乱痴気騒ぎは脱線気味6
床に横たわった3人の男の前に、制服を着込んだ3人の男が立っている。
一人は髪を全て帽子に入れ込み、一人はヒョロ長く、一人はどう見ても未成年者であった……。
「ちょっと冗談はやめてくださいよ、これでも俺は……!」
「「22才」」
「そうです、わかっておられるんならいいんです」
車の外に出てこれで15回目の問答を繰り返した3人だった。
「……来ましたよ」
髪を帽子の中へ入れ込んだ男がひょろ長い男を肘で突いた。
「交渉は一切僕が相手する。二人は僕に合わせて、余計なことは言わないように」
残りの二人が頷いた。
近づいてきたのは私服の、多分刑事だろう。
マイクが敬礼をすると、二人もそれに習った。
「三名護送して参りました」
「ご苦労」
相手は3人に頷くと、さっさと護送車の後ろへと回っていった。マイクが追いついて扉を開けた。中にはぐったりとした3人の男がいた。
「途中で抵抗してきましたので、少し眠らせているのですが……」
「いいんだ」
たいしたものでもないかのように刑事は言った。
「生きてりゃいいんだ、人質は。早く地下に運べ」
「地下のどこに?」
「行けばわかる」
「はっ」
人質、ね。マイクは考えた。
警察と軍、つまりヴェルドゥとは関係ないと言っていた。それなのに人質を取るってことはつまりは……切り札かな。
どんどん警察に口出しする軍。プロであるという意識が強いほど、軍の口出しには我慢できないだろう。その軍が固執している人間がいる。その人間を手に入れるって事は、弱みを握るってことでもあるだろう。交渉次第では国内でも主導権を握れるかもしれない。……全く大した人間になったもんだ、とマイクは思った。
他の二人に身振りで示して、3人を抱えて家(おんぼろ小屋のような)に入っていった。下に降りる階段はすぐに見つかった。下っていくと伸びた廊下の突き当たりの扉の前に、警官が一人立っていた。
「ご苦労さん」
彼はそう言うと扉を開けた。窓も明かりもない。つくづく入らなくて良かった。顎で部屋をさしてマイクは聞いた。
「放り込めばいいので?」
「ああ」
文字通り次々と部屋に放り込んでいく。重い体を放り込んでロビンソンはふぅと息を吐いた。3人が3人を運ぶんだから、どうしても一人を一人で運ぶことになるのだ。
ふと警官が尋ねた。
「で、誰と誰と誰なんだ」
「マネージャーと船つきの医者らしいですよ。もう一人は……誰でしょうね。星間ジプシーですかね」
「さぁなぁ」
何気なく話す言葉のうちに、マイクは罠を用意した。彼らが目を覚まして警官だと喚く時の伏線を張らなくては。
「ヘルメス号のマネージャーってのはずいぶん頭の働く奴ららしいですからね、もしかしたら『自分は警官で奴らとすり替えられたんだ』とでもわめくかもしれませんよ」
「そんな嘘が通るか」
自信満々に男は言ってのけた。
「俺の目は節穴じゃねーぜ」
……立派な節穴だな。とにかく長居は無用だ。さっさと抜け出そう。
他の二人に合図して階段を登ろうとした時だった。
「おい待てよ」
げ、ばれたか。
歩みを止めて何時もないように振り向いた。警官はにこにこと笑いながら言った。
「暇だろ? 少し話していけよ」
暇つぶしの相手に、というわけだろうか。3人は素早く視線を巡らせた。ロビンソンはこっそり外に出ようとしたが、たちまち見つかって言われた。
「そっちの二人も」
こうなるとマイクは度胸を決めた。平然と、人懐っこそうな笑顔を浮かべて近づいた。
「何か面白い話でもありますか」
「ヘルメス関係だがな。聞きたいか?」
「ええ」
ここで少しでも情報が入るならいい。そう思って話を促した。
「シャトルステーションの方でな、一人見つかったらしいぜ」
「誰です?」
「メカニックの……。何て言ったっけなあ、えーと……」
「てってって……」
とマイクはわざと詰まったふりをした。
「そうそう、テイラーテイラー。 そいつらしい」
「捕まったのか?」
「いや、逃げられた。全く不甲斐ない」
誰かがほっといかにも安心したというようなため息をついた。ドクだった。
マイクは一瞬しまったと思った。警官も怪訝そうにドクを見ている。ごまかさなくては……。
「そ、そうか、よかった」
突然アンドリュー・ロビンソンが言った。マイクは心の中で「バカ!」と叫んだ。
もうだめだと思ったが、次のセリフはマイクにも予想できなかった。
「これで俺達にも手柄を立てるチャンスが巡ってきたってもんだ」
あ、とマイクは思った。そうか、そういう手があったか。
「多分やつは仲間を助けに来ますよ。そのときに捕まえりゃあいい」
マイクはそう言いながら肘でアンドリューを突いた。うまくやったな、というようなマイクの顔に、ちょっとアンディは微笑んでみせた。
「しかしこちらには来ないかもしれんぜ?」
「どうしてです?」
ドクが尋ねた。
「軍がな、ヘルメス号を抑えたらしいんだ」




