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【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


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7.幸子、増えない体重に絶望(解決済み)


──……産後14日目。


つまり、私がミレイになってから、もう2週間が経った。


「問題はありません。順調ですね」


マナミの2週間健診に来てくれた女医さんが、優しくそう言った。

ちなみに今さらながら、この女医さんの名前は、弥生(やよい)さんというらしい。


ミレイになった私にとって、もっともお世話になっている存在と言ってもいいヤヨイさん。

“女医さん”と呼ぶのもそっけなくて、乳母に名前を聞き、さりげなく「ヤヨイさん」と呼んでみた。


──そしたら、泣かれた。


また泣かせてしまった、と慌てる私。

けれど彼女はすぐに涙を拭き、笑顔でこう言った。


「悲しくて泣いたんじゃないんです。貴族の方に名前を呼んでもらえるなんて、初めてで……感激してしまって」


涙を浮かべながら微笑むその姿に、ちょっと心配になった。


……この子、本当に大丈夫?


幸子としては、ミレイと同じくらいヤヨイさんのことも、娘のように心配になってきてしまった。


それはさておき──。


生後3日頃までは、母乳を飲ませても、マナミの体重は授乳前後で2gほどしか増えなかった。


うーん、思い出すなあ……幸子の第一子の頃を。

何も分からないまま、助産師さんの言うとおりに必死で授乳していたっけ。


産後でボロボロ、寝不足、おっぱいは張って痛くて、乳首は切れそうで……

泣きながら20分かけて授乳して、ベビースケールに乗せてみたら──


えっ、嘘でしょ? あれだけがんばったのに、3g減ってるんですけど!?


その場で崩れ落ちそうになった私。

いやあ、若かったなぁ、あの頃の幸子。


でも今はもう、5人の子どもを育てた経験がある。

あれが“生理的体重減少”だったってこと、ちゃんと知っている。


生まれたばかりの赤ちゃんは胃が小さくて、母乳で摂る水分よりも、汗やおしっこで出ていく水分のほうが多い。

だから一時的に体重が減るのは、自然なこと。


だからマナミに対しては、こう言えた。


「あらあら、ちょっとしか増えなかったわね。じゃあ、ミルクも飲みましょうね」


焦ることなく、自然にミルクを足してあげられた。


……まあ、私の母乳が出なくても乳母がいるんだけど。

でもやっぱり、自分の子に乳母の母乳を飲ませるのって、ちょっと抵抗があるのよね。


「マナミはまだ母乳を飲む体力が足りないみたい。だから、ミルクで!」


と、何を言われても押し通して、母乳が足りないときはミルクをあげることにした。


「ミルクより母乳のほうが……」とか、言われたけど関係ない。


だってマナミは女の子で、どうせ──

いやいや、それ以前にマナミのことは私が決めるの!


そんな時期もあったけど、今では私の母乳だけで足りるようになってきた。


「1日平均35g増。マナミ様、順調ですね。素晴らしい成長です」


「よかったね、マナミ。ちゃんと飲んでくれてありがとう」


そう言って、マナミの頬にすり寄せる。

まだ笑わないけど、最近は起きてる時間も増えて、どんどんかわいくなってきている。


(私の娘。マナミが一番! 世界でいちばんかわいい!)


そんな親バカな思考でうっとり見つめていたら、ヤヨイさんがぽつりと言った。


「ミレイ様は、本当にすごいですね」


「……え?」


何が? と顔を向けると、ヤヨイさんは優しく続けた。


「平民のお母さんでも、初産のときは戸惑って、赤ちゃんに話しかけられない人が多いんです。

ましてや、乳母に育児を任せがちな貴族の方となれば、なおさら……。

でも、ミレイ様はそれを自然にされています。とても素晴らしいことです」


「そ、そうなんだぁ……」


(……そりゃ、6人目ですから!)


そんな心の声は封印して、私は苦笑いでごまかした。


「でも……ありがとうございます。そう言ってもらえると、ちょっと自信が持てます」


いくら慣れているとはいえ、赤ちゃんを育てるのは10年以上ぶり。

しかも、体は幸子のものじゃないし、ここは異世界だ。

正しいことをしてるのか不安だったけど、医者の立場であるヤヨイさんに褒められて、少し安心した。


「いえ、こちらこそです。マナミ様が元気に育っておられるのは、ミレイ様の深い愛情のおかげ。

お母さんのぬくもりは、赤ちゃんにとって何よりの栄養ですから」


そう言って、ヤヨイさんはそっとマナミの手に触れた。

その手は本当に小さくて──“もみじの手”とは、よく言ったものだ。


短くてふっくらした指がとにかくかわいくて、柔らかくて、ずっと触っていたくなる。

マナミが指をぴくりと動かすと、ヤヨイさんの表情がふわっと和らいだ。


「かわいいですね……」


「ほんとに。毎日見てるのに、毎回『今日もめちゃくちゃかわいい!』って思っちゃうのよね」


(そして、毎回うちの子が世界一かわいいと思ってしまうのよね……)


ああああーっ! なんでこの世界にはスマホがないの!


幸子のときみたいに、フィルムの残り枚数なんて気にせず、好きなだけ撮れたらいいのに……

スマホも、デジカメも、使い捨てカメラさえも存在しないなんて!


そんなことを思いながら、私はこっそり心の中で涙したのだった──。



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