↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心剣士は少女の夢を夢見るのか  作者: リュカギン
プロローグ 今だけ妹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

第01話 EP00-01 今だけ妹

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 オレの名《な》は『新実《にいみ》 健二《けんじ》』。内地《ないち》では、中学校《ちゅうがっこう》に通《かよ》う中学《ちゅうがく》二年生《にねんせい》の、ごく普通《ふつう》の男子《だんし》だ。


 秋《あき》の夕刻《ゆうこく》に、住宅地《じゅうたくち》のマンションの一室《いっしつ》、玄関《げんかん》扉《とびら》の前《まえ》に立《た》つ。普通《ふつう》のマンションで、やや古《ふる》ぼけて、白《しろ》いコンクリートの壁《かべ》には小《ちい》さな亀裂《きれつ》がある。表札《ひょうさつ》に見慣《みな》れた筆跡《ひっせき》で『新実《にいみ》』とあって、オレの家《いえ》で間違《まちが》いない。


 オレは、ドアノブに手《て》をかけようとして、迷《まよ》った。

 オレの後《うし》ろには十歳《じゅっさい》の女《おんな》の子《こ》がいて、不安《ふあん》げにオレを見《み》あげる。訳《わけ》あって暫《しばら》く同居《どうきょ》することになった、訳《わけ》ありの女《おんな》の子《こ》である。


「……よしっ!」

 意《い》を決《けっ》して、玄関《げんかん》扉《とびら》を開《あ》けた。

「ただいま~」

 日頃《ひごろ》の中庸《ちゅうよう》のテンションを心《こころ》がけて、廊下《ろうか》の奥《おく》へと声《こえ》を流《なが》した。


   ◇


「お兄《にぃ》ちゃん。おかえり~」

 愛妹《いもうと》が、トテトテと軽《かる》い足取《あしど》りで出迎《でむか》えにきた。


 愛妹《いもうと》は、かわいい。超《ちょう》かわいい。

 ボブっぽい髪型《かみがた》で、最近《さいきん》は伸《の》ばそうか迷《まよ》ってるらしい。ちょっと癖《くせ》っ毛《け》なのが悩《なや》みだそうだ。

 髪《かみ》だけじゃなく服《ふく》にも拘《こだわ》って、日頃《ひごろ》から家《いえ》の中《なか》でも、かわいく着飾《きかざ》ってる。今日《きょう》は、袖《そで》の膨《ふく》らんだブラウスにミニのジーンズスカートか。かわいい。


 オレを見《み》た愛妹《いもうと》が、廊下《ろうか》に踏《ふ》みとどまって、顔色《かおいろ》を変《か》えた。驚《おどろ》き、動揺《どうよう》といった表情《ひょうじょう》だ。

「お兄《にぃ》ちゃん。その子《こ》は?」

 オレの背中《せなか》に隠《かく》れる女《おんな》の子《こ》に、円《つぶ》らな瞳《ひとみ》を向《む》ける。


 オレの背中《せなか》に隠《かく》れる女《おんな》の子《こ》は、愛妹《いもうと》と比《くら》べると地味《じみ》な女《おんな》の子《こ》だ。ショートめのオカッパ髪《がみ》で、Tシャツに短《たん》パンってラフな服装《ふくそう》だ。小学生《しょうがくせい》なら普通《ふつう》かな、って感《かん》じだ。


 愛妹《いもうと》の反応《はんのう》は、分《わ》かる。気《き》になるよな、当然《とうぜん》。大好《だいす》きな兄《あに》が、突然《とつぜん》に女《おんな》の子《こ》を連《つ》れ帰《かえ》ってくれば。

「えっと」

 オレは、考《かんが》える。ここまで色々(いろいろ)と考《かんが》えてはいたが、未《いま》だ考《かんが》えが纏《まと》まらない。この女《おんな》の子《こ》を、愛妹《いもうと》に、どう紹介《しょうかい》するか。

 難《むずか》しい問題《もんだい》だ。

 伝《つた》えたい情報《じょうほう》が、伝《つた》えてはいけない情報《じょうほう》と絡《から》み合《あ》う。けれど徒《いたずら》な守秘《しゅひ》は、秘匿《ひとく》は、誤解《ごかい》と疑念《ぎねん》を生《う》む。


