第05話 EP02-01 ロゼリアの弱点
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの家のダイニングルームのダイニングテーブルに、ロゼリア レッドローズが深刻な顔で考え込む。
背の高いテーブルだけど、長身のロゼリアが着くと低く見える。赤いドレスで窮屈そうにイスに座り、両肘をテーブルに突き、両手を組んで、その両手に細い顎を載せる。
……化粧の陰影で細く見えるのかも知れない、か?
廊下には、ダイニングルームを覗く愛妹と静妹がいる。ロゼリアの迫力と威圧感に完全に気圧されて委縮して、キュートな体の九割を壁の向こうに隠す。
その姿もまた、かわいい。
オレの名は『新実 健二』。内地では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。
◇
「急に、何の御用っすか? 何か問題でも起きたっすか?」
オレは、ロゼリアの対面に恐る恐る着席した。
ロゼリアは、背の高い精悍な女騎士だ。赤髪ロング縦巻きロールで、化粧が厚く、赤いドレスを纏う、二つ名『最強の盾』とも呼ばれる、高名な大騎士団の騎士団長だ。
オレの記憶が確かなら、ロゼリアは同じマンションの隣室に住んで?、静妹を陰ながら護衛してくれている。同時進行で『第二次フェニックス計画』の賛成派も反対派も纏めて説得する、と豪語してもいる。『滅魔の剣』適合者を犠牲としない改善をしてみせる、と。
陰ながら護衛していた人が直接会いにきたのだから、何かあったに決まっている。ロゼリアの様子からも、明白である。
オレは恐る恐る、ロゼリアの深刻な顔を見つめた。厚化粧をしてる、もとい、深刻な顔をしてるってことは、説得が難航しているのだろうか。まさか、決裂しちゃったとか?
「……」
ロゼリアが、深刻な顔をあげて、オレを見る。厚い真っ赤な唇を動かそうとして、躊躇って、閉じる。替わりに、オレの前に、立体的な装飾の入った厚い台紙を差し出す。
知ってる。大事な写真とかを挿んで保存するヤツである。御見合い写真の受け渡しに使われるのを、ドラマで見たりもする。
言葉で説明するより、見た方が早い、ってことだ。
オレは緊張気味に、台紙を開いた。立派な軍服姿の男の写真と、プロフィールが流暢に記された紙が入っていた。
これではまるで、……否、そんなはずがない。今の状況で、まさかそんな……。
「あ、あの、これって……?」
ロゼリアが深刻な顔で、重い唇を開いた。
「新実 健二『心剣士』殿。落ち着いて、お聞きなさい。……トウカグラス家から、見合いの申し込みがありました」
「っっっ!!!?!!??!???」
オレはビックリした。廊下からダイニングルームを覗いていた愛妹と静妹も、揃ってビックリした。
ロゼリアが深刻な顔で続ける。
「御相手は、トウカグラス家の嫡男です。二十歳の若さで千人の隊を任される将来有望な騎士にして。アイドル並みの美形とモデル体型で、女子人気も高くあります」
否否否。確かに、『男性アイドルの一日隊長』みたいな写真だけど。
「こんなタイミングにこんな御見合いって、明らかにおかしいっすよね? そのトウカグラス家って、何派っすか?」
オレは真顔でツッコミを入れた。
ロゼリアが、答えづらそうに、重い唇を波立たせる。ロゼリア本人も、分かっている。
「やっぱり、反対派の罠っすよね?」
オレは代わりに、確信を言葉とした。
「そもそも、厚化粧BBA……、ロゼリアさんに二十歳の、名家の長男が御見合いって、在り得ないっすよね?」
「!!!!!」
ロゼリアが、二つ名に負けぬ威圧感の双眸で、クワッッッ!!!とオレを睨んだ。
「こっ、こればかりは譲れないっすよ! 静妹の安全が懸かってるっすから!」
オレは逃げ腰で、両手で眼光を防ぎながら、必死の抵抗を試みた。
ロゼリアがテーブルに手を突き! 勢いよく立ちあがり!
「私には不相応な御相手と! 魔界の闇が晴れようとも起こり得ない奇跡ですと! 重々承知していますわ!」
精悍な声で!
「それでも!、女には! 罠と分かっていましても! 跳び込まねばならないときがありましてよ!!!」
高らかに言い放った!!!
自分には条件の好過ぎる相手だから、罠でも、万が一の可能性に賭けて御見合いを受けたい! って、身も蓋もない魂の叫びである。
廊下の愛妹と静妹からは、なぜか、賛同を示す拍手が送られる。
オレの説得が通じる『最強の盾』でもあるまいし。妹二人に逆張りして不興を買うのも気が引けるし。反対なんてできる雰囲気ではなくなっていた。
◇
ロゼリアの指示は、簡潔だった。
御見合いの当日は、『外地』で一日を過ごすこと。
まぁ、『内地』でオレが護衛しても戦力外だから、分かる。銃器を使う刺客なんて論外、ナイフで襲われても守り切れない自信がある。
オレは『外地』なら、最強クラスの魔法『心剣士』が使える。対人戦には不慣れでも、まだマシだと思う。
潜伏場所は、オレが準備すること。
ロゼリアの伝手で準備すると、その線から潜伏場所が露呈する。今の立場のロゼリアは、各派閥から徹底的に監視されている。ロゼリアの伝手で何かをすれば、即座に敵対勢力に筒抜けるのである。
だから、オレが、静妹が一日隠れておける外地の村を、宿を取る。それでもバレるだろうけど、即座にはバレない。バレるまでの時間を稼げることに意味がある。
指示は、この二つだけだった。後はオレが何とかしろ、ってことだ。
「新実お兄さん。チェ、チェキをお願いするのは、ふ、不敬でしょうか?」
静妹が、興奮気味に聞いてきた。
外地の村の宿泊施設に着いてから、ずっとテンションが高い。楽しそうで、かわいい、もとい、何より。
ここは、一般の宿ではなく、駐屯軍の宿泊施設である。自軍の拠点を持てない小規模以下の騎士団は、外地の村の警備を条件に土地を間借りすることが多い。
建物は新品の木造で、平屋の長屋造だ。駐屯間もない騎士団の即席の施設としては、立派な方だろう。広い部屋にベッドやテーブルやイスもあって、快適に過ごせそうだ。
万全を期すなら、『軍関係者を頼ってはいけない』のだけれど。
オレは、何気なく、半開きの扉の方を見る。
陰に半身隠してコッチを覗く女の人がいる。
その女の人は、灰銀色の長い髪の、高校生くらいの美少女である。儚げで清楚で、胸が大きくてナイスバディで、煌びやかながら清らかな、白いドレスを纏う。細い手と細い指には、白いレースの手袋を嵌める。
そう! ユーナ王女様御本人である! 尊い!
そう、ここは、ユーナベルム騎士団の仮の拠点である。
ユーナベルム騎士団なら戦友みたいなものだし。ユーナ王女様がオレを裏切るわけもないし。
しかしながら、本拠地の陥落したユーナベルム騎士団の現状を考えると、増員や予算の増額で簡単に買収できてしまいそうな気もするけど。
まぁ、何と言うか、他に当てが無いので、頼ることにしたのだった。
心剣士は少女の夢を夢見るのか
第05話 EP02-01 ロゼリアの弱点/END
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