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王弟の結婚  作者: アーク
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恋路の応援

リシャール王の嫡男、エドワード王太子の視線の先には騎士団の修練場があった。


その中で一際目立つのは、ユスターシェ湾岸のクラーケン討伐で武勲を挙げたメリル男爵令嬢である。


エドワード王太子が男装の麗人として名高い赤毛の令嬢に心を寄せている事は誰もが知る事実であるが、男爵令嬢と言う身分故に婚約者として召し上がる事に難色を示す者も多い。


正妃ではなく、側室、妾ならば、と言う者もいるがエドワード王太子は複数の女性に愛を囁く事が出来る性質ではない。


今迄、王太子の恋路を応援しているのは母である王妃アンネリーゼと王弟のジョンだけだった。


「王家の婚約者の身分は伯爵位以上の令嬢である事、ならば、考えがありますわ」


イザベルの母、ジェーンの実家であるシルベスター伯爵家の養子となればかの令嬢が男爵令嬢である事を理由に阻む理由が無くなる、とイザベルは言った。


「クラーケン討伐に於いて、伯爵家はいたく感謝致しておりますの。メリル男爵令嬢さえ宜しければ、伯爵家の養子としてお迎えしても問題はありませんわ」


ユスターシェ湾岸に出没した、近年稀に見る程の超大型のクラーケンにより物流が途絶え伯爵領の財政は圧迫されていた。


うら若き女騎士、ハンナ・メリル男爵令嬢が討伐に立ち上がらなければ、甚大な被害が出ていた事は間違いない。


「しかし、メリル男爵令嬢がその提案を呑むだろうか」


「メリル男爵令嬢の気質ならば、心の内はどうあれ、身分の違いを理由に身を引いてしまいますわ。時期国王を生涯独身にする訳にはまいりません」


王族である以上表向き妻を娶る事はあるかもしれないが、実情が白い結婚となる事は火を見るよりも明白だ。


リシャール王はそれならば、とジョンを次期国王として指名するだろうが、ジョンには国王としての統治能力は無い。


イザベルの血筋を考えれば、子孫を臨めるかどうかも分からない現状ではメリル男爵令嬢をシルベスター伯爵家の養子として召し上げるのが最前だろう。


「可愛い甥御の恋路は、是非とも応援させて抱きたいですわね」


イザベルの目には、既にエドワード王太子の運命が見えているらしい。


「3年後には、皆のメリル男爵令嬢を見る目も変わるでしょう」


楽しみだわ、とイザベルは微笑んだ。

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