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【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


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16.幸子、“長女”を想う


子どもたちは、自室に戻った。


私とヤヨイさん、先生の三人になったとき、先生が言った。



「ミレイ様。ご心配なさることはありません。

彼は間違いなく、十分な知性と能力を持っています」


「……!」


私は、胸が熱くなるのを感じた。


(やっぱり……! あの子は何も“劣って”なんかいない!)


先生は続けた。


「これまで彼が『できない』とされてきたのは、教え方が彼に合っていなかっただけです。

文字に頼らず、“聞いて覚える”“見て覚える”──そうした方法を工夫すれば、彼はきっと、誰よりも力を伸ばしていくでしょう」


「──ありがとうございます」


私は心から、そう言った。


ヤヨイさんも、隣でやさしく頷いてくれている。


そして先生は、一枚の小さなメモを取り出して、私に差し出した。


「これは、彼の特性に合った学び方の提案です」


受け取った紙には──



・長い説明ではなく、短く、簡単な言葉で伝えること

・文字よりも、絵や図を使うこと

・正解を求めすぎず、“できたこと”をたくさん褒めること



──そんな、温かいアドバイスが、丁寧な文字で書かれていた。


「シンイチロウくんに必要なのは、“間違いを責めること”ではありません。

小さな成功体験を積み重ねて、“できる自分”を信じられるようにしてあげることです」


「……はい!」


私はメモをぎゅっと胸に抱きしめるようにして、深く頷いた。


(絶対に、あの子を守る)


(絶対に、あの子の才能を咲かせてみせる)


もう、迷いはなかった。



「いやぁ、それにしても……本当に凄いですね」


「はい……っ! うちの息子は、すごいんですっ!」


先生が「すごい」と言ってくれたことが、嬉しくて反射的に答えた。


「……やだ、私ったらっ! “うちの息子”とか言っちゃった!」


でも、シンイチロウくんが「お母さん」って呼んでくれたし、いいよね?


なんて、ひとりで照れながら考えてると、きょとんとした顔の先生が、ぷっと吹き出し笑顔に変わった。



「あははっ! 違いますよ、ミレイ様……いえ、“お母さん”。


私がすごいと言ったのは、お母さん──あなたのことです」


「──えっ?」



思わぬ言葉に、先生の顔をじっと見つめる。

先生も私の目をまっすぐに見返して、続けた。



「シンイチロウくんの読字障害は、一般的にはもちろんのこと、医者でも知ってる者はほとんどいない症状です。

そして読み書き以外の能力には問題がないため、周りの人間はもちろん、本人さえもそれが障害だとは、なかなか気づけません。

『頭が悪い』『勉強をさぼっている』と思われがちで、気づいてあげられないと本人をとても苦しめます」



……そう言われて、泣きそうになってしまった。



──『ひらがなもまともに書けない馬鹿が、五条家の当主になれるわけがない』



あの、くそピ──(放送禁止用語)が言った言葉だ。


そんなことを言われて、シンイチロウくん本人はもちろん、亡くなったシンイチロウくんのお母さん……奥様も、きっと凄くショックだっただろう。


悲しみと怒りで、胸がいっぱいになった。



先生は言葉を選びながら、ミレイ──いや、私に向き直った。



「失礼な言い方かもしれませんが……あなたは後妻。シンイチロウくんの生みの親でもなければ、まだお若い。

なのに……シンイチロウくんのことを、よく見ていたんですね」



そう言われて気がついた。


──そうだ。ミレイはよく見てたんだ、シンイチロウくんとユリカちゃんのことを。


きっかけは侍女の言葉だったが、ミレイの記憶があったから。

シンイチロウくんの記憶力がずば抜けていることを、気にして印象深くミレイが覚えていてくれたから……ディスレクシアに私は気づけたんだ。



──ミレイ、ありがとう。


ミレイがシンイチロウくんのことをよく見ていてくれたから、彼の苦しみを軽減できそうだよ。



今の私にとって、ユリカちゃんが長女じゃない。


ユリカちゃんは次女。マナミは三女だ。




(──大丈夫だよ、シンイチロウくん)


(君は、きっと輝ける)


心の中で、もう一度、強く、強く、そう誓った──。


そして私は、心の中で長女に、もう一度お礼を言った──。




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