ファイターズ7
さて、今の今まで触れてこなかったヘルメス号はどうなっているだろう。
やはりここにも宇宙ステーションはあり、駐船場はある。あるなら使わなきゃ損ってんで、ヘルメス号もここに置いてある。
その置いてあるヘルメス号のハッチ近くに今、10人ほどの男がいた。ステーションの警備員のような格好をしているが、そうでないことは一目でわかる。
「オ断リシマス」
コンピューターボイスが彼らにそう告げた。
「なぜかね」m
10人ほどの男たちの中でも別格とわかる男が言った。
「ここの船長であるディアス氏はもう本部で罪を認めている。立入検査を拒否するとなると、こちらにも考えはあるが」
「理由ソノ1、きゃっぷハ アナタ方ヲ一人タリトモ入レルナ ト言ッタ。従ッテ新シイ命令ガ出ルマデハコレヲ守リマス。
理由ソノ2、私ノ記憶でーた及ビ対策装置ニハ密輸品ハ見ツカラズ、許可書モ チャントアルコトヲいんぷっとシテアリマス。きゃっぷガ罪ヲ認メルワケナイデスヨ」
「だからその許可書を見るために……」
「ソノ3、内蔵サレタ嘘発見器ニヨリ、アナタノ嘘ガ判明シマシタ。……モウイイ加減ニナサッタライカガデス?」
「てめえ……!」
部下の一人がいきり立ったが、すぐにリーダー格の男のドスの効いた声に止められた。
「止めねえか! 機械相手に怒る奴がいるか!」
たしなめるとまた、役人という声に戻ってハワードに言った。
「では、どうしても開けないと?」
「開ケマセンヨォ」
「ほぉ……。それでは……黒鷲の」
「へい、グリフォンの兄貴」
黒鷲と呼ばれた男は、懐から手にすっぽりと収まるくらいの長方形を取り出してグリフォンに渡した。手渡されるとグリフォンと呼ばれた男は、長方形の端についていたアンテナをするすると伸ばし、箱のカバーを開けて銀河公用語文字の書かれたキーボードをあらわにした。
「こうすればどうなる?」
グリフォンの指がキーボードの上を滑り、一つのワードを押していった。
『ス・ネ・イ・ク』
しばらくの間は何もなかったが、突然コンピューターボイスの代わりにピーとかガーとかザーとかいう雑音が入れ替わり立ち代わりしたかと思うと、今度は途端にピタッと止んだ。
グリフォンは薄笑いを浮かべながら部下の方を見ると、ハッチの方に向かってゆっくり、そしてはっきりと言った。
「ハッチを開けろ」
「……イエス、マスター」
それは一応確かにコンピューターボイスだった。しかしハワードのそれではない。
ハワードのは心持ち甲高くて少し早口だが、今の声は低く重くゆっくりで、何か非人間的なものを感じさせるものだった(それはまぁコンピューターだからね。でもハワードって普通の人間より人間ぽいし……)
ハッチが開き、ゾロゾロと男達は入って行った。
「遮霊布を用意しな」
グリフォンが言った。
「びっこのジャンの連絡じゃ、まだジプシーが一人残ってるらしいぜ」
「しかし兄貴」
一人の部下が遮霊布を取り出して言った。
「本当にこいつで力を抑えられるんで?」
「エスパーには有効らしいがな。ジプシーってのは結局エスパーなんだろう?」
「さあ、どうっすかね」
そう言ってる間に他の部下たちは通路を四方八方に走りかけた。虱潰しに探すつもりだったのだろう。しかしそれに気づいたグリフォンは彼らを止めた。
「何、効率の悪い事やってやがんだ。やめろ」
「しかし兄ぃ……」
「バカヤロー。少しは頭使えってんだ」
そう言うとグリフォンは「スネイク」を呼んだ。
「……イエス、マスター」
「ジプシーはどこだ」
「ハッチカラ……入ッテ……右ニ行キ……最初ノ右ノ扉……ソコデス、マスター」
「そういうことだ。とっとと行きやがれ」
「へい」
あらかたの部下が走り出すのを見届けると、グリフォンは他の部下を見て言った。
「俺らはコックピットの方へ行く。ついてこい」
「へい」
「 案内だ。スネイク」
「……イエス、マスター」
不気味にコンピューターボイスが響いた。




