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罪過を綴る  作者: asahi
中学生編。

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16/20

迷子。

「二人とも朝だよ〜。」


遠くから聞こえた小春のお父さんの声で僕は、目を覚ました。


「ううん…」


「おはよう。小春。」


小春からの返事はない。


でも、これは多分…


「おはよう。小春。」


僕は、そう耳元で囁いた。


「ワァ!」


「ちょっと、バカ!」


小春が跳ね起きる。


「やっぱり、起きてたじゃん。」


「も〜。朝から変なことしないでよ!」


「小春もこういうの好きなんだね。」


もう一度同じことをする。


小春は反応しなかった。


「それは、お互い様でしょ?」


「ヒャィ!」


今度は、僕が耳元で囁かれた。


「ふふ。可愛いね。」


「やったなぁ〜。」


「そっちこそ〜。」


僕たちは、耳元で囁かれまいと激しい攻防を繰り広げた。


戦況が膠着状態になったとき、小春が柔道技を使って僕を押し倒した。


「ちょっと!それは反則でしょ?」


「何が〜?正しい技だけど〜?」


「あ、小春のお父さんおはようございます。」


「え?お父さん!」


よし、その隙に。


僕と小春の体を入れ替える。


「うわ、やられた。」


「そうだよ。お父さんなんかいないよ。」


「僕の作戦勝ちだね。」


「じゃあ、僕の好き勝手に。」


「ちょっと、待って。」


「待たないよ〜だ!」


「…お父さん、いるから。」


「またまたー。その手には乗らないよ。」


「…朝からお盛んだね。二人とも。」







「いただきます。」


僕たちは、手を合わせて朝ごはんを食べ始めた。


小春の両親がボソボソと小声で会話している。


ボソボソと会話をしていると思うと、今度は耳元で会話をし始めた。



…まさか、今朝の僕たちの真似をしているのか!


「ちょっと、お母さん、お父さん!」


小春が席を立って、両親を制止しに行く。


小春も気づいたようだ。


「なに〜?小春。」


小春のお母さんが楽しそうに返事をした。


「2人ともこうやって、楽しんだんでしょ?」


「私たちも2人の気持ちを理解しようと思ってね。」


「今の子ってこういうのが好きなのね。なんか、ゾクゾクするわ。」


「ねぇ、やめてよ!ほら、春輝からも、なんか言ってよ。」


小春が慌てて春輝くんに助けを求める。


「ふん。姉ちゃんたちもこういう事したんでしょ。なら、別にいいでしょ。」


春輝くんが呆れながら言い返した。


もしかしたら、春輝くんだけ仲間外れだったのが少し嫌だったのかもしれない。


なんて考えたが、それは言っちゃいけないと思った。


「おお〜。確かに、この感覚を新鮮だな。」


小春のお父さんが、からかい始める。


「ちょっと、お父さんも!」


「夕日は、だんまりなわけ?」


僕に会話が振られた。


「…恥ずかしいので、やめて欲しいです。」


「おお〜。すまんすまん。」


「ならこれは、今度お母さんと楽しむとするよ。」


「やだねぇ〜。お父さんったら。子供が見ている所で。」


小春の両親は、ベタベタと身を寄せ合っている。


「もう!絶対にやらないんだから!」


終始、僕たちは、小春の両親のペースで、朝ごはんを食べるしかなかった。








この度は泊めて頂き、誠にありがとうございました。


「夕日くんってば、本当礼儀正しいのね。」


「そうだな。小春も見習って欲しいよ。」


「はぁ〜?学校では、私の方がちゃんとしているんですけど?」


小春を無視して続けた。


「あ〜。そうだ。夕方ごろにまた来るのか?」


「はい。もう一回お邪魔させて頂きます。」


「何をするかは知らないのですが。」


「ふふん〜。楽しみにしておいてね。あ、財布だけ持ってきてね。」


「え?カツアゲ?」


「違うわよ!夕日には、どう映ってるわけ?」


「…」


「なんか言いなさいよ!」


「ごめんごめん。大切な人だよ。」


「キャ!夕日ったら〜。」


「ほら、そこまで!夕日くんのご両親だって心配するでしょ。」


小春のお母さんが会話を切り上げた。


「あ〜。最後にちょっと来て。」


「はい。」


小春のお母さんが小さく耳打ちする。


「制服のポッケに写真が入っているから。」


「!」


「じゃあ、またね。夕日くん。」


「はい。ありがとうございました。あ!あと、春輝くんにもよろしくお願いします。」


春輝くんはお見送りに来なかった。


僕は、ご両親に見送られ、家に帰った。





そろそろいいかな。


僕は、ポッケから写真を取り出す。


…ちょっと幼いかな。


…やっぱり可愛いな僕の小春は。








「ガチャ。」


玄関の鍵を開けて家に入った。


もちろん、誰もいないな。


「夕日!いままでどこにいたの!」


僕を呼んだのはママだった。


今、夕日って…


違う!そんなことより、昨日に限って家にいたのか。


「ごめん。昨日は、クラスの友達とカラオケに行ったんだ。あ、もちろん、親もいたよ!」


「そう…でも、許可もなしに遊びに行ったらダメでしょ?」


「うん、ごめんなさい。次から気をつけるよ。」


「…もうお姉ちゃんのふりなんかしなくていいのよ。」


「…え?どうして…。」


「離婚することになったの。」


「だから、昔みたいに、男らしく明るく笑う夕日でいいのよ。」


…僕ってそんな性格だっけ。


それよりも離婚って。


じゃあ、今まで何のために美月を演じていたの。


それに手を繋いでいた時だって…


朝ごはんを一緒に食べていた時だって…


何の意味が……


僕は膝から崩れ落ちることしか出来なかった。


「もう、大丈夫よ。大丈夫。」


心配してくれたママが背中をさすってくれた。


でも、それが気持ち悪くて涙を止めることなんて出来なかった。


「あ、そうそう。これを、夕日に。」


ママが僕にくれたのはスマホだった。


「今まで、不便な思いさせてごめんなさいね。」


「あの人が待たせたくない。って聞かなくて。」


「…」


「…うん、いいよ。ありがとう!」


「じゃあ、仕事だからもういくね。」


「そうだね!行ってらっしゃいお母さん!」


「ママだとちょっと女々しいもんね。分かった、お母さん行ってくるね。」


そう言って、お母さんは仕事に向かった。


そうか。これからは、お母さんが望む夕日になればいいんだ。


…夕日。


僕ってなんだろう。

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