乱痴気騒ぎは脱線気味8
店が立ち並び、人々は歩き回る。
シルス市きっての繁華街がここである。この盛況ぶりでは人の一人紛れ込んでもわかるものではあるまい。
そこへ異質な色の人々が流れ込んできた。二人一組で動き片手に無線機を持っている。
……本気であいつら俺を捕まえる気かねぇ。アレックスはそう思った。
ただのメカニックとは一味違う、この歌って踊れるアレクサンダー・ジェーム・ステイラー様を、たかが役人風情で捕まえようってのがそもそもの間違いなんだ、うん。
アレックスは先ほどそこの古着屋で上下のつなぎを売り払い、この服を買って来たばかりだ。服が違うだけでも相手の目をごまかすには十分役に立つ。
……しかしあの愛用の服を売り払うのには並々ならぬ勇気を必要とした。まあ、同じものがヘルメス号には5、6枚あるんだがね。
さあって、あのキャップからのご命令をどうやって実行しろってんでしょうねー。……なんかやけになってきたぞ。えい、キャップもキャプだ。この状況も知らねえで勝手なこと言いくさりやがって……。
アレックは立ち止まった。
街角の人混みの中である。後ろを振り返らなくても彼にはわかった。
つけられている。
何の気なしにアレックは再び歩き出した。
鏡台のあるショーウィンドウを覗き込む。ちょっとふざけて鏡に向かって舌を出しておどけてみせる。しかしその隅に写った二人の男を見逃しはしなかった。
……へー、やっぱりやつらか。アレックスがちょっとニヤリとしたのに気がついたものはいるか?
いきなりダッシュして人気のない横丁へ入り込む。
しまったという顔をして二人が後を追う。
……行き止まりの袋小路だった。人は誰もいない。
「……消えた……」
二人の刑事は戸惑い顔を見合わせた。少しして、一人の刑事は混乱しつつも懐に手を入れた。
「と、とにかく連絡しておこう」
「あ、ああ、そうだな」
無線機を片手に持ち操作しようとした時、突然上から何かが降ってきた。何が? 人が。アレックスという名の人間が。
「うわっ!」
よっかかられた二人は一瞬で地面に這いつくばった。
アレックスの体重が感じられなくなり一人が立ったところをアレックスがそこらに落ちてたゴミ箱の蓋で叩くとすぐ伸びた。
素早い動きはもう一人を立たせようとはせず、落ちた無線機を足で遠くに蹴飛ばすと刑事の背中をもう1回踏んづけて地べたに這いつくばせて、もう一人の懐から落ちていたブラスターをもう一方の足で蹴り上げて手で持ち突きつけた。
「宇宙横断タぁーイムショック」
アレックスは言った。
「これから出す問題を1問残らず正直に答えてくれれば無罪放免。一問でもごまかそうとしたら即銃殺刑。 OK?」
「断る! 離せ離せ!」
「あっそ。まあ、その方が俺も楽なんだけどさ」
寝転んだ刑事の右のこめかみをかすってブラスターの光線が飛んだ。髪を一部焦がしたものの、血は一滴も出ていない。
「ひえええええぇ」
「あっちゃー、ずれちまった。悪いね。今度こそ即死にしてあげるから」
「やめろ! やめろ!」
「all right。 第一問な」
アレックスはニヤリと笑うと質問をし始めた。
「第一問。オタクは刑事さん?」
「そ、そうだ」
「第2問。その刑事さんが何で俺を追っかけるわけ? スピード違反にしちゃ大げさすぎねーか?」
「軍が、軍と情報部がお前らを探しているからだ」
「軍が?」
「なぜかは知らん。知らんが奴らが欲しがっているものをやる気はない。それで」
「先に手に入れちまおうと」
「……そうだ」
「第3問。お前らって言ってたけど、他の奴らはどったの?」
「先ほど3人捕まったそうだ」
「3人……残り全員じゃねえかよ……。全くキャップも口ほどにない……。第4問。どこに捕まってるって?」
「FS通りの55。空き家の地下だ」
「あっそ。そんじゃこれご褒美」
首筋にチョップを受けて簡単に刑事は気を失った。意外と弱い刑事たちにちょっと拍子抜けしたアレックスである(アレックスが強すぎるんだって)。
「FS通りの55、ね」
アレックスはそう呟くと人通りの多い通りをこっそり覗いた。
「あー、まだうろちょろしてやがんの。また一人ぼっちでいるバイクを引っ掛けて乗り込むしかねえかな……」
我ながら芸がないなあとアレックスが思った時だった。




