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心剣士は少女の夢を夢見るのか  作者: リュカギン
第三章 人間サイズの四つ角

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第09話 EP03-02 触手樹討伐戦

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 オレの名《な》は『新実《にいみ》 健二《けんじ》』。『内地《ないち》』では、中学校《ちゅうがっこう》に通《かよ》う中学《ちゅうがく》二年生《にねんせい》の、ごく普通《ふつう》の男子《だんし》だけど。『外地《がいち》』なら、『人《ひと》が武器《ぶき》に残《のこ》した強《つよ》い思《おも》い』で戦《たたか》う魔法《まほう》使《つか》い『心剣士《しんけんし》』だ。


   ◇


 秋《あき》の日曜日《ひちようび》の午後《ごご》に、オレは薄曇《うすぐも》りの空《そら》を見《み》あげる。

 場所《ばしょ》は、魔王《まおう》の居城《きょじょう》と目《もく》される岩山《いわやま》の麓《ふもと》に広《ひろ》がる広大《こうだい》な平地《へいち》、通称《つうしょう》『魔城《まじょう》の前庭《ぜんてい》』。今回《こんかい》の戦場《せんじょう》である。


 秋《あき》の灰色《はいいろ》の空《そら》は、岩山《いわやま》の後方《こうほう》辺《あた》りで、『魔界《まかい》』の闇《やみ》の壁《かべ》に堰《せ》き止《と》められる。その闇《やみ》の壁《かべ》は、左右《さゆう》に果《は》てなく、『外地《がいち》』をグルリと囲《かこ》む。


 この地《ち》、『魔城《まじょう》の前庭《ぜんてい》』こそ。いつか『魔王《まおう》』を討《う》つために、魔王《まおう》の居城《きょじょう》に踏《ふ》み込《こ》むために、人間《にんげん》が越《こ》えなければならない試練《しれん》だ。


 と以前《いぜん》は、大騎士団《だいきしだん》が率《ひき》いる大軍勢《だいぐんぜい》で攻《せ》め込《こ》んでは、魔将軍《ましょうぐん》『冒涜者《ブラスフィ》』が率《ひき》いる魔物《まもの》の大軍勢《だいぐんぜい》に追《お》い返《かえ》される、の繰《く》り返《かえ》しだったらしいが。冒涜者《ブラスフィ》がいなくなった途端《とたん》に、手前《てまえ》半分《はんぶん》程度《ていど》を制圧《せいあつ》して、四《よ》つ角《つの》の魔物《まもの》の討伐《とうばつ》、まで作戦《さくせん》が進《すす》んでいた。

 やっぱり、何《なに》もない広大《こうだい》な平地《へいち》なんて普通《ふつう》に防衛《ぼうえい》できるわけないのだ。冒涜者《ブラスフィ》が強《つよ》すぎただけなのだ。


 五《いつ》つ角《つの》の魔物《まもの》=『魔将軍《ましょうぐん》』は、途轍《とてつ》もなく強《つよ》い。


   ◇


 そろそろ開戦《かいせん》か?

 オレは足元《あしもと》を見《み》おろした。薄《うす》い茶色《ちゃいろ》の、乾《かわ》いた土《つち》の荒《あ》れ地《ち》だ。

 草《くさ》の一本《いっぽん》も生《は》えてない。代《か》わりに、金属片《きんぞくへん》や、何《なに》か分《わ》からない破片《はへん》みたいなものが、土《つち》から生《は》えたみたいに形《かたち》を覗《のぞ》かせる。長《なが》く続《つづ》く戦争《せんそう》の、散《ち》っていった人《ひと》たちの無念《むねん》が、無数《むすう》に、無惨《むざん》に転《ころ》がっている。

 まぁ、戦場《せんじょう》ってのは、だいたいそんなものだ。


「戦闘《せんとう》準備《じゅんび》!」

 若《わか》い騎士《きし》の高《たか》めの声《こえ》が聞《き》こえた。


 敵《てき》味方《みかた》の戦力《せんりょく》と状況《じょうきょう》は、……見《み》えない! オレには見《み》えない!

 オレの周囲《しゅうい》は全《すべ》て、重過《おもす》ぎじゃないっすか?くらいに追加《ついか》外装《パーツ》を増《ふ》やした全身金板鎧《フルプレートメイル》の騎士《きし》が並《なら》ぶ。オレより背《せ》が高《たか》く、高《たか》い背《せ》と同程度《どうていど》の大盾《ラージシールド》を構《かま》え、密集《みっしゅう》して整列《せいれつ》する。

 この重装《じゅうそう》のユーナベルム騎士《きし》だけでも千名《せんめい》いると聞《き》いた。担当《たんとう》する敵《てき》は、人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》と、他《ほか》の魔物《まもの》が多数《たすう》と聞《き》いた。


 魔物《まもの》戦《せん》の基本《きほん》は、歩兵《ほへい》だ。騎馬《きば》は、人間《にんげん》より強靭《きょうじん》で速《はや》い魔物《まもの》には通用《つうよう》しない。


