第07話 EP02-03 対人って難しい
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。『内地』では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子。『外地』なら、『人が武器に残した強い思い』で戦う魔法使い『心剣士』だ。
ユーナベルム騎士団の仮の拠点、木造の生活区画の簡素な一室で、刺客の急襲を受けている。狙いは、『滅魔の剣』適合者の静妹である。
刺客は、現代アレンジの忍者みたいな黒装束の男が二人。そいつらの初手は、オレの鋭いパンチと、美月の華麗な格闘術で凌いだ。
だがしかし、黒装束二人とも、気配を薄くする超強力魔法品を所持してる。控えめに言って、ヤバい! オレは、簡単に見失うんですけど!
「美月! 頼もしいぜ!」
美月に頼んだのは、大正解だった。見失わせる効果の超強力魔法品が、『アーティファクトシーカー』の美月には逆に、この上ない目印だ。
背後の静妹に、再び声をかける。
「静妹よ。お兄ちゃんの側を離れるんじゃないぞ」
緊張する。集中する。
守るべき静妹がいる。こちらの戦力は、オレと美月。敵の戦力は、黒装束の男が二人。
ユーナ王女様は戦力外だから。観客だから。
「……」
室内に満ちるのは、沈黙と静寂。
コッチもアッチも動けない。切っ掛けが無い。勝ち筋が見えない。
緊張に、頬を汗が流れる。一触即発。些細な切っ掛けで、全員が一斉に動いて、一瞬で勝敗が決まる、そんな気がする。
「……」
静寂に、ガシャガシャと無造作に、ユーナ王女様の横を通って、重装金属鎧の騎士が部屋に入ってきた。
騎士は無造作に、オレの目の前の方の、薄く透けた黒装束の背後に立つ。
あまりに自然な動作に、何も知らないのかな?、刺客に気付いてないのかな?、と思う。
むしろオレは、『重装金属鎧?、ユーナベルムの騎士はもっとゴテゴテに金属パーツを盛るから、比較論的に軽装金属鎧なのでは?』と、どうでもいい考察までしてしまった。
騎士は無造作に、背後から黒装束の首根っこを掴んで、片手で持ちあげた。
「な!? な!? 何だ!?」
黒装束の男が姿を顕わにした。慌てふためいて、床から浮いた足をジタバタと振りまわした。
騎士が、黒装束の男を片手で持ちあげたまま、低く威圧感のある声で告げる。
「それなりの準備をしてきたようだが。其方らは、この子供たちにすら勝てなかった」
声で、フルフェイスヘルムの中身は壮年のユーナベルム騎士だと分かった。以前は騎士団長だった、猛者オーラの凄い歴戦の男だ。
「恩義あって、我らユーナベルムの騎士が子供たちに助力する。彼我の戦力差を鑑みれば、其方らの雇い主に報告し判断を仰ぐが賢明、と存じあげるが?」
壮年の騎士は言い終えて、黒装束の男を無造作に放す。
黒装束の男は尻から床に落ちて、慌てて転がって、慌てて立ちあがって、ガラス窓へと慌てて走った。
「窓を壊すでないぞ」
壮年の騎士が声をかけるのと同時くらいに、黒装束の男がガラス窓へと飛び込み、ガシャンと壊して、外に逃げた。
呆気に取られた室内に、チッ、と舌打ちが鳴る。板床に突き立つアーミーナイフが浮いて、消える。
もう一人の黒装束が引き抜いたと、オレにも分かる。
ソイツはオレの認識からは消えたままだけど、美月の視線が追い続けている。
壊れていない方のガラス窓がキィと開いた。吹き抜けた風に、またキィキィと揺れた。
オレは、風かな?、と思った。
……思ってしまった! 怖い! 対人戦怖い!
窓の方を見ながら、美月が淡々と告げる。
「超強力魔法品は二個とも、遠ざかっていくわ」
美月は、超強力魔法品を認識できる魔法使い『アーティファクトシーカー』である。
「あれだけ脅しておけば、今日一日くらいは安全であろう」
壮年の騎士が豪快に笑った。
「暗くなる前には迎えの馬車が来るっす。それまで安全なら十分っす」
オレは、嫌な汗を拭いながら、安堵の溜め息をついた。
静妹を守れて良かった。守れなければ、殺されていたのかも知れなかった。今のは命のやり取りだったのだと思い出して、今さらながらに、恐怖の感情が溢れていた。
◇
外地から内地のオレの家に帰り着いてみれば、ダイニングルームのダイニングテーブルに、ロゼリア レッドローズが深刻な顔で考え込む。
背の高いテーブルだけど、長身のロゼリアが着くと低く見える。赤いドレスで窮屈そうにイスに座り、両肘をテーブルに突き、両手を組んで、その両手に細い顎を載せる。
……化粧の陰影で細く見えるのかも知れない、か?
廊下には、美月が真顔で静妹の両肩をガッチリと掴んで、見詰め合っている。静妹は怯えている。
美月は人見知りすぎて、年下との接し方が分からないらしい。愛妹との初対面のときも似た感じで、未だに愛妹に警戒されている。
「今度こそ、何か問題が起きたっすか?」
オレは、ロゼリアの対面に恐る恐る着席した。
今日の御見合いの結果は、聞かないでおこう。ロゼリアの落胆を見れば、察しはつく。予想通りの罠の破談で間違いない。
「……」
ロゼリアが深刻な顔をあげて、無言でオレの前に、立体的な装飾の入った厚い台紙を差し出した。
装飾こそ違えど、前回も見た。大事な写真とかを挿んで保存するヤツだ。前回のは、御見合い写真だった。
これではまるで、……否、まさか、そんなはずがない。ロゼリアが見え見えの御見合いに跳び込んだ結果、オレたちが刺客に襲われたってのに。まさかそんな、『最強の盾』ロゼリア レッドローズだぞ、二連続で罠にダイブするなんて、まさかそんなはずは……。
あれこれ勘繰るより、見た方が早い。
オレは緊張気味に、台紙を開いた。イケメンの長身優男が傍らに長毛の大型犬を従えた写真と
「レイモア家当主の弟の次男で広報誌の表紙を飾ったこともある二十二歳の」
「やっぱり完全に罠っすよね! ダメっすよね!」
「お待ちなさい! 女には罠と分かっていましても跳び込まねばならないときが」
写真ごと破ろうとするオレと、取り返そうとするロゼリアで、テーブルを挟んで台紙を奪い合う。
今日一日を家で一人で留守番させられた愛妹が、恨みがましい目をして、廊下からオレを睨む。静妹に『ユーナ王女様との夢心地の御茶会エピソード』を聞いてから、刺々しさが激しい。
オレは刺客に襲われて怖い思いをしたってのに! 何なんだ、この扱いは!
本当に碌なことが無い。次があっても絶対に係わるまい、と心に決める。
……あ、う、でも、また新しい妹が増えるのなら、まぁ、受けてもいいかな、とも思った。
心剣士は少女の夢を夢見るのか
第07話 EP02-03 対人って難しい/END
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