 オレは、情報《じょうほう》を削《そ》ぎ落《お》とし、簡潔《かんけつ》に纏《まと》め、意《い》を決《けっ》した。日頃《ひごろ》の中庸《ちゅうよう》のテンションを心《こころ》がけて、口《くち》を開《ひら》いた。

「紹介《しょうかい》する。オレの、新《あたら》しい妹《いもうと》だ」


 愛妹《いもうと》が、蒼褪《あおざ》めて、ジーンズスカートのポケットからスマホを取《と》り出《だ》した。

「お兄《にぃ》ちゃん。キモいけど、お兄《にぃ》ちゃんだから、面会《めんかい》には行《い》ってあげるね」


   ◇


 リビングルームのローテーブルで、愛妹《いもうと》と新《あたら》しい妹《いもうと》が仲良《なかよ》く遊《あそ》ぶ。小学校《しょうがっこう》で流行《はや》っているシール帳《ちょう》?、らしい。

 同《おな》い年《どし》の小学生《しょうがくせい》女子《じょし》が暫《しばら》く一緒《いっしょ》に暮《く》らすとなれば、仲良《なかよ》くなるのも早《はや》いものだ。


 オレは、だらしなくソファに座《すわ》って、二人《ふたり》を観賞《かんしょう》する。かわいい+かわいい=超《ちょう》かわいい。


 さっきは危《あや》うく、誘拐《ゆうかい》の疑《うたが》いで通報《つうほう》されかけた。危《あぶ》なかった。

 なぜ、こんなことになったのか、説明《せつめい》すると長《なが》くなる。


   ◇


 この世界《せかい》は、人《ひと》が平和《へいわ》に暮《く》らす『内地《ないち》』と、魔物《まもの》が跋扈《ばっこ》する『魔界《まかい》』と、人《ひと》と魔物《まもの》が戦争《せんそう》する『外地《がいち》』に分《わ》かれる。


 内地《ないち》は、科学《かがく》技術《ぎじゅつ》が発達《はったつ》し、高層《こうそう》建築《けんちく》が林立《りんりつ》し、整備《せいび》されたアスファルトの道《みち》を自動車《じどうしゃ》が行《い》き交《か》う。

 外地《がいち》は、科学《かがく》技術《ぎじゅつ》が機能《きのう》せず、代《か》わりに魔法《まほう》が使《つか》える。

 魔界《まかい》は、闇《やみ》の壁《かべ》の向《む》こうにある、人類《じんるい》には未知《みち》の領域《りょういき》だ。


 外地《がいち》では、人《ひと》の軍勢《ぐんぜい》と魔物《まもの》の軍勢《ぐんぜい》が戦争《せんそう》してる。剣《けん》と魔法《まほう》で、爪《つめ》と牙《きば》で、領域《りょういき》の奪《うば》い合《あ》いをしているのである。


   ◇


 ってことを念頭《ねんとう》に、新《あたら》しい妹《いもうと》を迎《むか》えるに至《いた》った経緯《けいい》を説明《せつめい》しよう。


   ◇


 ほんの、数時間《すうじかん》前《まえ》。


「新実《にいみ》 健二《けんじ》『心剣士《しんけんし》』殿《どの》には、私《わたくし》から説明《せつめい》いたしましょう」

 背《せ》の高《たか》い女《おんな》が、精悍《せいかん》な声《こえ》で告《つ》げた。赤髪《あかがみ》ロング縦巻《たてま》きロールで、化粧《けしょう》が厚《あつ》く、赤《あか》いドレスを纏《まと》う、二《ふた》つ名《な》『最強《さいきょう》の盾《たて》』とも呼《よ》ばれる高名《こうめい》な大騎士団《だいきしだん》の騎士団長《きしだんちょう》『ロゼリア レッドローズ』だ。


 オレは、外地《がいち》なら最強《さいきょう》クラスの魔法《まほう》『心剣士《しんけんし》』が使《つか》える。傭兵《ようへい》として軍《ぐん》に雇《やと》われもする。だから、そんな風《ふう》に呼《よ》ばれることが多《おお》い。


