第02話 EP01-01 第二次フェニックス計画
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。内地では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。
仲良く遊ぶ愛妹と新しい妹を、だらしなくソファに座って観賞する。
二人の妹が絨毯に直座りして仲睦まじく微笑み合う。
こんな幸福が現実世界に実在して、許されるのだろうか?
「……よし」
オレは意を決した。雰囲気を感じたのだろう、愛妹も新しい妹もオレを見た。
「『愛妹』と、『静妹』と呼ぶことにする」
オレは、満足した。我ながら完璧だ。同じ文字列で等しく愛情を表しながら抑揚と微妙な音の変化で呼び分けを
「キモい」
愛妹が、キモいものを見る目で断言した。
「聞きしに勝るキモさです」
静妹も、キモさと驚きの混じる目で追従した。
好い。照れから生じる反抗。とても好い。
◇
さて置き、望まず係わってしまった『第二次フェニックス計画』だが、思ったより面倒な状況で困っている。妹たちを愛ででもしないと、気分が沈む。
まず、孤立無援同然に味方がいない。
ロゼリア曰く、この計画に対する軍人のスタンスは五つの派閥に分かれる。『賛成強硬派』『賛成保守派』『中立派』『反対穏健派』『反対過激派』である。
賛成強硬派は、犠牲を厭わず計画を推進する派閥だ。お偉いさんでいえば、密室にいた七人の爺婆軍人だな。
希少な適合者の『静妹』を守る立場だけど、保身を最優先する連中でもあるから、危機には頼りにならないだろう。
賛成保守派は、積極的な先導はしないけど、やるなら協力する人たち。
中立派は、賛成でも反対でもない、興味ない、情報すら貰えない、みたいな有象無象だ。
反対穏健派は、反対の立場は取るけど、実力行使はしない人たち。ロゼリアは、自称ここに含まれる。
問題は、反対過激派だ。計画を潰すためなら、適合者の暗殺も厭わない。
軍のお偉いさんもいる強権な派閥で、賛成保守派、中立派、反対穏健派は買収されるリスクがある。その経路での情報漏洩が怖くて、軍関係者には一切の協力を仰げないのである。
……困った。思わず、溜め息が出た。
愛妹と静妹が揃って、怪訝そうにオレを見た。揃って、怪訝そうに目を逸らした。
ロゼリアの有り難い忠告は、他にもある。対人の武器を常備するように、なんて物騒なものまで、である。
オレは、外地で魔物を倒す傭兵だから、対人は専門外なんだけど。かわいい静妹のためなら、やれるだけやってみるのも吝かではない。
◇
オレは平日の朝に、中学校の制服、白のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカーで、中学校の教室にいる。自席に、猫背気味に座る。
こんなときに、律儀に登校する必要無くない? 護衛任務が最優先でよくない?
静妹の小学校での護衛は、ロゼリアがやってくれるらしい。
だったら、わざわざオレが護衛しなくてよくない?
まぁ、大騎士団の騎士団長の多忙は察するし、静妹を常に護衛できるわけじゃないのも分かる。つまりオレは、不測の事態とか、ロゼリアがいないタイミングをカバーするための保険ってわけか。
「おはよう、健二。浮かない顔をして、どうしたの?」
クラスメートの美月が、オレの隣の席に座った。
美月は、内地では普通の中二女子である。体は華奢で、肩までくらいの長さのピンク髪で、年相応に可愛くも、芯の強そうな凛々しい顔立ちで、声が澄んで高い。
女子の制服は、白のブラウスに黒のプリーツスカートに黒のスニーカーである。
「ん? あ、あぁ、ちょっと寝不足で」
オレは、目を泳がせながら答えた。
美月は、信頼できる相棒で頼れる優等生でもある。
だがしかし、ゲシュペンスト騎士団の騎士団長の養女で軍人でもある。
さらに、フェニックス計画の詳細を知ってる。ときどき家に遊びにくるし、愛妹を、オレの家族構成を知ってる。オレの迂闊な質問から全てを察する危険が、……ある!
美月には頼れない。迷惑をかけてしまう。美月は絶対にダメだ。
美月が、露骨に疑念の瞳をする。
「……ふぅん」
美月が、疑念の瞳で続ける。
「ところで、『心剣士』の新しい段階に覚醒した、って、どうなったの?」
よくぞ聞いてくれました! 『心剣士』の新しい段階とは! 『武器に残った強い思い』複数が協力して力を合わせる、超必殺技である!
オレは、猫背気味にドヤ顔で答える。
「例えば、見知らぬ二人の『思い』を合わせようとするだろ? 二人とも『誰この人?』みたいな反応をする」
「そ、そうなんだ?」
美月が困惑顔をした。
オレはドヤ顔で続ける。
「だったら、同じ人の『思い』を二つ合わせようとするだろ? すると、どっちも『どうして自分がもう一人!?』って感じの反応をするんだぜ」
「そ、そうなんだ」
美月が困惑顔で頷いた。
オレは満足して頷いた。さすがは相棒で優等生の美月だ。あれだけの説明で、『実用化は遠い』と正確に伝わったようだ。
思いつきの初挑戦での成功は奇跡だった。大勢の『思い』の各人が、単なる顔見知りではない、それよりずっと強い人間関係で繋がっていたのだから。
◇
このクラスには、ロゼリアの溺愛する姪っ子『レサリア レッドローズ』もいる。御嬢様で、小柄な女子で、オレの友だちで、軍人で、頼もしい騎士である。
だが、今回は、レサリアにも頼れない。
なぜなら、ロゼリアに、『レサリアちゃんを巻き込んだら、問答無用で殺しますわ』って真顔で言われたから。
ロゼリア レッドローズ、怖すぎる。
心剣士は少女の夢を夢見るのか
第02話 EP01-01 第二次フェニックス計画/END
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