同腹の皇子
帝国の第12皇子、マクシミリアンは28歳と言う若さで帝国南西の辺境の守護を任されている。
エリツァ辺境伯として領地経営を行うマクシミリアンの元に同腹の姉が姿を見せたのは、実に数年ぶりの話となる。
姉のイザベルは、見た目こそ幼子ではあるが、
「何時までも、何も知らぬ無垢な赤子でいて欲しい」
と言う両親の想いを愚かしいと切り捨て、神竜の血由来の夢を渡る力を使い優秀な教師の元へと通い、皇女として相応しい教養を身に付けた。
「他の国の情勢も、把握しなくては」
と、他国の王族の夢にも干渉し、常に最新の情報を手にいれてはマクシミリアンの元に現れ辺境の内政を補佐してくれている。
神竜の血が色濃く現れた姉は、そうした生き方の中で運命の相手を見付けた様だ。
神竜は、運命を一目見て理解すると言う伝承がある。
「時期が来たら、王国の王弟に嫁ぐ事になるわ」
と、幼い頃から言っていた。
どうやら今がその時の様だ。
イザベルが王弟を認識したのはマクシミリアンが幼年学校に進学する頃だった。
他国との交流を兼ねて王国の幼年学校で過ごしていたマクシミリアンの元に毎日の様にイザベルは現れ、どんな些細な事柄でも構わないから、と王弟ジョンについて根掘り葉掘り聞いてきた事を覚えている。
「わたくし、あの御方の妻になるのですもの。どんな事でも知っておきたいわ」
両親が耳にしたなら卒倒しそうな事を姉はなんの事はない様に口にした。
姉が動き出した、と言う事は、父である皇帝を説得させなくてはならない。
神竜の血を色濃く引き、幼子の姿のままの姉を何時までも離宮に隠し遂せる事は不可能である事、姉は内密に宮廷儀礼や礼儀作法の勉学を修得しており、何処に嫁いでも問題のない皇女である事、既に幾つもの実績を持っている事。
マクシミリアンが皇帝に一月を掛けてイザベルの意志が堅い事を納得させて漸く、イザベルは生まれ育った帝国を離れ、王国の王弟、ジョンの婚約者として王国に足を踏み入れる事になったのだった。




