第11話 EP04-01 楽しい休日
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
オレの名は『新実 健二』。『内地』では、中学校に通う中学二年生の、ごく普通の男子だ。
◇
休日に、駅前のショッピングモールに来ている。
妹二人の付き添いである。涼しい秋晴れの休日の昼間なので、混んでる。人、人、人でごった返している。
あまりの混雑に、オレは辟易している。家でオンゲでもしてれば好かった、と。
「嫌なら、お兄ちゃんは来なくてよかったのに」
愛妹が、楽しげに弾む声でオレを見あげた。
愛妹は今日も、かわいい。超かわいい。
ボブっぽい髪型で、最近は髪を伸ばしてるらしい。ちょっと癖っ毛なのが悩みだそうだが、癖っ毛もかわいい。
髪だけじゃなく服にも拘って、お出かけ用の装いは一段とかわいい。今日は、淡い色のパーカーに微フリルのミニスカートか。かわいい。
「かわいい妹二人のキャッキャウフフを眺めるためなら、オレは魔界の果てだって行くぜ!」
オレは強く拳を握って、迷いなく断言した。
「お兄ちゃん。キモい」
「新実お兄さん。キモいです」
愛妹と静妹が声を揃えた。
好い。照れから生じる反抗。とても好い。
静妹も、今日はショートめの髪をキレイに整えて、かわいい系の服装だ。ワンポイントのリボンが付いたブラウスに、プリーツのキュロットか。
今朝には、妹二人が出かける準備をする楽しげな声が聞こえていた。
オレは、当然、一張羅の中学校の制服、白のワイシャツに黒のスラックスに黒のスニーカーである。鼻には、絆創膏を貼ってる。
◇
「お兄ちゃん! シール見てきていい?」
愛妹が、混み合う通路の人波に見え隠れするファンシーショップを指し示す。
オレは、ドヤ顔で踏ん反り返って答える。
「買ってやるぞ。報酬をたくさん貰えたからな」
「やった! お兄ちゃん大好き!」
そうだろう、そうだろう。
「静妹も買っていいぞ。赤薔薇騎士団が経費で出してくれるからな」
「えっ?! いいんですか? ありがとうございます!」
歓喜に瞳を輝かせる妹二人に頬を緩めて、オレは仰々しく頷いた。
しかし、ファンシーショップか。見た感じ店内に女子しかいなさそうだし、オレは入りにくいな。
「健二。店内は、アタシが護衛するわ。小学生女子の生態に、興味もあるし」
察した顔の美月が、オレの肩に手を置いた。
美月は、オレのクラスメートで頼れる相棒で軍人で、内地では普通の中二女子である。体は華奢で、肩までくらいの長さのピンク髪で、年相応に可愛くも、芯の強そうな凛々しい顔立ちで、声が澄んで高い。
「美月、言い方。頼む」
オレの妹二人と仲良くなりたい、ってことだな。オレは感謝して資金を渡した。
休日の朝から家に遊びにきて家族サービスまで付き合ってくれてる美月が、人混みの中の妹二人を追う。
美月もオレと同様で、女子の制服、白のブラウスに黒のプリーツスカートに黒のスニーカーだ。但し、他に真っ当な服の無かったオレと違って、校則的な理由だろう。
三人がファンシーショップに入ったのを見届けて、オレは一息つく。ちょっとした自由時間、と気を抜くわけにもいかず、恐る恐る後ろをチラ見する。
通路に点在する休憩用のベンチに、赤い人が座っている。
◇
赤髪ロング縦巻きロールで、化粧が厚く、赤いドレスを纏う、背の高い精悍な女だ。二つ名『最強の盾』、高名な大騎士団の騎士団長『ロゼリア レッドローズ』だ。
静妹の護衛で密かに尾行する、とは聞いた。
……『密かに尾行』って、何だっけ?
目立つ! とにかく目立つ!
