5-4 眠れるプリンセス
「ブラン様、サラの準備が整いました。」
セリアは白の魔王に報告した。白の魔王は画集を眺めながら椅子に座っていた。しかし恐らく、美しい絵画は彼の頭に全く入っていないのだろうと察しがついた。
「そうか……ご苦労だったな……」
「こちらにどうぞ。」
セリアは魔王を伴ってスタスタと歩き始めた。
サラは塔の最上階にあるガラスの棺の中で、たくさんの花に囲まれて眠っていた。
彼女は、真っ白なウェディングドレスを着せられていた。セリアが用意したのだ。
「……綺麗だ、サラ……」
ブランは愛おしそうに、棺の中で眠っているサラを見つめる。
「魔王様……本当にこれでよろしいんですか?」
「もちろんだ。後悔などしない。」
「はっ……」
ブランはガラスの棺の蓋をそっと外して、懐から金色の指輪を取り出した。指輪には、細かい彫刻でタマユリソウが彫られていた。
「ルーク様、それは・・・。」
「オルフェリア王国の最期の遺産だ。サラにはこれを身につける資格がある。」
「あの時、青の魔王に奪われたのかと思っていました…」
「これだけは奪い返してきたんだ。」
ブランは金色の指輪を眠っているサラの白い指にはめた。
そして黒い髪をなでながら、そっとサラに囁いた。
「ごめん、ごめんなサラ……もう少しだけ待っていてくれ……」
サラが眠った城内はとても静かで、寒かった。