 人間側(こっち)は数万《すうまん》の騎士《きし》兵士《へいし》で横《よこ》に長《なが》い陣形《じんけい》を組《く》んで、荒《あ》れ地《ち》に広《ひろ》がる魔物《まもの》どもと正面《しょうめん》から激突《げきとつ》する感《かん》じだと思《おも》う。攻防《こうぼう》しながら魔物《まもの》どもを押《お》し込《こ》み、四《よ》つ角《つの》の領域《テリトリー》まで進《すす》み、四体《よんたい》いる四《よ》つ角《つの》のうちの一体《いったい》を討《う》つ。その一角《いっかく》をユーナベルム騎士団《きしだん》が担《にな》う。


 と思《おも》うのだけど、騎士《きし》たちが壁《かべ》になって周囲《しゅうい》が全《まった》く見《み》えない!


 オレは、一張羅《いっちょうら》の中学校《ちゅうがっこう》の制服《せいふく》、白《しろ》のワイシャツに黒《くろ》のスラックスに黒《くろ》のスニーカーである。手《て》には、『燕《つばめ》が強《つよ》い思《おも》いを籠《こ》めたフィンガーレスグローブ』を嵌《は》める。

 回避《かいひ》特化《とっか》の、攻撃《こうげき》には不向《ふむ》きな『思《おも》い』だけど。人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》の魔物《まもの》を討伐《とうばつ》しにきたわけじゃない。オレを狙《ねら》わせて、攻撃《こうげき》を躱《かわ》し続《つづ》けて、本隊《ほんたい》の聖高潔騎士団《ホーリブル》四万《よんまん》が別《べつ》の四《よ》つ角《つの》『触手樹《しょくしゅじゅ》』を討伐《とうばつ》するまでの時間《じかん》稼《かせ》ぎが目的《もくてき》だ。


「ユーナベルム騎士団《きしだん》! 総員《そういん》、前進《ぜんしん》せよ!」

 若《わか》い騎士《きし》の号令《ごうれい》に、いよいよ、大盾《ラージシールド》を構《かま》えた重装《じゅうそう》騎士《きし》たちが踏《ふ》み出《だ》す。ガチャチャン、ガチャチャン、と金属《きんぞく》鎧《よろい》を鳴《な》らし、一糸乱《いっしみだ》れず、歩《あゆ》みの速度《そくど》で前進《ぜんしん》する。


 オレも、ペースを合《あ》わせて前《まえ》に進《すす》む。


 金属板《きんぞくばん》の打《う》ち合《あ》う規則《きそく》正《ただ》しい音《おと》に、魔物《まもの》どもの咆《ほ》え声《ごえ》が交《ま》じり始《はじ》めた。

『ゥゥゥゥウボォァーーーーーッッッ!!!』

 数《かず》は、たくさん。獲物《えもの》が来《き》たと、人間《にんげん》を殺《ころ》せると、醜悪《しゅうあく》な歓喜《かんき》が、戦場《せんじょう》の全体《ぜんたい》に一斉《いっせい》に膨《ふく》れあがった。

 並《なみ》の騎士団《きしだん》なら、恐怖《きょうふ》に足《あし》が竦《すく》む。オレは、怖《こわ》くないこともないけど、大《おお》きな戦場《せんじょう》を何回《なんかい》か経験《けいけん》して慣《な》れてる。強兵《つわもの》揃《ぞろ》いのユーナベルム騎士団《きしだん》は、騒《ざわ》つきもせず前進《ぜんしん》を続《つづ》ける。


 間《ま》もなく、魔物《まもの》の軍勢《ぐんぜい》とぶつかる。人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》と見《まみ》える。緊張《きんちょう》する!


   ◇


「会敵《かいてき》! 交戦《こうせん》開始《かいし》!」

 始《はじ》まった! 前方《ぜんぽう》で、金属《きんぞく》がひしゃげる甲高《かんだか》い音《おと》が鳴《な》った。騎士《きし》たちが、大盾《ラージシールド》を地面《じめん》に突《つ》き立《た》て、肩《かた》で支《ささ》える構《かま》えで踏《ふ》みとどまった。


 オレは、見《み》えない! 轟音《ごうおん》と怒号《どごう》で、前方《ぜんぽう》で戦闘《せんとう》開始《かいし》したと分《わ》かった。頭上《ずじょう》を、たくさんの矢《や》と魔法《まほう》の火球《かきゅう》や石礫《いしつぶて》が飛《と》び越《こ》した。

「踏《ふ》みとどまれ!!!」

『うおぉぉぉぉぉっ!!!』

 大《おお》きな暴威《ぼうい》の衝突《しょうとつ》に、屈強《くっきょう》な騎士《きし》たちが押《お》される。動《うご》きを揃《そろ》え、肩《かた》で押《お》し返《かえ》す。


 大盾《ラージシールド》を構《かま》えた騎士《きし》たちの列《れつ》の背中《せなか》を、大盾《ラージシールド》を構《かま》えた騎士《きし》たちの列《れつ》が支《ささ》える、って感《かん》じで、十列《じゅうれつ》くらいはある。すぐさま押《お》し崩《くず》される心配《しんぱい》は無《な》いと思《おも》う。


