどい……」

 アサヒはショックを受けたが、ベヒーモスの唾液まみれになっているのは事実なので仕方なかった。


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