 場所《ばしょ》は、明《あ》かりがランプ一個《いっこ》だけで薄暗《うすぐら》い、床《ゆか》も壁《かべ》も天井《てんじょう》もコンクリートで窓《まど》のない、出入《でい》り口《ぐち》が鈍色《にびいろ》の鉄扉《てっぴ》一《ひと》つだけの密室《みっしつ》だ。

 その密室《みっしつ》に、立派《りっぱ》な軍服《ぐんぷく》の老人《ろうじん》八名《はちめい》が、十歳《じゅっさい》くらいの女《おんな》の子《こ》を囲《かこ》む。強面《こわもて》の老人《ろうじん》たちに囲《かこ》まれて、女《おんな》の子《こ》の表情《ひょうじょう》は怯《おび》えてる。


 ロゼリアがオレを見《み》て、精悍《せいかん》な声《こえ》で続《つづ》ける。

「新実《にいみ》殿《どの》に、この女《おんな》の子《こ》の護衛《ごえい》を依頼《いらい》しますわ」

「……えっ!? 説明《せつめい》は!?」

 オレはビックリして、思《おも》わず声《こえ》が出《で》た。

「!!!!!」

 ロゼリアが、二《ふた》つ名《な》に負《ま》けぬ威圧《いあつ》感《かん》の双眸《そうぼう》で、クワッッッ!!!とオレを睨《にら》んだ。

「ちっ、違《ちが》うっす! 鮮《あざ》やかな頬紅《チーク》に見惚《みと》れて聞《き》き逃《のが》したっす!」

 オレは慌《あわ》てて、露骨《ろこつ》な言《い》い逃《のが》れを口走《くちばし》った。

「それは、申《もう》し訳《わけ》ないことをしました」

 ロゼリアが、厚化粧《あつげしょう》、もとい、堅守《けんしゅ》な顔面《がんめん》を満足《まんぞく》げに微笑《びしょう》した。


 ここにいる軍人《ぐんじん》は、五十歳《ごじゅっさい》は超《こ》えているだろう爺婆《じじばば》ばかりだ。

 ロゼリアだけは厚化粧《あつげしょう》BBA、もとい、堅守《けんしゅ》な顔面《がんめん》で年齢《ねんれい》は分《わ》からない。けど、状況《じょうきょう》的《てき》に、そういうことだと思《おも》う。

 単純《たんじゅん》に『年寄《としよ》りの集《あつ》まり』って話《はなし》じゃない。軍《ぐん》でも高《たか》い階級《かいきゅう》、高《たか》い地位《ちい》にある人《ひと》たちだ。最《さい》重要《じゅうよう》な作戦《さくせん》の立案《りつあん》、決定《けってい》、実行《じっこう》の権限《けんげん》を持《も》ち得《う》る、最高《さいこう》クラスの権力者《けんりょくしゃ》たちだ。


 オレは、説明《せつめい》を聞《き》くまでもなく、一《ひと》つの記憶《きおく》を思《おも》い出《だ》す。


 魔法《まほう》『心剣士《しんけんし》』は、『武器《ぶき》に残《のこ》った強《つよ》い思《おも》い』を力《ちから》に変《か》える。副次的《ふくじてき》に、その人《ひと》の記憶《きおく》が垣間見《かいまみ》える。


 以前《いぜん》に実行《じっこう》された、作戦《さくせん》名《めい》『フェニックス計画《プロジェクト》』。軍《ぐん》が保有《ほゆう》する最強《さいきょう》の超強力魔法品《アーティファクト》『滅魔《めつま》の剣《つるぎ》』を適合者《てきごうしゃ》に貸与《たいよ》し、『魔王《まおう》』の討伐《とうばつ》を命《めい》じる。

 但《ただ》し、『滅魔《めつま》の剣《つるぎ》』の適合者《てきごうしゃ》の絶対《ぜったい》条件《じょうけん》は『少女《しょうじょ》』だ。少女《しょうじょ》に武器《ぶき》を渡《わた》して魔王《まおう》に特攻《とっこう》させるも同然《どうぜん》の、最悪《さいあく》の作戦《さくせん》だったらしい。


