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危機から逃げ出せ1

……まいった……。


 予想に反してしまった

 いや、予感がなかったって言ったら嘘になるけどさ。実際ディアスの初登場の時に嫌な予感がして、わざわざ「ちなみに主人公ではない」の一文を入れようか迷ったしさ。


 どうも作者です。


 いやー、今回予想に反してディアス達が捕まってしまったので、愚痴ってたんです。まったく不甲斐ない。本当に僕のキャラクターなんだろうか。いや、だからこそ捕まったのかもしれんな。


 もとい。


 こんな事態になると予想していなかった。予定ではディアス達はH中佐をコテンパンにやっつけて、ヴェルドゥたちと対決するはずだったのに。


 とにかく。まずはディアス達の方へ視点を移してみましょうか。



 ヘルメス号は主力戦艦へと向かって行く。


 大慌てにふためいている戦艦と、沈着冷静で秘密兵器を積み込んだ商船。ここまではよかった。それがどうして捕えられるようなことになったのか。誰のせいなのか。


 全てこいつのせいである。名をマーキュリー・ディアスと言う。


 駆逐艦3隻、戦闘機は二桁を超えると言う戦果は彼をいい気分にさせていた。それでなくてもヒロイズムとナルシシズム喧嘩好きの塊だから、戦闘に夢中にさせるには十分なものだった。

 もう彼に見えたのは自分のシャトルと周りの敵だけ。主力戦艦の方へ移動したヘルメス号を知っていたか否や。……思えばこれがいけなかった。


 音もなく。

 また。

 人の命が消えてゆく。

 命の最後の残り火が。また。シャトルの中の男の顔を照らす。

 一枚壁の向こうは死あるのみ。

 ここは非常な世界なのだ……。


 と、言うにはこのシャトルのコックピットの中の、妙な盛り上がりは何なんだ。


「えぇい、ちくしょうめー! そこを動くんじゃねえ! あ、いいところに来た。よし。次は誰だ。ノコノコ出てきたところを見ると死にたいらしいな。よし、殺してやろうじゃねえか!」


 ……もしもし。

 ゲームセンターでゲームやってるわけじゃないんだから。もう。

 とはいえ、ディアスにとってはどちらも同じものであるという意識がある。金をかけるか、命をかけるかの違いがあるだけで。


 白銀の戦闘機がディアスの前に飛び出てきたのはその時だった。

 流線型のフォルムの船影の作り出すその軌跡は、ディアスにそのパイロットがただものでないことを知らしめるには十分なものであった。


「貴下に告ぐ」


 共通音信周波数で呼びかけられた声は、落ち着いた歴戦の勇者の声だった。


「小官はアラハン反乱軍大尉、ビルドゥユ・ランスロ―。貴下との一騎打ちを所望したい」


 その言葉を証明するように他の戦闘機が次々と帰投していくのは、誰の目にも明らかだった。

 一騎討ちたぁ古風な野郎だな。だが、なかなか面白い話ではある。


「よーし、その話乗った!」


 ヒロイズムの塊のようなディアスが乗ってこないはずがない。


 敵機の背後へ回ろうと、各自の持つ技術を駆使して見事なアクロバット飛行を繰り広げる。

 誰も二人を邪魔する者はいなかった。恒星の光が二機の姿を照らし出し、かと思うとそれらはたちまち流星とかした。

 マイク達とどんどん離れて行くのを、ディアスは果たして知っていたかどうか。

 宙を一筋の光線が飛び交う。いつも冗談半分に戦っていたディアスを本気にさせるものが向こうにはあった。

 再び敵から発射されたレーザーを交わし、体勢を整え反撃に出ようとしたその時だった。


 ディアスは反撃を開始した。搭載してあるイオン推進ミサイルお見舞いしてやるのだ。ディアスは操縦桿の上のキャップを親指で跳ね上げ、ボタンを押した。


 押した。押した、押した、押した。

 押すばかりでミサイルは出ない。


 そればかりではない。機内で灯っていたライトが次々と消えていくのだ。

 不気味な唸りをあげて作動を停止して行く機械は、まるで瞬間に氷付けにでもされたようであった。


「おい! こら! なんで止まるんだ! え!?」


 ディアスは止まったの現在地識別機に目を留めた。機影は雲状に記されている地域の上に記されていた。気づかないうちに入り込んだらしい。

 止まったままのメカを片手でぶっ叩くと、苦々しげにディアスは呟いた。


「なるほど……。パレ・サルガッソーってことかい」


 つい先日、暇に任せてアレックスがシャトルを改造したのが裏目に出た。

 それほど値の張るものでもない人工知能(と言っても学習能力も一段落ちる中古品だが)を備え付けて、ディアスの動き一瞬の反射神経について来れるようにしたのだが、そのためにかえって手動装置への切り替えができなくなったのだ。まさに翼をもがれた鳥、ヒレをなくした魚だった。


 ヘルメットを取り、脇に置いた。

 スペーススーツのファスナーを下げ、内ポケットからシガーとライターを取り出した。

 シガーをゆっくりとくゆらせると、パレ・サルガッソーに入らないように注意している戦闘機、駆逐艦の光が星の光とダブり、美しいハーモニーを醸し出すのを眺めるディアスだった……。(何をかっこつけてるんだか……)




この連休はリアルの都合がつかず、日曜の連載は月曜に変更します。申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。

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