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W線上のアリア  作者: 雪見桜
べことベヒの輪舞曲
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101/108

その2

 そんなすったもんだがありつつも、数分後には何事も起こらずにその場所までたどり着いた。

「大丈夫ですか?」

 リアの背から降りたサンピが倒れている男性の肩を揺する。痩せ型で日に焼けた三〇代くらいの男性だ。見た感じ健康そうで行き倒れたようには見えない。


 ここは荒野の真ん中。町まで歩いて三〇分くらいの場所だろうか。町に続く道の上でも、なにかの目印があるわけでもない本当にただの荒野の真ん中だ。

 そこで倒れているこの人を見つけて、コッパはサンピたちを呼んできたのだろう。


「コッパちゃんは一旦街に戻って人を連れてきて。この人を町まで運ぶから」

 そうサンピが指示すると、コッパは頷いて走っていった。


「これで頭を冷やしてみて」

 リアが魔法で濡らして冷やしたタオルを差し出した。

「ありがとうございます」

 サンピがそのタオルで男性の顔を拭きながら冷やしていく。すると――


「う……」

 サンピの介抱のかいあってか、男性は意識を取り戻した。

「大丈夫ですか? わたしの言ってることがわかりますか?」


 しばらく朦朧としていた男性だが、やがて自分の陥っている状況を思い出したのか、がばりと上半身を起き上がらせてあたりを見渡した。

「いねえ! おらのべこがいねえべ!」

 そのうろたえようは見ていて可哀想になるほどだった。


「つまり、化け物に襲われて気を失っていた、と……?」

「んだ。そんで気がついたらおらのべこがいなくなってただ」

 サンピが事情聴取をしているのを横に、リアがアサヒに耳打ちする。

「べこって何?」

「多分、牛のことだと思う」


 男性の話を要約すると、彼は家畜を連れて様々な世界を渡り歩いている遊牧民で、たまたまこの地を訪れたということらしい。

 そこで突然怪物に襲われ、気を失っている間に彼の家畜がいなくなってしまった、ということだ。


「お願いだ。オラのべこを助けてくんろ。べこがいねえとオラ、オラ……」

 などと言いながら「およよ」と泣き出してしまったので、はいさようならとは言えなくなってしまった。


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