 かつて滅魔《めつま》の剣《つるぎ》を握《にぎ》ったときにオレが見《み》た少女《しょうじょ》の記憶《きおく》が、こんな感《かん》じだった。オレは、最悪《さいあく》の気分《きぶん》になった。


   ◇


 密室《みっしつ》から数時間《すうじかん》後《ご》。


 秋《あき》の夕刻《ゆうこく》に、住宅地《じゅうたくち》のマンションの一室《いっしつ》、玄関《げんかん》扉《とびら》の前《まえ》にオレは立《た》っていた。


 オレが頻繁《ひんぱん》に見《み》る玄関《げんかん》扉《とびら》に、酷似《こくじ》している。白《しろ》いコンクリートの壁《かべ》にある小《ちい》さな亀裂《きれつ》まで、見覚《みおぼ》えがあるように錯覚《さっかく》する。


 ……いや、そんなはずは無《な》い。

 計画《プロジェクト》の要《かなめ》、『滅魔《めつま》の剣《つるぎ》』適合者《てきごうしゃ》の女《おんな》の子《こ》『静流《しずる》』を、オレが護衛《ごえい》することになった。護衛《ごえい》に適《てき》した住居《じゅうきょ》を用意《ようい》したと、ロゼリアに案内《あんない》された。

 それが、オレの家《うち》なんかのわけが無《な》い。


 オレの後《うし》ろには、十歳《じゅっさい》の女《おんな》の子《こ》『静流《しずる》』がいて、不安《ふあん》げにオレを見《み》あげる。さらに後《うし》ろには、背《せ》の高《たか》い女《おんな》騎士団長《きしだんちょう》『ロゼリア』がいる。

 精悍《せいかん》な存在《そんざい》感《かん》に、否応《いやおう》無《な》く緊張《きんちょう》する。


 オレは、玄関《げんかん》扉《とびら》のドアノブに手《て》をかけようとして、表札《ひょうさつ》が視界《しかい》に入《はい》った。『新実《にいみ》』と見慣《みな》れた筆跡《ひっせき》で書《か》かれていた。

「ここ! オレん家《ち》っすよね!?」

 オレは思《おも》わず、抗議《こうぎ》の声《こえ》をあげた。

「!!!!!」

 ロゼリアが、二《ふた》つ名《な》に負《ま》けぬ威圧《いあつ》感《かん》の双眸《そうぼう》で、クワッッッ!!!とオレを睨《にら》んだ。

「ちっ、違《ちが》うっす! 優美《ゆうび》な下《した》睫毛《まつげ》に遮《さえぎ》られて表札《ひょうさつ》を読《よ》み間違《まちが》ったのかなって思《おも》って確認《かくにん》をっす!」

 オレは慌《あわ》てて、露骨《ろこつ》な言《い》い逃《のが》れを口走《くちばし》った。


 ロゼリアが、満足《まんぞく》げに微笑《びしょう》する。

「私《わたくし》も、陰《かげ》ながら護衛《ごえい》いたします。安心《あんしん》して日常《にちじょう》生活《せいかつ》を送《おく》りなさい」

 赤《あか》いハイヒールをカツカツと鳴《な》らして、隣《となり》の玄関《げんかん》扉《とびら》を開《あ》けて、中《なか》へと消《き》えた。

 ……え? 護衛《ごえい》の期間《きかん》中《ちゅう》は隣《となり》の家《いえ》にいる感《かん》じ?


 まぁ、軍《ぐん》の偉《えら》い人《ひと》たちの思惑《おもわく》なんて、考《かんが》えるだけムダだ。

「……よしっ!」

 オレは意《い》を決《けっ》して、玄関《げんかん》扉《とびら》を開《あ》けた。


   ◇


 ってことで、愛妹《いもうと》に誘拐《ゆうかい》の疑《うたが》いで通報《つうほう》されかけて、今《いま》に至《いた》る。

 問題《もんだい》が多々(たた)ある気《き》もするが、妹《いもうと》が増《ふ》えたみたいで嬉《うれ》しい、と今《いま》は素直《すなお》に喜《よろこ》ばしい。


心剣士《しんけんし》は少女《しょうじょ》の夢《ゆめ》を夢《ゆめ》見《み》るのか

第01話 EP00-01 今《いま》だけ妹《いもうと》/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。