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魔王とプリンセス  作者: 藤ともみ
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6-1 王と英雄

 フェトラ公国国主ギルバート・アーク公爵は早速、アレクサンダー・ベルクールを城に招いた。

「アレク殿……いや、ベルクール殿、伝説の聖剣を手に入れたとのこと。誠におめでとうございます。」

「ありがとうございます、公爵さま……やっと、皆様の期待に応えることができそうです。」

「よかったら聖剣を近くに見せてくれないだろうか。」

「はい、喜んで。」

 アレクは恭しく、公爵に剣を差し出した。

 公爵もじっくりと剣を吟味する。水晶のように美しい刃に、金でできた柄。それに嵌った美しい大きな白い宝石。もちろん聖剣を見るのは初めてだったが、なるほど普通の剣とは違うらしい。

「ベルクール殿、よくぞ聖剣を手にいたしましたな。早速お祝いの宴を準備させましょう。」

「いえ、お祝いは白の魔王を倒してからでお願いします。私は兵を整えて、すぐにでも魔王の塔へ向かいたいと思います。」

 アレクは剣を下げて、さやに納める。

「そうか・・・しかし、私にはどうしても納得できないよ。本当に、ルーク・ダーリングは“白の魔王”なのかな?」

「公爵様……残念ですけど、本当なんです。確かにルーク・ダーリングが魔王へと姿を変え、僕にはっきり言ったのです。自分は清純な乙女の体を食べて、大きな力を手に入れる為に、サラさんを今まで幽閉してきたのだと。」

「しかし……それもまた、魔王が見せた幻覚、ということは考えられないかな?」

「実は、僕の部下に命じて、ダーリング家のことを少し調べてみたんです。」

「何故、ダーリング家のことを?」

 公爵の質問には答えず、アレクは流暢にしゃべりだした。

「ダーリング家の当主が、ルーク・ダーリングに代替わりしたのは、8年前のことだそうですね?それはちょうど、“白の魔王”が侵略行為をぱったりとやめてしまった時期と重なります。

それだけなら偶然でしょうが、この、ダーリング家の当主が変わった時の様子、というのが僕にはどうも引っかかるんですよ。なんでも、ダーリング家は元々オルフェリア王国の大富豪で、フェトラには別荘はあっても、こちらに住むことは無かったそうですね。しかし、ザガイアとオルフェリアの戦争で、ダーリング家も巻き込まれて、お家断絶か・・・と思った矢先に、ルーク・ダーリングが前当主の遺言状を持って、ダーリング家の当主であることを宣言し、このフェトラに移り住んできたというではないですか。今考えると妙だとは思いませんか?」

「いや……それはまあそうかもしれないが……」

「しかし、人々は不思議と納得してしまった…恐らく、国の人々に“誘導”の術がかけられたからではないでしょうか?僕の推理だと、魔王はオルフェリアとザガイアの国民を皆殺しにしたあと、ダーリング家の莫大な財産に眼をつけ、魔法でニセの遺言状を作り上げて、人間になりすまし、人間に油断させるためにずっとこの国で暮らしてきた……と考えられます。」

「この国の人間を油断させて、彼は…いや、魔王はどうするつもりなのだろう?」

「この国を滅ぼしてしまうつもりに決まっています。」

 アレクサンダーはハッキリと迷いなく告げた。

「そうなる前に、必ず僕が魔王を倒して、この国を平和にしてみせます。ご安心ください。」

 翡翠色の瞳は自身に満ち溢れていた。

 公爵は何か言いかけた。……しかし、彼はぐっと言葉を飲み込むと、威厳を持って青年に告げた。

「健闘をお祈りする。聖剣の英雄、アレクサンダー・ベルクール殿。」

「ありがとうございます。」

 アレクサンダーは優雅に一礼して去っていった。

 公爵は深々とため息をついた。

 初めて彼に出会ったとき、これが英雄の器というものかもしれない、と公爵は直感的に思った。

 強大な力を持つ白の魔王を倒すことができるとしたら、きっとこの青年しかいないのだろう、と容易に想像できた。

 それは、国民の平和を考えるなら、非常に結構なことだ。国主としては、もちろん魔王を倒してもらうのを、歓迎すべきなのはわかっていた。

 しかし……ギルバート・アークにとっては、それは一人の友を失うことを意味していた。公爵、ギルバート・アークはまた深々とため息をついた。自分は国主なのに、多くの財を持っているのに、一人の友人を助けることさえできないのか。

「公爵様、お疲れのところ申し訳ございませんが、ハルフォード元帥がいらっしゃいました。」

 不意に、執事が現れて静かに来客を告げた。

「そうかハルフォードが…通せ。」

公爵は無理やり笑顔を作ると、来客に備えた。


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