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ドール  作者: 竹取 裕基
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第二十六章

翌日。

 田原町の安いビジネスホテルで泊まった三人は、東村山で起きた武者人形が民家に放火した事件を調べに火災現場に行ってみたが、結局、何の手がかりも見つからなかった。近所に住む人に、武者人形の事を聞いてみたが、人形を実際に見た人はおらず、ネット上で流れている動画も、誰が撮ったのか特定できずに、引き上げた。

 刀を振り回した人形で騒然となり、男子高校生がホームから転落死した新百合ヶ丘駅にも行ってみたが、転落現場に花のひとつも手向けてあるわけでもなく、人々が何事もなかったかのようにホームを歩いていくのをみて、都会の冷たい一面を見た気がした。

 そのまま、小田急で町田に行き、電車を降りた。町田では、観光がてら、小田急百貨店、東急ツインズ、モディ町田などをぶらぶらと歩いてみた。

 沙羅と由香里は、目を輝かせてショッピングをしながら二人でいろいろと話が盛り上がっていたが、そんな二人を横目に、田中は疲れ果てていた。

 こうしている間にも、次の満月の日が刻一刻と迫って来るし、手持ちの金はすさまじい勢いで減っていく。長居はできそうになかった。町田仲見世商店街で、新幹線の中で食べるおやつに大判焼きを買い、近くのカフェ「ロッセ」でコーヒーを飲んでから、横浜線で新横浜に向かった。

 沙羅と由香里は、まだまだ東京観光をしたい感じだったが、田中は、時間もないし、もう帰ろう、と言って不服そうな二人を半ば強引に連れてきた。

 新横浜のホームにいると急に雨が大降りになってきた。ホームに滑り込んできた新幹線に乗り込むと、三人掛けのシートに座り込んだ。

 窓際を田中、真ん中の席が由香里、通路側が沙羅だ。座席の場所など、どうでも良かったが、シートに座ると急に眠気に襲われ、そのまま意識が遠のいていった。

 


 突如、ドン! という衝撃と共に勢いよく前のシートに叩きつけられた!

 何事だ!

 目を開けると車体は激しく揺れ、スマホが大音響で警告音を発した。

 「緊急地震速報です! 緊急地震速報です! 強い揺れに警戒してください!」

 大きな女の音声が聞こえた!

 大地震だ! 

 目の前の電光掲示板の文字がぶれて見える。「緊急停車します」と読めた。

 キィー!

 車輪が軋む、まるで悲鳴のようなすさまじい音がして、再び前のシートに叩きつけられた!

「うわあああ! な、なんだ!」

「きゃあああああああああああ!」

 前の座席の男女が恐怖で叫び出した!

「きゃああああ!」

 沙羅と由香里も恐怖で叫んでいる!

 車体はこれでもか、これでもかと言わんばかりに左右に激しく揺れ、このまま回転しながら脱線するのではないかと思った。

 スマホを見ると、関東地方で震度七と出ている!

 時速三百キロ近い新幹線が疾走しているのだ、もし脱線したら間違いなく死ぬだろう。

 まるで断末魔の悲鳴のような、金属の車輪が軋む音と人々の悲鳴と絶叫で耳がおかしくなりそうな気がした。

 再び前列のシートに叩きつけられた。

 田中は死を覚悟した。

 



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