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王弟の結婚  作者: アーク
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8/11

子爵令嬢の真実

マルガレーテ・アスタリアはアスタリア子爵の第2子であり、教会の定めた聖女である。


ジェフリーにとっては


「母を亡くしたばかりの父を誑かした女狐」


の娘が聖女である、と言う事は受け入れ難い事実だった。


真実は、幼いジェフリーにはまだ母親の温もりが必要であろう、と案じたアスタリア子爵による采配であるが


「せめて、夫人の喪が明けるまで再婚を待つ事は出来なかったのか」


と顰蹙を買い、やはり第二夫人は元々、アスタリア子爵の愛人だったのではないか、と囁かれ、ジェフリーは恐らくそれが真実なのだろう、と確信している。


故に、異母妹に当たるマルガレーテが聖女と言う身分を振り翳し、セドリック第3王子に擦り寄っている...、と言う噂を流した。


氷姫、マルシィ侯爵令嬢の言葉選びが絶望的、壊滅的である事も手伝って、


「悪役令嬢と可哀想な聖女」


と言う構図は直ぐに完成した。


派閥争いの縮図である学園に於いて、それはとびきりの興味を唆る醜聞(スキャンダル)として、皆飛び付いた。


「胎は異なるとはいえ、実の妹の未来を閉ざす事はそんなにも愉快な事なのかしら?」


―――突然現れた淡いブルーの髪色の令嬢以外は、誰ひとりとしてジェフリーの関与に勘付く者はいなかった。


「お初にお目にかかりますわ。わたくし、シルベスター伯爵家の末の娘、イザベル・シルベスターでございます」


惚れ惚れする程のカーテシーにジェフリーは息を呑んだ。


シルベスター伯爵家には現在、妹と同年代の子女は男子しかいない筈だが、その事実を忘れてしまう程だった。


「さて、カティア若子爵閣下。早速ですが、学園内で起きている不穏な動きについての答え合わせをさせて頂きますわね」


イザベルの傍らにはセドリック第3王子の婚約者であるマルシィ侯爵令嬢と、憎き妹の姿があった。


「学園内では現在、悪役令嬢クラウディア・マルシィ侯爵令嬢による聖女マルガレーテ・アスタリア子爵令嬢に対する陰湿な嫌がらせで話題が持ち切りですわ。


―――ですが、前提としておかしな事がありますの」


侯爵令嬢が王子妃として教育を受ける為に登城する事がある様に、妹は聖女として教会で慈善事業や聖女としての立ち居振る舞いを学びに学園を空ける事がある。


妹の教本が侯爵令嬢によって破損した、私物を盗まれた、茶会に招かれない―――


噂を耳にした者達は


「学園内に於いて、侯爵令嬢と子爵令嬢が揃うのは稀であるのに、本当にその様な事実があるのだろうか?」


と頭の片隅に置きながらも事実だとしたら面白い、と言う幼さ故の悪意なき無邪気さで噂に惑わされていると言う由々しき事態だ。


「はじめに誰から噂を聞いたのか?と辿った先にいらしたのが、カティア若子爵閣下ですわ」


おイタは此処までにしておいた方が宜しくてよ、とイザベルはニッコリと微笑んだ。


「あまりに騒動が大きくなりますと、マルシィ侯爵家とアスタリア嬢の後見人である教会、―――そして王家から、カティア子爵家に抗議が送られる事となりますわ」


「何故、王家と教会が出て来るのです。マルシィ侯爵家とアスタリア子爵家の問題ではないですか」


「既にマルシィ侯爵令嬢とアスタリア子爵令嬢の両名から真実の儀に於ける宣誓を頂いておりますわ。


両名とも噂と関係は無い事は証明されておりますのよ」


真実の儀で偽りを述べれば、神罰を受ける事は存じ上げていらっしゃるでしょう?とイザベルは告げた。


「此処で若子爵閣下異議を唱えれば、教会の怒りを買う事は自明の理ですし、


―――此度の騒動についての解決を求めたのはセドリック第3王子殿下ですわ。


教会と王家が手を出すのは、当然の事ではありませんか?」


マルシィ侯爵令嬢と妹が内々に処理してくれると約束している現状ならば、これ以上醜態を晒さない事が身を守る術である、と告げられたジェフリーは、がっくりと肩を落とすのだった。

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