第06話 EP02-02 襲撃
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。『内地』では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子。『外地』なら、『人が武器に残した強い思い』で戦う魔法使い『心剣士』だ。
不測の事態『ロゼリアの不在』に、静妹の護衛のため、外地の村の駐屯軍の宿泊施設に来ている。
ロゼリアには後で絶対に猛抗議したいと思う。
ユーナベルム騎士団の仮の拠点で、中学校くらいの広さの空き地に木造長屋が並ぶ。施設は簡素だけど、広い。
「……」
半開きの扉に半身隠してコッチを覗くユーナ王女様と、目が合った。
ユーナ王女様が、『もしかして、わたくしの出番ですか? わたくしが部屋に入っても、よろしいのですか?』って感じの明るい表情をした。
まだっす! まだっす!
オレは慌てて、片手でユーナ王女様を制止する。
「すっ、すごいです! 本物、生、すごいです、新実お兄さん! 御尊顔が、まっ、眩しいです!」
もう片手で、大興奮の静妹をステイする。
戦いは、もう始まっている。
◇
オレは今、木造の広い部屋にいる。兵士が共同生活する部屋を客間に改装した感じである。
ベッドが二台、テーブルが一台、イスが二脚、全て壁際にある。全てから離れて、部屋の中央に立つ。傍らに静妹がいる。
角部屋で、二方向の板壁にガラス窓がある。残りは、一方向が板壁、一方向が扉からユーナ王女様が覗く。
ユーナ王女様が、『そっ、そうですよね。わたくしの出番なんて、ありませんよね。こんな、わたくしに、出番なんて……』って感じでシュンと肩を落とした。
床と天井も板張りで、天井の数か所にはオイルランプがさがる。
快晴の午後で、窓の外が明るい。窓から陽光が差し込み、部屋の中も明るい。遠めに、訓練する騎士兵士たちの暑苦しい掛け声が聞こえる。
重要なのは、ここから。事前に得た情報だ。
すでに、敵が侵入している。敵の所持品には、少なくとも超強力魔法品が二個ある。二個とも、低ランクの、人の気配を薄くする効力のもの。
警備は何してんの!?
そこは、ほら、村を魔物から守るための警備だから。敵が人間で、超強力魔法品まで持ち出したなら、已む無し。
さらに、外地では機械が機能しない。防犯カメラとか赤外線センサーなんて便利道具は無い。あるのは精々、人の目と望遠鏡と鳴子くらいだ。
……思わず、現実逃避の自問自答をしてしまった。
落ち着け、オレ!
オレの武器は、左右の手に嵌めたフィンガーレスグローブ。カッコイイ! 能力は主に、高速回避、動体認識、軌道予測である。
対人戦に好い、と思う。碌に対人戦したことないから、思う、と思う。
正直、怖い。静妹のために頑張る。けど、どこまでできるか、自信はない。
自信がないから思わず、現実逃避したくなる。
「いいか、静妹よ。お兄ちゃんの側を離れるんじゃないぞ」
興奮する静妹に声をかける。
一箇所しかない簡素な木板の扉が、キィと軋んで、少し動いた。
オレは、風でも吹いたのかな?、と思った。
◇
……思った。思ってしまった。事前の情報がありながら、風かな?、と思ってしまった。
事前の情報が無ければ、きっと、思ったまま終わっていた。
オレの全身に、冷たい汗が滲む。
侵入者がいる。気配を薄くする超強力魔法品を所持してる。扉が少し動く。
と、なれば?
オレは緊張して、扉の方に意識を集中した。薄く透けて、現代アレンジの忍者みたいな黒装束の男が見える気がした。
意識を逸らしたら消えそうな、見えても錯覚かと疑う程度の存在感しかない。透けた黒装束の向こうには、シュンとしたユーナ王女様だって見える。
黒装束の武器は、アーミーナイフを片手持ち。もう片手には超強力魔法品を持っているはず。
怖い! 落ち着け、オレ! 対人戦怖い!
とにかく、目の前の透けた黒装束に集中する。たぶん黒装束の目当て、静妹の前に立って視線を遮る。フィンガーレスグローブの記憶に引っ張られて、ボクシングのファイティングポーズを取る。
透けた黒装束が、ゆっくりと動いた。一瞬で、オレは見失った。
っ!??? ヤバい!!! 否!、まだだ、落ち着け、オレ!
あんなヤバい効力があれば、奇襲の強襲で瞬殺できるはずなのに。そうしなかったのは、たぶん、超強力魔法品の能力に制限があるから。例えば、速く動くと効果が発揮されない、とか。
フィンガーレスグローブに残る『燕の記憶』が、分析し、予測する。
今の動き出し程度の速度で動き続けると仮定。オレを回り込んで静妹を狙うのは、オレの不測の動きに邪魔されるリスクがある。静妹より先にオレを狙う、負傷させて動きを妨げる、が相手の初手と予想できる。
相手が『オレに見られてない』と認識してるなら、一直線に近づいて、アーミーナイフで真っ直ぐに突けばいい。この場合、小細工を混ぜ込むのは、オレのチャンスを増やすだけの下策だ。
動き出し程度の速度。一直線の踏み込みと突き。
予測が、見えない相手のイメージとなって浮かんだ!
オレは『燕の記憶』を運動能力に変換して、左右のパンチを小刻みに振り回した。
フィンガーレスグローブ越しに冷たく硬い感触があった。弾かれたアーミーナイフがクルクルと飛んで、板床に突き立った。黒装束の男が、慌てて後退った。
黒装束の男が、はっきりと見える。飛び退いた速度ゆえか、男の動揺ゆえか。
突然の出現にユーナ王女様がビックリしている。見えていなかった、突然に見えた、との認識で間違いない。
オレも、静妹も、ユーナ王女様も、その男に注目した。次の動きに備え、体を硬くした。
静妹の斜め後ろに立つ美月が、静妹の横の空間に踏み込んで、横の空間を掴んだ。さらに、横の空間を掴む手を縦に巻くように握り込んだ。
別の黒装束の男が、背中から板床に叩きつけられた。
◇
……怖い! 対人戦怖い!
オレは、目の前の黒装束しか見えてなかった。事前情報で『超強力魔法品が二個』なら、二人いると想定すべきだった。
そんな余裕、オレには無いっす! 美月さん、さすがの優等生っす!
板床にバウンドした黒装束が床を転がり、勢いで素早く立ちあがり、後退り、再び姿を薄くする。
「ボーッとするな! お前も早く消えろ!」
その苛立った一喝に、オレの目の前の黒装束も我に返り、姿を薄くした。
美月は、内地では普通の中二女子だ。体は華奢で、肩までくらいの長さのピンク髪で、年相応に可愛くも、芯の強そうな凛々しい顔立ちで、声が澄んで高い。
「こちらは、ワタシが相手をするわ。健二は、扉の方をお願い」
外地なら、超強力魔法品を認識できる魔法使い『アーティファクトシーカー』である。今や最強の騎士団の一つ『ゲシュペンスト騎士団』の長の養女で、黒の軍服に、黒のミニスカートを穿いて、素肌の腕脚が細く伸びる。
美月もモロ軍人で、『頼ってはいけない』に分類されるのだけれど。まぁ、何と言うか、やっぱり他に頼れる相棒なんていないので、頼ることにしたのだった。
心剣士は少女の夢を夢見るのか
第06話 EP02-02 襲撃/END
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