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【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


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25.幸子、お金を有意義に使う


「五条家として、あなたの施設に正式に寄付します」


ヤヨイさんをまっすぐに見つめてそう宣言しながら、私は思い出していた。


かつて、あの(おとこ)がミレイに言い放った言葉を。


──『金なら好きに使って、贅沢したっていい』


思わず口元が緩む。


“金なら好きに使っていい”って、言ったわよね?


私がミレイになってから、あまり使ってなかったけど──たまには使わせていただくわ。


「……本当に、よろしいのですか?」


ヤヨイさんの遠慮がちな声が耳に届く。


私はにっこり微笑み、しっかりと頷いた。


「ええ。これは私自身のためでもあるの。 お母さんたちと子どもたちが笑って過ごせる場所が増えるなら──それだけで、私も元気になれる気がするのよ」


「ミレイ様……ありがとう、ございます……っ」


感情をこらえるように、ヤヨイさんは目元を押さえる。震える声に、彼女の思いがにじんでいた。


そっと触れていた手に、私は少し力を込める。


「泣かないで。これは始まりなんだから」


「始まり……?」


「ええ。だって、これで終わりじゃないでしょう?

これから、裁縫が得意な人も苦手な人も、自分の手で誰かを助けることができるようになる。 それって、とても素敵なことじゃない?」


「……はい」


「私は、ヤヨイさんが信じる未来を見てみたい。 そのために、できることは全部やるつもりよ。五条家としても、私個人としても」


ヤヨイさんは小さく何度も頷き、深く息を吐いた。 その目には、もう迷いがなかった。


「……私、やってみます。 きっと大変なこともあると思うけど、それでも……一歩ずつ進めていきたいです」


「うん、その意気よ」


この世界で、ミシンは高価だ。

施設では一台買うのも大変だろう。


でも、五条家の財力を考えれば──ミレイの着物を一着我慢すれば、ミシン十台くらい余裕で買える。 別に、両方買っても問題ないのだろうけど、特に着物が欲しいわけでもないし、ミシンを買った方がよほど有意義だ。


そんなことを考えながら、私は少しだけ、イタズラっぽく笑ってみせた。


「それにね、ちょっとワクワクしてるの。 この……五条家に来て、ようやく“私にできること”が見つけられた気がして」


……本当は“五条家”というより、“この世界に来て”って感じなんだけど。

そんなこと、言えるはずもなくて──そう言った。


「ミレイ様……」


「だから、これからもよろしくね、ヤヨイさん。 ひとりで頑張らないで。一緒に考えて、協力していきましょう」


二人の手が、しっかりと重なった。

そのぬくもりは、これから始まる未来への、小さな希望のように思えた。


──支えるということは、決して一人でするものじゃない。

誰かのための一歩は、いつだって、誰かと共に踏み出せるのだから。



***



それから数日後──


「……ここ、なのね?」


私は今日、初めてヤヨイさんの所属する支援施設を訪れた。

目の前にあるのは、広さこそあるものの、かなり古びた建物だった。


ヤヨイさんに案内されて中に足を踏み入れると、かすかに漂う埃のにおいが鼻をかすめる。

床は丁寧に掃き清められていたが、天井の隅には雨染みが広がり、壁紙はところどころ剥がれかけていた。


扉の蝶番が軋む音を立て、廊下を進むたびに床がわずかにきしむ。

見上げた照明のいくつかは点かず、古びた設備のまま長年使われてきたことが伺えた。



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