その4
「いた!」
探査魔法に最後の一頭が引っかかったのは、それから数分もしないほどだった。
日はだいぶ傾いてきており、西の空が赤くなってきている。急げば暗くなる前に街へ戻れそうだ。二人は小走りで反応のあった場所を目指していく。
そこは、荒野の真ん中に大きな岩がそびえ立つような場所であった。
「ここね。この岩のせいで探査が届きにくかったんだわ」
見上げながらリアが言った。最後の一頭――牛はすぐに見つかった。岩の陰からひょっこり顔を見せたからである。
「さっきと同じ作戦で。行くわよ」
「オッケー、いつでもいいよ」
リアが魔導書を開く。アサヒは世界樹の剣を片付けて、代わりに肘から蔓をするすると伸ばしていく。
リアが魔法で牛の後ろで大きな音を立てて、驚いて逃げ出した動物をその前方にてアサヒが大きく網目状に伸ばした世界樹の蔓で受け止める作戦だ。
これでここまでほとんどの家畜を捕まえてきた。
ぱん!
何かが破裂したような音が牛の後ろで発生した。牛はその音に驚いてアサヒの方へと走ってきた。アサヒはその前で大きく蔓を伸ばして待ち構える。
予定通りだ。なんの問題もない。暗くなる前に町に帰れそうで良かった。
と、取らぬ狸の皮算用をしたのがまずかったのだろうか。
「ねえアサヒ。あの牛、なんだか疲れてない?」
リアの言う通り、牛は真っすぐこちらに走ってきているが、足元はおぼつかない。ふらふらしている。
「でも、なんだか必死に走ってきているようにも見えるね」
どごおおおおおおおおおおおおおん!
リアが起こした音の何十倍も大きな音とともに大岩が砕け散った。
更にそこから現れたのは――
「んもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「な、なにこれえええええええ!」
アサヒの叫び声をかき消すほどの雄叫びを上げて現れたのは巨大な四本足の――牛に似た巨大な怪物。
「ベヒーモスよ!」
巨大な獣を総称して『ベヒーモス』というが、このベヒーモスは常識外の大きさだ。
なにせ、牛が隠れていた巨大な岩山と同じくらいの大きさがあるのだ。『山のように大きい』と、比喩でもなんでもない大きさだ。




