ミーティング4
「おい、お二人さん。人に仕事を押し付けておいて、こんな所で何してんだよ」
アレックスが二人の前に立っていた。セラがちょっと申し訳なさそうに肩を竦めたのに対して、マイクは堂々たるものだ。
「おや、終わったのかい。それじゃあ帰ろうか」
「帰ろうかって……。おい、マイク。それが今までこんなところでのんびりしてた人間が、今まで汗水たらして働いてた人間に言う言葉か? ご苦労様とか、大変だったねとか、よく働いた褒美にコーヒーでもおごってやろうかとか言えねーのか?」
「……コーヒーでもおごってやろうか?」
「ありがたい」
ぬけぬけとそう言うと、アレックスはマイクの隣に座った。
「で、何話してたんだよ」
「アラハンの反乱軍のことと、海賊のことを少し」
セラがこういうのにアレックスは思いっきり全身で聴きたいと言ったので、セラは手早く話をした。
話を聞き終えると、一つ口笛を鳴らしてアレックスは言った。
「三つ巴か。いいねぇ。海賊。更に結構。これに俺達が加わるとなると、最高の活劇が始まりそうじゃないか」
「冗談じゃない。平和主義者の僕としては、もうただ、ただ無事にこの仕事が終わるのを祈るだけさ。……なんだよ、その笑いは」
マイクがしおらしくいそういうのを聞いて、くすくすと笑う二人がいた。
「ところで」
セラがふと思いついて言った。
「大丈夫でしょうね?」
「何が?」
「業者の人です。また彼らの仲間なんかじゃないでしょうね?」
「なんで僕が東奔西走したと思ってるんだい」
マイクが言った。
「安心しなよ。昔馴染みの人や商船協会から紹介された人たちだからね。金や武力などに脅かされるような連中じゃない」
セラは頷いた。
商船協会は全銀河系で中立的立場を取る団体のうちの一つである。
この協会には他からの権力が入り込む余地は全くない。動く治外法権と言ってもいい。
この協会は商船を保護し、商売を奨励している。しかし強制や命令は絶対通じない。もし通じたりしたら、この教会の標語である「自由・自立・自尊・繁盛」が泣くというものである。
……ヘルメス号が何故ここに属しているのが分かる気がする。
その協会の紹介なら間違いはない。
「アレックス」
次に来たのはドクだった。少し呆れたような、怒ったような顔をして立っている。
「お、ドク。ドクもコーヒーおごってもらうか?」
「……アレックス。ミイラ取りがミイラになっちゃ何にもならないだろうが。マイク、セラ。キャップが呼んでますよ。日程が遅れたからすぐにも出発したいって」
「あ、そうかい。……珍しいな。キャップが日程を気にするなんて」
そう言うとマイクとセラはテーブルを立ち、ドクと一緒に食堂から出ようとした。
まだコーヒーが来たばかりのアレックスは慌てた。
「おい。おい、待てよ。このコーヒー飲むまで待てったら」
「別にゆっくり飲んでていいぞー」
立ち止まってマイクが言う。
「置いてくだけだから」
コーヒーの早のみはアレックスの得意とするところである。それでも咳き込みながら、慌てて後を追って行った。
*
……そして。
ヒューマニア星系ラドラス宇宙ステーション歴568年5月28日A.P.13時23分。
クルー5人と1台を乗せた商船ヘルメス号は、何とか無事に旅立ったのであった。(平和にとは言わない)




