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第十一話 一名離脱

数日後。


レオンはまた、最初の紙を見ていた。


《パーティー離脱について》


《指示に従わないことが多い》


《単独行動が目立つ》


《一緒にいると》


何度見ても。


誰について書いたのかは分からない。


ただ。


確かに。


自分の字だった。


レオンは紙を折り、ギルドへ向かった。


受付嬢に見せる。


「こういうのって、記録に残る?」


「離脱ですか?」


「ああ」


「正式に手続きしていれば」


「見られる?」


「少し待ってください」


古い書類を探してもらった。


それほど時間はかからなかった。


受付嬢の手が止まる。


「……これですかね」


一枚の紙。


《パーティー離脱申請》


日付。


最初の紙と同じ。


理由。


《指示に従わないことが多い》


《単独行動が目立つ》


《一緒にいると》


レオンは息を止めた。


同じだった。


ほとんど。


そのまま。


「これ」


受付嬢も少し困った顔をしていた。


「変ですね」


申請者欄。


空白。


対象者欄。


空白。


パーティー名。


空白。


「受理されてる?」


「されてます」


一番下。


受付済みの印。


その横に。


《一名離脱》


レオンはしばらく。


そこだけを見た。


「誰が?」


受付嬢は首を振った。


「分かりません」


「どこから?」


「それも」


「名前もない」


「はい」


「パーティー名も」


「はい」


レオンはもう一度。


《一名離脱》


を見る。


一名。


一人。


そういう意味だと思う。


普通は。


受付嬢が書類をめくった。


「構成員数も空白ですね」


レオンが顔を上げた。


「空白?」


「はい」


その登録には。


人数がなかった。


代表者も。


構成員も。


パーティー名も。


ない。


それでも。


一名。


離脱。


「人数が書いてないのに」


レオンが言った。


「一名、減らせる?」


受付嬢は答えなかった。


少しして。


「いえ、普通は」


とだけ言った。


その先は続かなかった。


レオンは紙を返した。


ギルドを出る。


外は晴れていた。


人通り。


荷車。


冒険者。


いつもの王都。


レオンは歩きながら考えた。


一名。


一人。


同じ。


だと思う。


でも。


本当に。


そうか。


宿へ戻る。


机。


紙を並べる。


《ガルド》


《エルネ》


《ミリア》


《レオン》


そして。


《俺は一人ではなかった》


レオンは四つの名前を見る。


以前は。


人の名前だった。


たぶん。


四人。


そう考えていた。


そのうち。


ガルドがなくなった。


エルネがなくなった。


ミリアがなくなった。


最後に。


自分だけ。


そう思っていた。


四。


三。


二。


一。


レオンは新しい紙を出した。


《四人》


《三人》


《二人》


《一人》


縦に書く。


しばらく。


見た。


きれいに。


減っている。


その下に。


何となく。


《 》


空白を置いた。


レオンは手を止めた。


妙に。


続きのように見えた。


四。


三。


二。


一。


空白。


嫌な感じがした。


紙を折る。


机の端へ置いた。


その夜。


なかなか眠れなかった。


《一名離脱》


何度も。


頭に浮かぶ。


一名。


一人。


では。


最初に離脱したのは。


誰だった。


ガルド。


違う気がする。


エルネ。


違う。


ミリア。


違う。


では。


あの最初の日。


自分は。


何を追放した。


レオンは起き上がった。


例の紙を出す。


《パーティー離脱について》


《一緒にいると》


その下。


空白。


それから。


別の紙。


《俺は一人ではなかった》


一人。


また。


引っかかった。


一人。


何を数えている。


自分を。


人間を。


仲間を。


何を。


レオンは声に出した。


「一人」


意味は分かる。


一。


人。


それだけ。


でも。


《俺は一人ではなかった》


この文になると。


少し。


違う。


何が違う。


分からない。


レオンは翌日。


いつもの酒場へ行った。


二階。


個室。


四つの椅子。


一つに座る。


しばらくして。


主人が料理を運んできた。


皿を置きながら。


何気なく椅子を見る。


「……」


「どうした」


「いや」


主人はもう一度。


椅子を見た。


「四つですよね」


レオンは答えなかった。


主人が笑った。


「何言ってるんでしょうね」


そのまま下りていった。


レオンは椅子を見た。


四つ。


一。


二。


三。


四。


間違いない。


四つある。


でも。


なぜ。


そこまでを。


四つと数える。


当たり前のことだ。


椅子が四つあるから。


それだけ。


レオンは目を閉じた。


昔。


誰かが。


「これで全部」


と言った。


そんな気がした。


全部。


その言葉が。


急に。


嫌だった。


全部とは。


どこまで。


何を含める。


何を。


含めない。


レオンは紙を出した。


《俺は一人ではなかった》


長く見る。


昨日まで。


この文だけは。


確かだった。


でも。


今は。


「一人」


そこだけが。


少し。


分からない。


レオンは紙を裏返した。


何もない。


また表にする。


《俺は一人ではなかった》


意味は。


まだある。


胸も痛む。


だから。


大事な文だと分かる。


ただ。


何を言っているのか。


昨日より。


少し。


遠かった。


レオンはその紙を捨てなかった。

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