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罪過を綴る  作者: asahi
中学生編。

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13/20

日常

小春の元気がない。


小春は、中学校に入学してから、無遅刻無欠席で皆勤賞を狙っていた。


それを、あんなくだらないことで、逃してしまったから当然だろう。


「小春?」


「…」


「…」


「小春さん?」


「なによ。」


「一緒に帰りませんか?」


「…」


「今日のことは誠に申し訳ございませんでした。」


「…」


「ふん、帰るわよ。」


「はい。分かりました。」


「…」


「スゥー」


僕はさりげなく手を繋ごうとした。


「痛ぃ!」


「手繋ぎたいんでしょ???」


「いいわよ???繋いであげる。」


小春の握力で、手をギチギチに圧迫される。


「あのー。本気で痛いんですけど…」


僕は苦悶の表情を浮かべながら小春に言った。


「え〜?夕日くんが手を繋ぎたいんですよね?」


不気味なほど明るく、悪魔的な笑顔で言い返した。


「…」


「はい。そうです。」


「手を繋げて嬉しい限りです。」


「ほら!帰るわよ。」


小春は握力を更に強めて、僕たちは教室を出た。


痛がる僕と、不気味に笑っている小春。


それを面白がって、


すれ違うクラスメイトからは、クスクスと笑う声が聞こえた。


今まで、甘えていたから忘れていた。


小春は怒ると怖い女だった。






暫く歩いていると急に小春が立ち止まった。


「…小春さん?」


小春は掲示板を見て、不敵に笑った。


絶対に何かヤバいことを企んでいる。


「ねぇ、夕日くん?」


「明日、土曜日だけど、なんか予定入っている?」


「…特に、予定はないけど。」


「じゃあ、明日、私の家きてね。」


「…」


「返事は?」


「…」


「はいかYesか喜んでだよ?」


「あ!そろそろ、お別れだね。」


「じゃあ、小春さん。また、明日ね。」


「あ、ぐっ……!」


小春に万力の握力で締め付けられた。


今回のは、本当にヤバい。


「やだなぁ〜、夕日くん。」


「今日も、家に来るに決まってるでしょ?」


「…」


「返事は?分かるよね?」


「…」


「喜んで…」


「うん!よく出来ました!」


小春はそう言って、僕を引きずりながら、家まで連れていった。





家、着いたわよ。


鍵を使って、ドアを開けるためにようやく手を放してくれた。


手は紫色に変色していた。


本当にもう怒らせないようにしよう。


そう、心に誓った。


「ガチャ」


「ただいま〜!」


「…お邪魔します。」


ドアから顔だけ出してこっちを、覗いている男の子がいた。


「お姉ちゃん。お帰り。」


「うん。ただいま、春輝はるき


「…」


「ねぇ、お姉ちゃんの彼氏って。」


「うん。この人が彼氏の夕日。」


「....初めまして、春輝くん。」


「夕日です…」


「…」


「...髪長くて、女の子かと思った。」


「ん?あ~そうそう。」


「私も初めて見た時はそう思った。」


「でも、こう見えても男らしい一面があったりするんだよ。」


「…」


「そうなんだ...」


春輝くんが不満そうに返事をした。


「…」


「...もしかしてさ。」


「何ですか?」


「お姉ちゃんともっと遊びたかったの?」


「違うよ!そんなんじゃないし!」


顔を赤くしながら言い返した言葉に説得力はなかった。


僕は、やっぱり兄弟なんだと改めて認識した。


小春の方を見ると、少しニヤついている。


「ふ~ん。」


「じゃあ、お姉ちゃんたちは部屋で遊んでいるから。」


「別に混ざってもいいんだよ、春輝?」


「いいの!宿題があるから!」


そう言って、「バタン」と強くドアを閉めた。


「小春って弟いたんだね。」


「...」


「ねぇ、小春?」


「...」


「小春さんって、弟がいたんだね。」


「うん。そうだよ。3歳下の弟。」


「本当に小春さんに似てそっくりだね。」


「え?どこが、春輝と似ているのよ。」


「ん?照れると顔が赤くなる所とか。」


周りの温度急に下がったような気がした。


「...」


「ふ~ん。そっか。そっか。」


「照れると顔が赤くなる所...ね。」


何かまずい事を言ってしまった。


「ごめん...小春さん。」


「ん?いいのよ?謝らなくて。」


「思ったことを、はっきり言ってくれて、とっても嬉しいよ。」


「...」


「じゃあ、こっちが私の部屋だから。」


僕たちは、小春の部屋まで移動した。


小春の部屋には、アニメや漫画のグッズ。


その他には、難しそうな本や勉強道具が置かれていた。


「あの~。小春さん。」


「僕たちは、何して遊ぶのでしょうか。」


「...」


敬語で話しかけても返事はない。


「夕日ちゃん。」


「今日は、お着換えして遊ぼうと思うの。」


「…夕日ちゃん?」


「そう。夕日ちゃん。」


そう言って、女物の服を何着か取り出した。


「どっちの服を着たいか選ばせてあげる。」


小春が出したのは、真っ白のワンピース。


そして、ひらひらとしたピンクのオフショルダーと真っ黒のスカートの組み合わせだった。


「…」


「お母さんがね。変な服ばっか買ってくるから困ってたの。」


「明らかに中2女子が着るような服じゃないのよね〜。」


そう思ってるなら、それを中2男子に着せるのは、おかしいと考えるのが普通である。


正直に言って、どっちも着たくない。


普通に恥ずかしいし、それに、女装なんかしたことがない。


両親もそこまでは、強制しなかったのに。


「…」


「あ!髪も結わないとね〜。」


「じゃあ、結んでいる間が制限時間ね。」


小春はブラシを取り出し、そそくさと髪をまとめていく。


マズイ、このままじゃ本当に女装することになる。




あ!そうだ。以前、小春に借りた漫画の回答を参考にしよう。


オタクの小春を笑わせることができたら、なんとか逃れることができるかもしれない。


そう考えているうちに、髪はポニーテールにされていた。


「はい。夕日ちゃんできたわよ。」


「じゃあ、どっちにする?」


「…」


「…」


「…夕日ちゃん?」


小春が首元に手を移した。


いつもの、暖かい手とは違う。


雪のように冷たい、温度のない手だった。


変に冷たい汗が背中を撫でる。


これに、賭けるしかない!


「3、2、1、」


「答えは沈黙。」


「正解なんて、ない!」


そう言って恐る恐る小春の方へ振り返った。


見上げた小春の顔は…







何もかもを燃やし尽くす、絶対零度のような目で、僕を見下ろしていた。

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