表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】幸子48歳、異世界転生したら出産中でした!?~後妻だったので産んだ子も連れ子もまとめて可愛がります  作者: よつ葉あき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/38

12.幸子、シンイチロウの特徴に気づく


「──ねぇ、シンイチロウくん。この紙芝居、今度は君が読んでみてくれないかな?」


そう言った私に、シンイチロウくんは一瞬きょとんとした。

けれど次の瞬間──顔色が、みるみる青ざめていく。


「あっ……あの、ぼく……」


手元がそわそわと落ち着かない。

さっきまでのキラキラしていた目が、不安で揺れている。



──私が先日、侍女に聞いたこと。


シンイチロウくんは、文字を読むことも書くこともとても苦手だということ。


もう八歳。日本でいえば小学二年生。

由緒正しき五条家の跡取り候補だったシンイチロウくんは、早くも三歳のころからひらがなの練習を始めたらしい。


なのに、いくら教えても……

文字を読むことも書くこともできない。


最初は「まだ幼いから」と言われ許されていたが、それが四歳でも五歳になっても……

そして八歳になった今でも、読み書きが苦手で、ひらがなさえも間違えるという。


そのために、あの男──シンイチロウくんの父親は、幼い彼に早々に見切りをつけて……


「ひらがなもまともに書けない馬鹿が、五条家の当主になれるわけがない」


そう言って、前妻である奥様に、ちゃんと跡取りとなる次男を産むよう命じた。


だが結果は──次に生まれたのはユリカちゃん。女児だった。


そして、その心労も祟ったのか、二人のお母さんは産後の肥立ちが悪く、ユリカちゃんが生まれて間もなく亡くなってしまった。


跡取りがいないことに焦ったあの男は、奥様が亡くなってすぐに、子どもが産めそうな若い嫁を探し、ミレイと結婚したのだ。



……まじで。あいつ、なんなの?

前妻も息子も娘も、ミレイのことも道具としか思ってなくない?


──脳内でヘッドシザースを決めた。



思い出した。ミレイの記憶の中にあったことを。


シンイチロウくんは、文字を読むことがとても苦手だった。

なのに、暗記力はずば抜けている。


交流がほぼなかったミレイが、そのことを印象深く覚えていた。


ミレイは……「シンイチロウ様って、記憶力すごいなぁ。馬鹿じゃないんじゃないかしら?」くらいにしか思ってなかったようだが、幸子の知識を合わせると、ひとつの可能性に思い当たった。


──ディスレクシア。発達性読み書き障害。


暗記力はずば抜けている。

耳から入る情報にはめっぽう強い。


だけど、活字を目で追うと、文字がぐにゃぐにゃと動いて見えてしまう──。


彼らは読み書き以外には問題がない。

読字や文章の理解が難しい一方で、視空間能力や創造性、全体像を捉える力が高く、独特な強みを発揮する人もいる。


たしか有名な俳優さんも、同じ障害だったと聞く。


その俳優さんは、台本を読んでも文章が理解できず、台詞も覚えられない。

そのために、スタッフなどに台本を読んでもらい、内容を丸暗記するという。


──すごい才能だ。普通の人には、丸暗記なんてなかなかできないことだ。


このように、読み書きが苦手なだけで、別の分野に能力を発揮する者が多いのだ。


そして、それはシンイチロウくんも──。



「……ごめんね。そんなこと、しなくていいわ」


私はそっと微笑む。


「シンイチロウくんは、よくお話を聞いて覚えてくれたのね。ありがとう」


「……うん」


小さく頷くその姿が、なんともいじらしい。


ユリカちゃんも、きょとんとした顔でお兄ちゃんを見上げていたが、すぐににっこりと笑って「お兄ちゃん、すごい!」と拳を握り笑った。


そんなユリカちゃんに、シンイチロウくんも照れた様子で「ありがとう」と小さな声で返した。


(いい兄妹だな……そして、マナミもその仲間に入れてほしい)


私はあたたかい気持ちになりながら、二人の頭を撫でた。


「だから、今度はね──」


私は柔らかい声で言う。


「シンイチロウくんには、紙芝居のお話を“覚えて”、ユリカちゃんに聞かせてあげてほしいの」


「おぼえて……きかせる?」


「うん。文字を読むんじゃなくて、覚えたお話を、自分の言葉でユリカちゃんに話してあげてほしいの」


シンイチロウくんは、驚いた顔をした。

でも──目が、少しだけ輝いた。


「……できる、かな」


「できるよ。さっき、魔物たちの名前だって完璧に覚えてたでしょ?」


「う、うん……!」


小さな拳をぎゅっと握るシンイチロウくん。


(大丈夫。大丈夫だよ、シンイチロウくん)



侍女から聞いた話には続きがあった──。


読み書きができないシンイチロウくん。

そんな基本的なことができない者に、優秀な家庭教師をつけても意味がない。


そう決めつけられ、まともに勉強すらさせてもらえないという。


読み書きができないからって、なんなの?

読み書きができないなら、教える側が工夫をすればいいじゃない!


そう考え、私はヤヨイさんにある相談をしたのだった──。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