その2
そんなすったもんだがありつつも、数分後には何事も起こらずにその場所までたどり着いた。
「大丈夫ですか?」
リアの背から降りたサンピが倒れている男性の肩を揺する。痩せ型で日に焼けた三〇代くらいの男性だ。見た感じ健康そうで行き倒れたようには見えない。
ここは荒野の真ん中。町まで歩いて三〇分くらいの場所だろうか。町に続く道の上でも、なにかの目印があるわけでもない本当にただの荒野の真ん中だ。
そこで倒れているこの人を見つけて、コッパはサンピたちを呼んできたのだろう。
「コッパちゃんは一旦街に戻って人を連れてきて。この人を町まで運ぶから」
そうサンピが指示すると、コッパは頷いて走っていった。
「これで頭を冷やしてみて」
リアが魔法で濡らして冷やしたタオルを差し出した。
「ありがとうございます」
サンピがそのタオルで男性の顔を拭きながら冷やしていく。すると――
「う……」
サンピの介抱のかいあってか、男性は意識を取り戻した。
「大丈夫ですか? わたしの言ってることがわかりますか?」
しばらく朦朧としていた男性だが、やがて自分の陥っている状況を思い出したのか、がばりと上半身を起き上がらせてあたりを見渡した。
「いねえ! おらのべこがいねえべ!」
そのうろたえようは見ていて可哀想になるほどだった。
「つまり、化け物に襲われて気を失っていた、と……?」
「んだ。そんで気がついたらおらのべこがいなくなってただ」
サンピが事情聴取をしているのを横に、リアがアサヒに耳打ちする。
「べこって何?」
「多分、牛のことだと思う」
男性の話を要約すると、彼は家畜を連れて様々な世界を渡り歩いている遊牧民で、たまたまこの地を訪れたということらしい。
そこで突然怪物に襲われ、気を失っている間に彼の家畜がいなくなってしまった、ということだ。
「お願いだ。オラのべこを助けてくんろ。べこがいねえとオラ、オラ……」
などと言いながら「およよ」と泣き出してしまったので、はいさようならとは言えなくなってしまった。




