5-2 剣に導かれて
「まさか・・・・・・これが、伝説の聖剣・・・?」
魅惑的な剣の輝きに、アレクは脚が震えた。
『さあ、勇気があるのならば、我を手に取るがよい。』
いつの間にか、アレクを捉えていた闇の塊は消えていた。
ついに、ついに聖剣が自分の目の前に現れたのだ!なんて神々しい美しさだろう。自分がやってきたことは間違いじゃなかった。自分は神に選ばれたのだ。
これで、あの恐ろしい白の魔王を倒すことができる!サラを救い出すことができる・・・!
アレクは大きな剣を、両手でしっかりと掴んだ。
その瞬間アレクは激しい目眩を覚えた。立っていられないほどの激しい頭痛に襲われる。
――なんだこれは・・・・・・!?
先ほどの神々しい雰囲気からは一変し、剣からは邪悪な瘴気が一気に放出された。悪霊たちの叫び声や嘲笑い声、呪いの言葉がアレクを襲う。
アレクは膝を地面についた。しかし、アレクは剣から手を離さなかった。
・・・いや、離せなかった。
いつの間にかアレクの両手は、先ほど彼の体を捉えていた黒い闇によって拘束され、剣にしっかりと固定されていた。どんなにもがいても、アレクの手から剣は離れない。
透明な水晶のようだったはずの剣の刃は、いつの間にか真っ黒に変わっていた。
そうして、信じられないことに、その黒水晶のような刃の中に、アレクの体はどんどん吸い込まれていった・・・
「やっ・・・やめろおおおおお!ぐあああああああ!」
アレクの断末魔もむなしく、彼はどんどん真っ黒な剣に吸い込まれて、そして・・・消えてしまった。
アレクを呑み込んだ魔剣は、元の透明な剣に戻り、辺りには静寂が訪れた。先程の嵐が嘘のように、穏やかな青空が広がっている。
剣に、一人の少年が近づいてきた。手に林檎を一つ持った、赤い髪の少年である。彼は金色の瞳で、青年を呑み込んだ魔剣を見つめながら、その場にしゃがみこんで林檎をムシャムシャとかじり始めた。
「さーてと、コイツは生きて出られるかねえ・・・」
少年は虫でも観察しているかのように、そうつぶやいた。