乱痴気騒ぎは脱線気味7
それはドクに十分な精神的ショックを与えた。みるみる青ざめるドクから注意を逸らそうとマイクは言った。
「しかし、奴らだってそれほど馬鹿じゃないでしょう。留守番の一人や二人ぐらい置いてたんじゃないですか?」
「一緒に捕まったんだろうな。ヘルメス号に乗って軍のやつらとどっかに行っちまったのかもしれん」
「え?」
「どこかの海賊が乗っ取ってこの星を出てっちまったんだとさ。そいつはこちらへ来ずに、そっちに行くかもしれねえ」
ヘルメス号が、取られた。
ドクは深い後悔に囚われた。
どうして、どうして私はセラのそばに残ってこなかったんだろう。患者の世話をするのが医者の本分じゃないか。いくらマイクが捕まったからといって、どうしてセラのことを考えなかったんだろう。それから、ハワード。多分セラを守って頑張ったんだろう。でも、やはり一人ではどうにもならなかったんだ。そんな時に、どうしてそばにいてやらなかったんだろう。
誰かが上から降りて来た。四人はふと振り向いた。
知らない警官だった。今まで見張りをしていた警官が片手をあげて声をかけた。知り合いらしい。
「もう帰ってきたか。交代だぜ」
「わかってるって。そっちは誰だ」
「奴らを3人連れてきたんだ。護送車でね」
マイクがそう言うと、警官はじっと3人の顔見て、ゆっくり尋ねた。
「……お前ら……誰だ?」
ここでうろたえてはかえって疑惑を生む。マイクがそう思ってるそばから、アンディが余計な口出しをする。
「誰って……警官ですよ」
ぞんざいな警官の口調にムッとしていたのだろうが、それがあまり良いものとは言えなかった。
「どこのだ」
「どこの?」
「どこの署のどこの部署だ」
ここでまた坊やに口を開かしたらまずいことになる。マイクはそう思って早めに口火を切った。
「はっ、シルス署交通課のウィンプトンであります」
「同じくラザフォード」
「同じくドルトンです」
無論デタラメである。しかしある程度の信憑性を持たせられる。だが相手はまだ不服そうだった。
「シルス署とはどこのシルス署だ」
「あの……北シルス署」
ついついアンディは言ってしまった。二人の警官は顔を見合わせた。
まずいことになったのかもしれない。そうマイクが思った時だった。
絞められた扉が突然、向こう側から連打された。
「おい! 開けろ! 開けてくれ!」
どうやらあの眠らせた警官が気が付いたらしい。
「俺は警官だ! シルス署の! 早く出せ!」
「どこのシルス署だ!?」
アンディはあの警官と同じことを尋ねた。
「ばかやろう! シルス署が二つもあってたまるか! 早く出せ!」
しまったとマイクは思った。ひっかけだったのか。
そう思うと同時に拳が飛んだ。そして3人を素早くKOさせた。ドクである。
「気絶しているだけです。2、3分は大丈夫と思うんですが」
3人はわめく牢屋の中の住人を無視して階段を登った。最初に登っているアンディにマイクは忠告した。
「急げ。慌てるな。こっそりと、大胆にだ」
「そんな、矛盾したことばっかり……」
アンディが口の中で愚痴る。
アンディが外への扉の所まで来て、そっと扉を開けて、外を覗いた。するとポップコーンが弾けるようにドクとマイクの後ろに隠れてしまった。
「……どうしたんです?」
ドクが聞いても何も言わない杏アンディに、マイクは嫌なものを感じた。
扉が嫌なきしみを立てながら開いた。
一人の男が立っていた。出迎えの時にあった、さっきの刑事である。
「……どこへ?」
刑事だけではなかった。後ろには機動隊一個中隊が揃っていた。
3人は動けなかった。
後ろから聞こえる扉を叩く音や怒鳴り声も、3人の耳には聞こえていなかった。




