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攻撃4

 さて、ここで少し話を変えよう。


 ここで筆者はこの戦闘に加わるべき、もう一つの勢力について話さなくてはなるまい。

 元海賊ヴェルドゥ氏、今のV大佐である。


 時間は少し前に遡る。


 V大佐が乗り込んでいた船オミドオール号は、ヒューマニア星系内の小惑星、DT31の秘密ドックからフロリレン星系にある反乱軍秘密基地への航行の途中にあった。では、V大佐は?


 V大佐は残っていた、DT31に。むろん一人でではない。


 V大佐の付き添いは、ドック内にあるトイレに入っていた。入口付近、洗面所、トイレの各個室まで隅々まで調べ、大佐がいないことを確認すると、思いっきり叫んだ。


「v大佐の馬鹿野郎! 俺になんか恨みでもあるのかよー!」


 彼の名はアンドリュー・J・ロビンソン。軍曹である。運の悪い男なのだ。


 なんといっても彼の運の悪さは保証付きだ。

 大体反乱軍に入ったのだって、元々は偶然反乱軍の機密文書を拾ってしまったのがきっかけなのだ。反乱軍に入るか、死ぬか、と言われたらしょうがないだろう。

 彼は普通の学生で、戦争なんかとんでもない、将来は収入の安定したサラリーマンを望んでいたのに、今では命の保証されない生活をしている。虚しい。

 とにかく彼の部隊、彼の乗る船、いる場所で、大事故や大攻撃の嵐に巻き込まれることが非常に多い。それなのに重傷、軽傷多々あるが、無事生き残ってしまっている。


「そりゃあお前、運がいいと言うんだよ」


 そう同僚に言われたことがあるが、ロビンソンが思うのにこれは、運命が自分をもっとひどい運命の中に投げ込むために生き延びさせているのではないかと内心思っている。


 大体本当に運がいいのなら、今頃は反乱軍から脱退してアラハニアドリーマーズの一員として戦っているはずなのだ。

 そう、あれは2年前。

 反乱軍に見切りをつけた連中が新団体を作り脱退するという話を聞いた。自分の周りの同僚も一緒に行くといい、もちろん自分もこんな軍には飽き飽きしていたので、一緒に行くことにした。

 ある日、その新団体の中心人物であるジュリアス・ロモンが脱出したと聞き、今をおいて他に抜ける時はないと考え、この時のために用意した逃走経路を通って逃げ出そうとしたが、少し遅かった。

 ロモンがいなくなった時点で基地全体が非常態勢をとり、見事にそれに引っかかってしまったのだ。……おかげでロビンソンは一週間営倉に入れられた。


 ロビンソンはふと時計に目をやった。V大佐から来るように言われていた時間に近づきつつあった。

 ロビンソンはトイレから出てドックの休憩所へと向かった。


「極秘任務だ」


 V大佐はそう言っていた。


「この任務のために貴様は特別に選ばれたのだ」


 別に特別に選ばれたきゃねーや。四六時中V大佐と顔を突き合わせるなんざ、精神衛生上悪い。あの人は死神を思わせんだよなぁ。


 時間きっちりに休憩室にやってきた。

 休憩室にいたのはV大佐だけではなかった。ロビンソンの知っている顔ではない。しかしV大佐が落ち着いてるところを見ると、知り合いなのだろう。

 とにかく敬礼して、自分が来たことをV大佐に報告した。例によって例のごとくV大佐は何も言わない。他の人達はニヤニヤしながらロビンソンの方を見た。


 ロビンソンには彼らはとても軍人には見えなかった。格好からすると商人か何かのように見えるが、その目は。

 とても善良の商人とは言いがたく、そう、まるで宇宙のあぶれ者、海賊のような……。


「R軍曹」


 V大佐が四人の方を顎でしゃくりながら、低い声で呟くように言った。


「知り合いだ。気にするな」

「は、はい」


 気にするなと言われても気になるもので。

 しかしV大佐に言われているので、見かけ上は気にしていないふりをした。


「あー……っと、V大佐」


 彼らの中の一人が言った。黒いヒゲの濃い男だった。


「さっきの続きですが、本当にそいつはあの野郎なんで」

「……そうだ」


 V大佐のセリフに、彼ら四人は少しざわめいた。


「本当にやつだとすると」


 少しハゲかけた別の男が言った。


「この20年間どうやって逃げ延びたんだ? 俺達から隠れおおせるなんざ、奇跡じゃねえか」

「商船協会」

「なるほど、それじゃあ俺たちの手も回らねえな」


 V大佐がいうのに、四人の中で一番若そうな男が頷いた。


 なるほど、知り合いらしいな。ロビンソンは納得した。

 あのV大佐の短い一言一言を完全に理解しているし、しかもあの大佐の横柄と言うか、侮蔑のこもったと言うか、とにかく上から見下ろしているようなことをさらっと聞き流しているところを見ると、やはり知り合いなんだろう。


「それで今、やつはどこにいやがるんで?」


 四人目の片目の潰れた男が言うそのセリフに、大佐はちらっとその男を見ると、次に腕時計を見た。


「パレ・サルガッソーにはついていない。口を開けた狐がいると知らずに、口の中へと向かっているところだ。……無論、狐に狼が食えるとは思えんが」


 ロビンソン以外の男は口の端を皮肉っぽく歪めた。未だにロビンソンには内容が把握できていない。狐ぇ? 狼ぃ?


「R軍曹」


 話題について行っていないロビンソンに気がついたのか、V大佐は呼びかけた。


「は、はい」

「宇宙船がドッグに近づく頃だ。呼びかけてきたら、誘導しろ。いけ」

「はい」


 v大佐に言われ一目散に飛び出していく軍曹を見送った後、おもむろに黒ひげの男が口を開いた。


「ボス。少しお尋ねしてもよろしいですかね」

「……」


 沈黙。しかし彼は、これが彼らのボスのイエスであることを知っている。


「なんであんな小僧を入れたんすか? あっしにゃあとても、あのガキがボスに特別目をかけられるような坊主には見えねーんですがね」

「……別に誰でもよかった」


 V大佐は気だるそうに言った。


「雑用係が欲しかったんでな。ちょうど俺のところへ来たのが奴だった」

「なるほど」


 若いやつが残酷そうな笑みを浮かべて言った。


「使い捨て可能というところだけが取り柄というやつですかい」


 V大佐を除いてクスクスと笑う彼らがいた。


 ……本当に不憫なロビンくん……。




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