赤くて背の高い厚化粧BBA、もとい、顔面堅守な女がいる。ロゼリアの知名度の高さもあって、誰も彼もがチラ見して、気を利かせて見なかったふりをして通り過ぎる。
そんな衆目の真ん中で、オレに背を向けてベンチに座るロゼリアが、ここに座れと示すようにベンチを軽く叩いた。
マジっすか!? オレは恐る恐る、ロゼリアに背を向けて、恐縮してベンチに座った。
衆目のチラ見が! 視線が痛い! 見て見ぬふりの気遣いも痛い!
◇
ロゼリアが、オレに背を向けたまま、オレの方を見ないようにして、真っ赤な唇を開く。
「静流さんに、不便はありませんか?」
オレも背を向けたまま、ロゼリアの方を見ないようにして答える。衆目さえなければ、スパイ映画っぽいかも。
「問題なさそうっす。楽しく過ごしてるみたいっす」
静流とは、静妹である。
「それは、何よりです」
ロゼリアが、厚……、微笑した。
「各派閥の説得の方はどうっすか?」
オレは、最大の懸案事項を聞いた。静妹の身の安全は、説得の成功の先にしか無いのだ。
「賛成派が計画を推進する理由は、お分かりですか?」
質問にクイズが返ってきた。難しくはない。
「功績を得るためっす?」
第二次フェニックス計画の目的は、『強い魔物の討伐』である。それは軍人にとっての仕事であり、仕事の成果でもある。
「その通りです」
ロゼリアが、厚……、微笑した。
ロゼリアが、皮肉めいた微笑で続ける。
「魔将軍二体の討伐という歴史的快挙を成した今の権力者たちは、確実に歴史に名を刻むでしょう。但し、この好機に攻勢に出て内地を大きく拡大した英雄としてか、残る魔将軍二体に怖気づいて現状維持に甘んじた腰抜けとして、ですわ」
分かりやすい。軍としては、『魔将軍を二体討伐した!』で終わりじゃなくて、『敵戦力の低下に乗じて人間側の勢力を拡大する』までやらなくちゃならないわけだ。
内地も外地も魔界の闇壁も、固定ではなく変動する。外地で人間側が優勢になれば、内地が拡大して闇壁が後退する。魔物側が優勢になれば、その逆となる。
「反対派も同じです。自分たちには使えない『滅魔の剣』ではなく、自分たち騎士団の力で成したい、という違いだけ」
だから、賛成強硬派の爺婆は現役のうちに結果を出そうと焦って、計画を始動した。
反対過激派は、先に結果を出されては騎士の面目丸潰れと、手段を選ばない妨害に出た。
「なるほど。歴史的な功績、つまり内地の拡大さえ達成できれば、『第二次フェニックス計画』そのものが不要になるっすね?」
オレは納得して聞いた。
「魔城の前庭の性急な制圧作戦は、反対派の主導でしょう。達成できれば、それもまた歴史的快挙、歴史的な功績と成り得ますが。最大の懸念は、『人間サイズの四つ角の魔物』の存在ですわ」
ロゼリアが、立体的で劇画ちっくな睫毛で、チラとオレの方を見る。
「新実 健二『心剣士』殿。ユーナベルム騎士団の助けとなりなさい。静流さんのために、それが最善の道となるでしょう」
オレがユーナベルムに協力を求めたことを、ロゼリアが英断と評価した理由。繋がった気がする。ロゼリアの頭の中には最初から今の絵図が、望む結末があって、故にオレに護衛を依頼したのかも知れない。
「任せてくださいっす」
オレは迷わず快諾した。静妹とユーナ王女様のためとあらば、迷う理由が無い。
◇
ロゼリアが、厚……、微笑して、ベンチから立ちあがる。立ちあがると、更に背の高い。
通路の人混みの中へと紛れるロゼリアの、あ、人混みが気を利かせて場所を開けた。
赤いし背が高いしで、人混みの中にあっても目立つ! とにかく目立つ!
まだ、静妹の護衛で密かに尾行するつもりらしい。
……『密かに尾行』って、何だっけ?
心剣士は少女の夢を夢見るのか
第11話 EP04-01 楽しい休日/END
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