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罪過を綴る  作者: asahi
中学生編。

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17/20

短命な花が枯れる日に。

「ぴぴぴ。」


アラームが鳴る。


時計は5時30分を指している。

うん。悪くない時間だ。

僕は、身支度を整えて家を出た。




小春の家


「ピンポーン。」

家のインターホンを鳴らす。

「ガチャ!」

「はい。行くわよ。」

小春は、水色に花模様が描かれた浴衣を青色の帯で締めた格好をしていた。

「ねぇ、小春?」

「ん?何?」

「綺麗だよ。」

「うん。ありがとう。本当は夕日が着る予定だったけどね。」

「ん?そうなんだ。」

僕は昨日、学校帰りに掲示板を見て不気味な笑みを浮かべていた理由が分かった。

メイド服を着て良かったと心の底から安心した。

「あ、小春。スマホ買って貰ったんだ。」

「それなら、連絡先ちょうだい。」

「いや、初期設定すらやってなくて。」

「じゃあ、やってあげる。まずは、暗証番号からね。0416でいい?」

「うん。小春の誕生日ね。分かった。」

「何で覚えてるのよ。気持ち悪い。」

「え、酷い。」

「後は、LINEだけ入れればいいか。はい。これ私の連絡先ね。」

そう言って返された僕のスマホには、小春の連絡先が追加されていた。

「モザイクかかっているけど、このアイコンって。」

「う〜ん。知らない。メイド服を着た可愛い男の子なんて知らないわ。」

「…バカ。」

「じゃあ、行くわよ。神社の夏祭りに!」

「うん、行こっか。」

今度の僕たちは、自然に手を繋いでお祭りまで向かった。





神社の鳥居前。


僕たちは、神社のお祭りにきた。小規模なものだけど、活気あふれる騒がしい場所だ。

「結構人多いわね。」

「うん。そうだね、手は離さなくていいの?同級生もいると思うし。」

「いいのよ。もう、バレてるし。」

「そうだね、それなら、はぐれないためにも手繋いでいようか。」

「何がそうだね。ですか?私がどれほど恥ずかしい思いをしたと思っているのかしら。」

「…」

「今、手を繋いでいること、忘れない方がいいわよ。」

「肝に銘じておきます。」

そうだった。手を繋いでいる、それすなわち、失言が許されないということだった。

「あ、私、射的やりたい。ちゃんと着いてきてね。」

そう言って、顔をくしゃっとして笑う小春の顔が可愛く映った。

「うん。分かった。」

僕も微笑んだが、小春の頭は射的でいっぱいであった。

「パンッ!」

「ふん。これくらい、造作もないわ。」

小春はそう言って、5発中4発を命中させて大きくてモフモフした熊のぬいぐるみを落としてみせた。

「う、うまい。小春って化け物?」

「カチャ、」

「弾は後一発残っているけど、何か言った?」

銃口は僕の眉間に向けられている。

「は、はい。何でもないです。」

「ふん。じゃあ、後一発は夕日がやりなさい。」

「う、うん。やったことないけど、やってみるね。」

僕は、それらしい姿勢をとってみる。

「ちょっと、全然違うわよ。」

「え?!言われても分かんないよ。」

小春が僕の背後に回る。

「まずは、脇締めて。体に銃を密着させて。最後に優しく引き金を…」

「うん。分かった。」

狙いを定めて…

「パンッ!」

「あ、当たったけど惜しかったわね。当たる位置とかも考えないとね。」

「…」

「女々しいわね。しょうがないから、熊のぬいぐるみはあげるわよ。」

誇らしげに口にした。

「じゃあ、次よ次!」

「グゥー」

僕のお腹の音が鳴った。

「お腹空いてるの?」

「うん、朝から何も…。」

「こーら。ちゃんと、食べろって言ってるでしょ?」

「うん。ごめん。」

「じゃあ、たくさん食べるわよ。たこ焼き、焼きそば、フランクフルト何にする?」

「う〜ん。半分こにして食べない?」

「うん!そうする!」

「じゃあ、夕日あっち並んで。私こっち並ぶから。」

「うん、」

…今朝あんなことがあったなんて、小春が隣で無邪気に笑っているから、忘れてしまえた。

…そう。僕には小春が必要なんだ。

よし、焼きそば買えたぞ。

あれ、小春は?

「小春!」

声を出しても返事はない。

そっか、電話すればいいのか。

「小春!どこいるの!」

「小春!どこいるの!」

自分の声が後ろから聞こえた。

そこで通話が途切れた。

「さっきからずっと後ろにいるけど。無視してたのは夕日の方だし。って、()()()()()()()()()()

「小春!ごめん。僕は小春がいないと。小春がいないと。」

声にならない声で話しかけてしまった気がする。

「…ちょっと、移動するわよ。」


そうして僕たちは神社の石段に座った。

僕たちは黙々とそれぞれ買ったものを食べていた。

「ねぇ、夕日。また、何かあったの?」

「…うん。両親が離婚したんだ。

だから、今まで、何のためにお姉ちゃんのふりなんかしてたのかな…。

それで、これからはお母さんが望む僕でいないといけない…。僕って何のために生きてるのかな。」

「…ねぇ、夕日。」

「…なに、小春。」

「夕日はさ。どうしたいの?」

「…小春と一緒にいたい。小春のためなら。なんだってできるよ。」

「ヒューバンッ!」

「夕日、花火綺麗だね。」

「うん。そうだね。」

「夕日は、将来何になりたいの。」

「…小春の旦那さん。小春の側にいたい。」

「…そう。じゃあ、もっと勉強しないと別の高校になるよ。」

「もっと、勉強頑張る。」

「私もさ、本気で夕日のこと好きだよ。」

「僕だって、本気で小春のこと好きだよ。」

「ふふ。どっちの方が相手が好きかね。」

「僕だよ。僕が一番小春のことを大切にする。」

「私だって、夕日のことを一番大切にするよ。」

「ねぇ、夕日。」

「なに?小春。」

「先に離れたほうが負けね。」

小春との距離が更に近くなる。

「したことあるの?」

「ううん。初めてだよ。」

「僕だって、負けないから。」

「私だって、負けないよ。」

短命な花が激しい音を立てて枯れていくように。

僕たちは、互いを、求め合った。

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