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罪過を綴る  作者: asahi
中学生編。

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14/20

視野狭窄

僕は今、





メイド服を着ている。



小春は、無言でクローゼットを漁り、何で持っているか分からないメイド服を取り出した。


これも、小春の母親の趣味で買ったのを与えられたのかもしれない。


まだ、さっきの服の方がマシだった。


メイド服を最初に出さなかったのは、小春にもまだ、僕に対する慈悲が残っていたからだろう。


でも僕は、それに気づくことができなかった。


無言で、メイド服を僕の前に置き、有無を言わさない表情で僕を睨む。


それに抗う言葉も手段も術もない。


僕は、シャツを脱いでメイド服を着るしかなかった。


考えているだけで恥ずかしい。


胸がドキドキする……


いや!


そんな事ない!


今は、多様性の時代だ!


男の子がスカートを履いてもいいし、女の子がズボン履いていいんだ!


そうそう!


だから、メイド服を着ることも…


着ることも…


「ゆ〜う〜ひ〜ちゃ〜ん?」


「は、はい!」


「ズ ボ ン 脱 い で?」


「…」


「ゃ、」


「やめてください…」


「べ ル ト 外 し て?」


「…」


小春が、僕に近づいて、服の襟を掴んだ。


「ふわっ。」


体が宙を舞って、僕は床に押し付けられた。


「昔は、柔道を習っていたから、可愛い女の子くらい簡単に、優しく制圧できるんだ〜。」


「片手は空けといてあげる。」


「あ と は 分 か る よ ね?」


僕に残された選択肢は一つだけだった。










足がスースーする。


この、メイド服はスカートの丈が一般的なものより、だいぶ短い。


少しでも油断すると、下着が見えてしまいそうだ。


…体が暑い。


エアコンは、小春が部屋に入る時につけたはずだ。


僕の心臓は、ドクン、ドクンと激しい運動後のように脈打った。


「ほら、立って?」


「…え?」


「だって、最後にリボンを腰に巻かないと。」


僕にはもう、抵抗する力も意思もない。


スカートが「ふわっ」と捲れないように、慎重に体を起こした。


「よし、リボンはこれでいいわね。」


「後は、カチューシャを着けて…」


「終わり?ねぇ、もう脱いでいいですか?」


小春の耳に、僕の声が届くことはなかった。


「う〜ん。何か足りないわね。」


「あ!え〜と。確かここに…」


「はい、これ着けて!」


「渡されたのは、ただの丸いメガネだった。」


僕は、言われるがままに、メガネをつける。


「うん!完成だね。」


「なんか、ドジっ子メイド?って感じ!」


「どう思う?夕日?」


ニヤニヤと笑う口を手で隠しながら、僕に聞いた。


「笑うくらい変なら、着させなきゃいいのに!」


「ん〜?違うよ〜?」


「あまりにも、似合ってたからさ〜。」


「ほら、鏡見て?」


「ゃ、やだ!」


「見たくない!」


「ふ〜ん、そっか、そっか〜。」


「春輝〜。ちょっと、来て〜?」


「来ちゃダメ!」


これ以上の醜態を晒したくない!その一心で、声をあげるも、素早く小春に手で口を押さえられた。


「なに?お姉ちゃん?」


「…え?」


「夕日さん?」


「夕日さん!?」


「うん。春輝は、どう思う?」


「…似合っているとは、思いますよ?」


「でしょ?性別は、置いておいて。笑」


「ほら!似合っているって。」


「良かったね〜。夕日。」


「う、うるさい!」


「似合ってても、もう、二度と着るもんか!」


「も〜。またまた〜。本当は、着たいんだよね?」


「夕日。」


「ふん!」


「ご主人様に口答えかな〜?」


「う、そんなこと滅相もございません。」


呼び方は、既に元に戻っていた。


でも、油断できない。


今日は、小春を怒らせないようにしないと。


「ガチャ。」玄関を開ける音がした。










僕は今、小春の家族と一緒に夜ご飯を食べている。


メイド服からは、まだ着替えていない。


「まさか、小春の彼氏が来ているとはな。」


小春のお父さんが、嬉しそうに言った。


「そうねぇ〜、しかも、メイド服を着ているなんて。」


小春のお母さんが、少しニヤつきながら言った。


彼女の両親にこんな、姿で会う事になるなんて…


「あ、ちょっと待ってね。」


スマホをヒョイヒョイと操作して、僕に写真を見せた。


画面には、小春のメイド姿が映し出されていた。


「後で、写真あげるね。」


そう、小さく耳打ちした。


「ん、お母さんどうしたの?」


「別に、なんでもないわよ。小春。」


さっきから、酷く意地悪されてきた。


だから、小春のメイド姿を見て、少しだけ溜飲が下がった気がした。


「こんなのが、お姉ちゃんの彼氏だなんて。」


「本当、どうかしているよ。」


春輝くんが会話を切り出した。


「そんなことないわよ、春輝。」


「大事なのは、中身なんだから。」


「もちろん、私の彼氏は見た目もいいけどね。」


「こんな、汚い座敷童みたいなやつ。」


「…あはは、よく言われます。」


「けっ、年下にも敬語なんて、使っちゃって。」


小春の空気が変わった。


「…春輝、ちょっと待ってなさい。」


小春は少し、怒った雰囲気を出して席を立った。


「こら小春。まだ、ご飯中だよ?」


小春は、静止を無視して部屋から出ていった。


「ごめんなさいねぇ〜。うちの子が。」


「そうだぞ。春輝。他人の容姿なんて、いちいち弄るな。」


「みんな違って、みんないいんだ!」


「こちらこそ、すみません。でも、家庭の事情で髪を伸ばさないといけないんです。」


そう、話しているうちに、小春が戻ってきた。


手に持っていたのは、短めのヘアピンだった。


「はい、夕日。こっち、向いて。」


「うん。」


次に小春がすることなんて、容易にわかった。


言われるがままに、小春に身を預ける。


「はい。できた。」


「カッコいいでしょ、私の彼氏。」


小春は、僕の前髪を片目だけ隠れるようにした。


「目はキリッとしているし、それに、瞳が宝石みたいに綺麗なんだよ。」


「お〜。そうか、そうか。」


「でも、それならなんで、片目を隠すんだ?」


「ふふん〜。」


「私が、独占するから!見せてあげない!」


そう言って、小春は、僕に体を寄せた。


不覚にも僕は、「ビク!」と体を反応させてしまった。


春輝くんは、何かいけないものを見ているような顔をした。


「うちの娘は、情熱的だね〜。」


「本当にそうだな。母さんに似たんじゃないか?」


「やだもう。お父さんに似たのよ。」


小春の両親は、本当に仲が良い。そう思った。





家族ってこういうものなのかな。


普通に、


皆んなでご飯を食べて、


話し合って、


笑って、


…羨ましいな、


気がつくと、全ての料理を食べ終わっていた。


「ご馳走さまでした。」


「美味しかった〜?私も手伝ったんだよ?」


「うん。美味しかったよ。小春。」


「また、食べたいよ。」


「でしょ!また、作ってあげる。」


「こらこら、夕日くんだって、家族がいるんだから。」


「少しは、夕日くんのご家族だって、大切にしなさい。」


「ふん!」


小春は、そう言ってお父さんの言葉を一蹴した。


「あ!今日は、夜ご飯まで、食べさせて頂きありがとうございました。」


「これ以上は迷惑になるので、お暇させて頂きます。」


「…」


「…」


ん?何か不味いことを言ってしまったか?


「…どうかしましたか?」




「制服、洗濯してしまったわよ?」


そう、小春のお母さんは僕に告げた。







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