危機から逃げ出せ6
マイクの所へキャップが届いたのは、それから15分後だった。
手術台のような所へ寝かされ、手足首を鉄の輪で台につけられてふてくされている姿は、少し前だったらマイクの涙を誘ったかもしれない。
「……よく捕まえられましたね」
マイクがごく冷静に中佐に言った。
「おかげで5人が意識不明の重体だ」
「死人が出なかっただけ感謝なさい」
そう言うと中佐のそばを離れ、台の側へと寄った。
「博士」
運んできた士官の一人が言う。
「奴の頭の上のスイッチに触らないようにしてくださいよ。輪が外れて暴れだしますから」
「馬鹿野郎! 俺をゴリラかストラドンとでも思ってやがるのか!」
キャップが吠える。
「違うとでも思っていたのか」
「お前なあ……。まったくてめえ、いともあっさりと寝返りやがって」
「これを因果報って言うんですよ」
「何がいんがほーおーだ、バッキャロー!20年も船長だった俺を……!」
平静な顔をして顔を叩くことで、マイクはキャップを黙らせた。
「少しうるさいな」
ハエを相手にでもしているような感じで言うと、マイクはパンチを2、3発顔に食らわせボディブローを食らわせた。
「ぐ……」
「僕があなたから受けたのはこんなものではありませんでしたね。そのことはあなたがよくご存知のはずだ」
「知らん知らん」
「とぼけるんじゃない」
もう一発平手打ちを受けたディアスはその場に中佐がいることに気がついた。上を向いて彼を睨み付けると言ってのけた。
「てめぇの仕業か! 下水ん中が似合いの低能にぴったりな策だな、え!?」
「失礼な! 私を誰だと思っている、この虫けらが!」
どうやらキレたらしい。中佐はどこからか鞭を取り出しキャップに近づいてきた。マイクは中佐がやりやすいようにとするためか、キャップの頭の方へと場所を変えた。
「二度と言えんようにしてやる」
H中佐が歓喜の表情で鞭を振り上げた。
「あ、いっけね」
マイクの間の抜けた声が響く。
「ついついスイッチ、触っちまったぁ」
ディアスの手、足、首の輪が音を立てて外れて行く。
鞭を振り上げたままあっけにとられていたH中佐の顎に蹴りが入れられる。
倒れたH中佐が赤く染まった顎に手を当て呻きながら床を転がっている。台の上には一人の男が立て膝にして座っていた。
「よっ」
立ちすくんでいる2、3人の士官を放っておいて、ニコニコになりながらマイクはキャップに挨拶した。
「よっ、じゃあねぇっ! よっくまあ、殴りつけてくれたなぁ!」
腹をさすりながらキャップは言った。
「大して効かなかったろ?」
「いや、腹だけは効いた」
「そうか悪いな」
「悪いで済んだらGPRはいらん」
真面目なのか遊んでいるのかわからないようなセリフを交わしている二人に、今まで動けなくなっていた士官達が飛びかかってきた。
しかし司令官についてペコペコしている士官と、プロウォーリア並みの商人とでは結果はみえている。たちまちにのして、最後の一人を料理にかかっていた。
「おいおい、キャップ。一人は手加減してくれよ」
「お前の指示なんざ聞くかよ」
「残してくれんと、アレックとドクがどこにいるのか分からんのだ」
「……なんだつまらん」
首絞めにかかっていた士官からディアスが手を離すと、彼はゼーゼー言いながらへたばっていた。歯向かう気などなくなったらしい。
「素直に言ってくれればよし。言わないんなら、またひどい目にあうことになりますよ」
まだ声が出ないらしい。ものすごい勢いで士官は首を縦に振った。
「僕と一緒に入り込んだ二人、どこにいるかご存知かい?」
「……営……巣……」
「案内してもらいましょう。いいですね?」
士官は頷いた。
「おい、マイク。このおっさんはどうする? 人質としちゃ価値があるんじゃねぇか?」
まだうめいている中佐を見てキャップは言った。
「使い物になりませんよ。キャップがあんまり遊ぶから」
「なんでい。そうと知ってりゃ、もう少し手加減するんだった」
そんなことを言いながら部屋を出て行く二人と引きずられる一人を見送りながら、H中佐はその自尊心を傷つけられていた。
自分はこの船の司令官だ。もうすぐ大佐なんだ! 上層部に手に届く唯一の人間なんだぞ! それなのに、この仕打ちは何だぁ~!