 オレの出番《でばん》は、まだか? 勇猛《ゆうもう》な騎士《きし》たちの奮戦《ふんせん》を見《み》れば、さすがに血《ち》が沸《わ》く。共《とも》に戦《たたか》いたいと、気《き》が逸《はや》る。


 ギィィィィィンッッッ!!!、と一際《ひときわ》大《おお》きな、金属《きんぞく》がひしゃげる耳障《みみざわ》りな音《おと》が鳴《な》った。曇《くも》り空《ぞら》高《たか》くに、鉄色《てついろ》の金属籠手《ガントレット》が舞《ま》った。


「……?」

 オレは思《おも》わず、空を舞う金属籠手(それ)を見《み》あげた。

 ……金属籠手《ガントレット》? だけ(オンリー)か? 中身《なかみ》は?、……は考《かんが》えない方《ほう》がいいか。


 再《ふたた》び耳障《みみざわ》りな金属音《きんぞくおん》で、鉄色《てついろ》の胸部装甲《ブレスト》が空《そら》高《たか》く舞《ま》った。続《つづ》けて、鉄色《てついろ》の兜《かぶと》が空《そら》高《たか》く舞《ま》った。

 中身《なかみ》は?、……なんて、絶対《ぜったい》に考《かんが》えちゃダメだ。ダメだ。


 どうやら、あの辺《あた》りに人間《にんげん》サイズの四《よ》つ角《つの》がいる。


 戦場《せんじょう》の喧騒《けんそう》に負《ま》けない音量《おんりょう》で、若《わか》い騎士《きし》が叫《さけ》ぶ。

「標的《ターゲット》を確認《かくにん》! 心剣士《しんけんし》殿《どの》に道《みち》を作《つく》れ!」

『おぉぉぉぉぉぅっ!!!』

 鎧《よろい》のパーツが舞《ま》う方《ほう》に向《む》けて、大盾《おおたて》騎士《きし》たちが前進《ぜんしん》し、陣形《じんけい》を突出《とっしゅつ》し、食《く》い込《こ》ませる。オレの前《まえ》の騎士《きし》たちが左右《さゆう》へとズレて、オレ一人分《ひとりぶん》の道《みち》を作《つく》る。

「感謝《かんしゃ》するっす!」

 オレは、フィンガーレスグローブの縁《ふち》を指先《ゆびさき》で引《ひ》っ張《ぱ》って嵌《は》めなおしながら、騎士《きし》たちの間《あいだ》を前《まえ》へと歩《ある》く。


 最前線《さいぜんせん》の轟音《ごうおん》と怒号《どごう》、甲高《かんだか》い金属音《きんぞくおん》が近《ちか》づいてくる。緊張《きんちょう》と興奮《こうふん》が最高潮《さいこうちょう》に達《たっ》する。問題ない(ノープロブレム)、慣《な》れてる、イける、と自分《じぶん》に言《い》い聞《き》かせる。

「開《ひら》けぇぇぇぇぇっ!」

『おぉぉぉぉぉぅっ!!!』

 大盾《おおたて》騎士《きし》たちが、地面《じめん》を削《けず》るように大盾《おおたて》を肩《かた》で押《お》し進《すす》んだ。ちょうどオレの目《め》の前《まえ》で、数百人《すうひゃくにん》の騎士《きし》の陣形《じんけい》が左右《さゆう》へと分《わ》かれて、競《せ》り合《あ》う前方《ぜんぽう》の魔物《まもの》どもを左右《さゆう》へと押《お》し込《こ》んで、左右《さゆう》に分断《ぶんだん》した。


 オレの目《め》の前《まえ》に、薄《うす》い茶色《ちゃいろ》の、乾《かわ》いた土《つち》の荒《あ》れ地《ち》が広《ひろ》がった。

 右《みぎ》にも左《ひだり》にも、大盾《おおたて》騎士《きし》たちと魔物《まもの》どもが衝突《しょうとつ》し、押《お》し合《あ》い、競《せ》り合《あ》い。その間《あいだ》に、大《おお》きな交差点《こうさてん》くらいの広《ひろ》さの空間《くうかん》ができた。


 オレは、空間《くうかん》の中央《ちゅうおう》へ、堂々(どうどう)と歩《あゆ》み出《で》た。そこには、頭《あたま》に四股《よんまた》に分《わ》かれた角《つの》のある、全身《ぜんしん》が赤黒《あかぐろ》い、人間《にんげん》サイズの魔物《まもの》が立《た》っていた。目《め》があるのか無《な》いのか分《わ》からない顔《かお》で、オレを見《み》ていた。



心剣士《しんけんし》は少女《しょうじょ》の夢《ゆめ》を夢《ゆめ》見《み》るのか

第09話 EP03-02 触手樹《しょくしゅじゅ》討伐《とうばつ》戦《せん》/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

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